車のエンタメ
更新日:2025.09.10 / 掲載日:2025.09.10
特別なグレードの世界
ちょっと背伸びして、ちょっとだけ贅沢なクルマが欲しい!
クルマのグレードってさまざま。
高いものから安いものまで、装備が充実しているものからそうじゃないものまでいろいろある。
いったいどのグレードを選んだらいいのか悩むところだが、多くのクルマには“特別なグレード”が存在する。
そのクルマにとって少しだけ特別な、他のグレードとはひと味違った魅力を持つモデル。
好きなクルマの、好きなグレードに乗ろう!
構成・文/フォッケウルフ 撮影/我妻慶一
(掲載されている内容はグー本誌 2025年9月発売号掲載の内容です)

“特別なグレード”ってなんだ?
特別なアルミホイールに革巻きステアリング、シート生地やサンルーフの有無……。クルマって、グレードの違いで装備が変わってくるし、なかには台数限定モデルだって存在する。もうどれがいいのかよくわからないので、え~い、もう一番高いやつ持ってこい! って人に、クルマ選びは必要ない。
実際は多くの人が、購入予算に照らし合わせながら、車種を選び、好みの装備やグレードを決めて、良質なコンディションの物件を探し求めているに違いない。これらを前提としたうえで、今回は特別なグレードの存在について考えていきたい。
同じ車種であっても、カタロググレードがあり、特別仕様車があり、ときには限定車だってある。さらに年式によってもグレードが統廃合されたり装備内容が変わったりする。しかし、車種によっては、ちょっとだけ贅沢で特別なグレードが設定されていることがある。そういったグレードを見つけ出し、知識を学んだうえで、自分に合った最高のグレード選びをしたい。
特別なグレードのプラスアルファの価値を考える。
ひと口に特別なグレードと言っても、「ハイウェイスター」のような常時設定されているカタロググレードのほか、特別仕様車や限定車などにも特別なグレードがある。それぞれのプラスアルファの魅力をひも解き、特別なグレードの付加価値について紹介する。
リセールがいい
中古車相場というものは市場原理に従っているので、ニーズが増えれば自然と高くなるもの。他のグレードと比べて魅力度の高いグレードというのは、ニーズが多いゆえに中古車相場も高めに設定されることが多い。ただ、特別なグレードというのは、たいていが新車価格も高いもの。新車価格が高いのだから中古車相場も高くなるのは必然なのである。
中古車相場が高いのだから、売却価格、つまりリセールだって高くなる。車種はもちろんのこと、グレードだってリセールの評価対象だ。誰もが知っている有名なグレードや、貴重な特別仕様車、限定車なんかも評価されるだろう。そう考えると、相場が高いからと構えて考える必要はあまりないのかもしれない。自分が高く買ったぶん、売るときも高めの金額で売却できるのだから。
もちろん、大切に乗らなければ、車両コンディションが悪くなって売却金額が下がるというのは、中古車の常。そのグレードなら絶対高く売れるというわけではないので注意したい。特別なグレードならではの装備がしっかり機能しているかどうかも重要だろう。ただ、あまり考え過ぎて乗るのも楽しくないので、実際に入手したら、気軽にカーライフを楽しんでいただきたい。


相場感が安定している
特別なグレードのモデルというのは相場が安定していることが多い。一気に下がることもないが、一気に上がることもあまりない。それのなにがいいのかといえば、目標とする購入金額を決めて予算の確保をすることができるのがありがたいところだ。
たとえば、特にグレードを決めずに車種だけ決めて物件を探していると、いい物件を見つけたときに予想以上に価格が高くて驚愕することがある。はじめからグレードを絞っていれば、そんなアクシデントに見舞われることは少なくなるだろう。
相場が安定している理由のひとつは、特別なグレードのモデルはクルマ好きが選びがちだから。クルマ好きオーナーは愛車を大事にする、大切に乗られてきたクルマはコンディションがいい。車両コンディションがいいから高く買われて、別のオーナーの元へ売られていくのだ。
さらに、「ハイウェイスター」や「タイプR」など、長い歴史を持つ特別なグレードは、時代を超えて愛されているので、やはり安定して人気が高く、相場も大崩れすることが少ないのである。


