モータースポーツ
更新日:2021.12.08 / 掲載日:2021.12.08
アウディRS Q e-トロン ダカールラリー用車両のコックピット
アウディは現地時間の12月7日、ダカールラリーに参戦する「アウディRS Q e-トロン」のコックピットを公開した。各種スクリーンやディスプレイから提供される、車両機能やナビゲーション情報に基づいて、ドライバーとコドライバー*が何千キロもの砂漠を走破する。
*助手席から運転手に指示を出す人。ナビゲーターとも呼ばれる。
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全てを表示・コントロールするコックピット
クロスカントリーラリーでは通常、ドライバーが運転し、コドライバーがナビゲートするという明確な役割分担がある。以前のコドライバーは、紙のロードマップを使用していたが、現在はデジタルになりタブレットを使用するようになった。
ドライバーの正面にあるステアリングホイールには、8つのコントロールボタンが設置されている。それらのボタンは、ホーン、ワイパーなどに加え、ドライバーが異常を記録するためソフトウェアへのデータ入力に使用される機能も。スピードリミッターは、速度制限が設定されているゾーンで使用する。
ステアリングホイール前方のディスプレイは、ドライバーが直接見ることができる範囲に配置されている。ここには、タイヤ空気圧、連続可変電気駆動システムによって選択された進行方向(前進、後退、ニュートラル)、現在の速度に関する情報が表示される。また、システムのシャットダウンが差し迫る場合や高電圧バッテリーが切断された場合など、重要な警告も表示される。フロントウィンドー手前に取り付けられた、2つの小さなディスプレイの左側のディスプレイはリピーターと呼ばれコンパスの方向を示し、右側のディスプレイは速度を示している。
ドライバーとコドライバーの中央に設置されたディスプレイには、タイヤ空気圧、選択したブレーキバランス、ブレーキバイワイヤーシステム等、多くの機能に関する情報が表示され、正常に動作している場合は緑色で点灯、エラーが発生した場合は赤色で警告表示される。スイッチパネルはダッシュボードの下にあり、個々のスイッチはタッチ式になっている。このパネルには、事前に定義して任意に割り当て可能な24のさまざまな機能が設定されている。たとえば、一般的な速度制限ゾーンや、エアコンの設定などだ。ここには、さまざまなページをプログラムすることが可能で、24のボタンを複数回割り当てることも可能。
ドライバーは、このスイッチ操作をコドライバーに委ねる。これらの操作はすべて、起伏の激しい地形を最高170km/hのスピードで何時間も走行する中で、完璧に行なう必要があるためで、コドライバーはドライバーをナビゲートするという本来の役割に加えて、大きな責任を負うことになる。
市販車のナビゲーションシステムとの最大の違いは、一般のナビゲーションの目的は可能な限り正確に目的地に到達することであるのに対し、クロスカントリーラリーのナビゲーションは、あくまでも競技用に設定されていることだ。ドライバーのパフォーマンスと同様に、ナビゲーションの性能はレースの勝敗を左右する。そのためラリー主催者は、コンパスの方向、距離、絵文字、特別な状況、および危険警告のみをロードブックに提供する。つまり、ラリーカーのGPSシステムは、意図的にチームに限定的なサポートのみを提供するのだ。同時に、GPSシステムは主催者にとって管制システムの役割を果たしており、参加者が数百キロメートルを超える砂漠の真ん中で、正しいルートを通過し、速度制限を守っているかどうかを確認するために利用される。
さらに、コックピットのセンターコンソールには、イリトラック(Iritrack)システムを装備。これは緊急時対応に使用するもので、これにより、主催者は速度と現在の車両位置を記録し、事故の発生を知ることができるようになる。緊急事態が発生した場合、コドライバーは、クルーが負傷していないかどうか、医療支援が必要かどうか、または事故を起こした別の参加者を救助隊が支援する必要があるかどうかを主催者に直接通知することができる。
アウディRS Q e-トロンのデジタル化されたコックピットの最大の特徴は、精度と速度、そして膨大な情報の処理能力といえる。そのうえでクロスカントリーラリーで成功を収められるかどうかは、ドライバーとコドライバーの腕にかかっているのだ。