特別装備の“特別感”
さまざまなクルマに、特別なグレードが設定されている。そして、特別なグレードというのは、他のグレードを購入した人が羨むような特別な装備が付けられていることが多い。
たとえば、ハイウェイスターならエアロパーツ、GT–RやタイプRのような特別モデルであれば、エクステリアパーツはもとより、シートやサスペンション、エンジンにまで手が入っていることさえある。これらは後半ページでも取り上げているが、特別なグレードのなかでも名車としてよく知られたものばかり。当然といえば当然だ。
一方で、20年くらい前の特別仕様車によくあったパターンが、エアコンがオートエアコンになっていたり、サイドミラーがボディ同色になっていたり、単にカーナビが強化されていたり……カタロググレードにオプション装備のようなものが追加されただけで、名前に「特別」と付いているものの、その中身は“特別なグレード”にまで昇華しきれていないような特別仕様車が多かった。
しかし近年は、通常グレードでは搭載されないオリジナル形状のリアスポイラーが取り付けられていたり、内外装に特別なカラーが展開されていたり、インチアップしたアルミホイールが付けられ、車高も変更されているなど、特別仕様車にも、それなりに特別な装備が装着されるようになってきた。
とはいえ、特別仕様車がどれだけ特別なグレードか、誰がそれを判断するかといえば、それはオーナーである貴方自身である。他のグレードと異なる装備がどんなものか、それをどれだけ特別だと感じるか、それは実際にステアリングを握って運転するオーナー次第。特別装備の特別感を貴方が堪能できるなら、そのクルマは貴方にとって特別なグレードとなるに違いない。


「アニバーサリーエディション」を手に入れる
特別仕様車のなかでも「〜記念特別仕様車」は、特に特別なものだ。ブランドや車種が記録した◯周年や、販売台数の達成記録、モータースポーツの結果などを記念して設定される特別仕様車があるが、そのなかでも「アニバーサリーモデル(◯周年記念車)」は、これまで多くのメーカーから発売されてきた。
既存のグレードにはない特別な装備は魅力的だし、所有すること自体がそのモデルやメーカーを愛している証拠となる。また、車両自体がコレクターアイテムとして価値が高く、その車種やブランドの背景まで見えてくるので、愛車を愛する気持ちがさらに深まるに違いない。数ある特別仕様車のなかでも、特に特別感を感じられるグレードが、アニバーサリーモデルなのだ。


進化し続けるワークスチューニングがおもしろい!
トヨタ系
TRDやモデリスタからコンプリートモデルが発売されなくなり、現在、特別なグレードの新規発売はGRに一本化されつつある。「GR SPORT」は多くのモデルに設定されており、さらに、2019年には新型スープラがGR専売モデル「GRスープラ」として発売、2021年には2代目にモデルチェンジされた86も「GR86」となった。
スポーツカー人気が盛り上がっていた80年代~90年代頃には、国内のほとんどのメーカーから、スポーティカー用のサブブランドが立ち上げられていた。それは、現在のレクサスほどの規模感ではなかったが、多くのクルマ好きに認知されており、今思えばたくさんの人を虜にしていたように思える。
メーカー直系のスポーツグレードは完成度や信頼性が高く、特別なグレードとしてふさわしいモデルばかりで、それらを「ワークスチューニング」モデルと呼ぶ人もいた。その後、スポーツカーの衰退とともに、そういったモデルは数を減らしたが、今も存在しているワークス系グレードは特別な魅力を持つ。



トヨタテクノクラフトが開設した「TRD(トヨタ・レーシング・デベロップメント)」は、1976年からレースカーの開発やチューニングパーツを製作販売する老舗ブランド。「モデリスタ」は1997年に設立された、カスタマイズブランドで、スポーツモデルに限らず、各種パーツやコンプリートモデルを生み出してきた。2018年に両社は統合され、現在はパーツ開発、販売に専念している。
そして、現在最も知られているトヨタ内のスポーツブランドは、「GR」だろう。発端は、ポータルサイト「GAZOO.COM(ガズー・ドットコム)」から名称がとられたレースチームであり、豊田章男現会長の肝いりで、2009年あたりから本格的にガズーレーシングとしてさまざまなレースに参戦し始めた。そこからスポーツモデルの開発につなげていき、当初は「GRMN」、「G’s(ジーズ)」シリーズといったスポーツモデルを展開。2017年には、社内カンパニーとして新設され、現在は各地域に「GRガレージ」と呼ばれるディーラー拠点も設置されるようになっている。
日産系
NISMOはモータースポーツ技術を基盤とした、よりレーシーでスポーティな車両を担当。オーテックは、上質さや洗練さを追求し、クールな車両を担当している。2025年現在、「NISMO」グレードが設定されているのは、GT-R、フェアレディZ、スカイライン、アリア、オーラ、リーフの6車で、EVのスポーツ化も強化している。


2024年に創業40周年を迎えた「NISMO(ニスモ)」は、言わずと知れた日産のスポーツブランド。当初は同社のモータースポーツ部門としてスタートし、国内外のモータースポーツ活動を牽引したが、やがてオリジナルのカスタマイズモデルやパーツを開発・販売するようになった。また現在では、「NISMOヘリテージ」という名称で、生産中止となった旧車の純正部品の復刻生産活動も行っている。
一方で「オーテック」は、日産車のカスタマイズ部門の開発企画や製造を担当する子会社として1986年に設立された。スカイラインの開発者として有名な櫻井眞一郎氏を初代社長に迎えるなど、力の入った創業で、「オーテック・ザガートステルビオ」や 「スカイライン オーテックバージョン(R32型)」のような名車も生み出してきた。
その後、両社は2022年に合併し、社名を「日産モータースポーツ&カスタマイズ」として活動を続けている。
STI
スバルのスポーツブランドである「STI」の認知度を大きく高めたのは、インプレッサの存在が大きい。1994年にSTIブランドのコンプリートカーとして「インプレッサWRX STI」が発売されると、一躍人気モデルとなり、その後もSTIバージョンは進化、発展をし続け、伝説のモデルとなった。
さらにSTIは、1990年からWRC(世界ラリー選手権)にも参戦しており、インプレッサWRXがこの舞台で大活躍したことで、「STI」ブランドを世界中に知らしめることにも成功している。
市販モデルとしては、WRX STIに加え、「STI Sport」や「tS」、「S」シリーズなどをさまざまな車種に展開、販売している。
ちなみに「STI」は「スバル・テクニカ・インターナショナル」の略で、2005年以前は「i」が小文字だったことは、クルマ好きならご存じの通りだ。

マツダスピード
1983年にマツダのモータースポーツ活動を担う組織として誕生した「マツダスピード」は、次第にワークスとして体制を強化していき、1991年のル・マン24時間レースでの優勝など輝かしい結果を残した。1999年にはマツダの業績不振によりモータースポーツ活動は縮小したが、「マツダスピード」の名を冠した特別仕様車やパーツの開発、販売を続けた。現在では、マツダ車向けのチューニングパーツやアクセサリーのブランド名として、その名称が残されている。

ラリーアート
三菱のスポーツブランドにして、三菱ワークスチームのモータースポーツ活動を担ってきた「ラリーアート」は1984年に設立された。WRC(世界ラリー選手権)やダカールラリーなど、過酷なラリー競技で活躍してきたが、2010年には同社を通してのモータースポーツ支援活動を休止してしまう。以後、パーツやキャラクターグッズの販売を継続してきたが、2021年には復活宣言がなされ、現在は、より本気度の高い純正アクセサリーパーツを開発・販売している。

無限
ホンダの創業者である本田宗一郎氏の息子、本田博俊氏が1973年に「無限」を設立。ホンダとの資本関係がないため、他のブランドとは若干立ち位置は異なるが、ホンダ車のパーツ販売やレース用エンジンの開発などを手がけてきた。1992年にはホンダF1チームのエンジンを受け継いで、F1にエンジンサプライヤーとして参戦。2004年には「M-TEC」に事業を受け渡し、ブランド名のみ残されることとなった。現在もホンダ車ベースのコンプリートカーやスペシャルパーツを開発し続けている。

特別グレード学①「ハイウェイスター」の歴史
ミニバン&トールワゴンエアロのパイオニア

日産 セレナ ハイウェイスター(現行型) 中古車中心相場 240万〜420万円
上位グレードとして設定されるハイウェイスター。現行型では、「ルキシオン」というハイウェイスターより上の最上位グレードも新設定された。


スポーティなエアロと威厳と風格を備えた顔
「ハイウェイスター」と聞いて、ディープパープルを思い出す人は音楽好きだが、日産を思い出す人はクルマ好きに違いない。そんな日産の「ハイウェイスター」は、ミニバン向けの特別なグレードだ。
大胆なデザインのバンパーやサイドスポイラー、リアスポイラーなどのエアロパーツが装着され、退屈になりがちなミニバンのスタイリングをスポーティな雰囲気へ一変させている。現在では、セレナやエルグランドといったミニバンのみならず、デイズ&ルークスら軽自動車のトールワゴンモデルにも設定され、それぞれが人気モデルとなっている。
ハイウェイスターが最初に設定されたのは1995年のラルゴで、翌年に兄弟車のセレナにも追加された。当時からファミリーカーとして売られていたミニバンだったが、白いボディのハイウェイスターが若い層にも訴えかけることとなる。さらに1997年にエルグランドが登場すると、翌1998年にはハイウェイスターが追加され、その人気を決定づけた。威厳と迫力をたたえた専用の大型メッキグリルは、その後のミニバンのデザイントレンドに、重要な布石を打つこととなった。ハイ
ウェイスターは、長い歴史と高い人気を維持しながら、特別なグレードとしてミニバン界に君臨してきた。

日産 ラフェスタ ハイウェイスター(最終型)
中古車中心相場 20万〜60万円
2代目ラフェスタはマツダ・プレマシーのOEMモデルで、ハイウェイスターのみ販売された。2018年に販売終了している。

日産 デイズ ハイウェイスター(現行型)
中古車中心相場 40万〜180万円
三菱との共同開発で誕生したトールワゴン型軽モデル。現行型は2代目で、ハイウェイスターはアンダーグリルが特徴的だ。

日産 ルークス ハイウェイスター(現行型)
中古車中心相場 70万〜200万円
デイズより高い車高を持つスーパーハイトワゴン。3代目モデルは2020年に発売された。標準グレードとは顔つきがかなり異なる。

日産 エルグランド ハイウェイスター(現行型)
中古車中心相場 30万〜190万円
昔も今もハイウェイスターの代名詞的存在。現行型では、抑揚のあるフロントアンダースポイラーの主張が強くなっている。

日産 エルグランド ハイウェイスター(先代型)
中古車中心相場 20万〜70万円
初代モデルで一世を風靡したエルグランドが、アメリカンなデザインとなってモデルチェンジ。横桟のメッキグリルが特徴だ。
特別グレード学②「タイプR」の歴史
ストイックに走りの美学を極める

ホンダ シビック タイプR(先代型) 中古車中心相場 160万〜270万円
シャープなラインで構成される未来のロボット風デザインが同型の特徴で、先々代型の販売終了から1年以上空けたうえでの、ファン待望の登場となった。


過激な走りを持つ“R”はときに劇薬ともなり得る
上記のシビックタイプRは先代モデルで、現行型となる11代目シビック(FL型)のタイプRは、現在新車では注文受付中止となっている。特別なグレードの筆頭格ともいえるホンダの「タイプR」だが、容易に購入できるモデルではない。
そもそも最初の「タイプR」は、1992年にホンダのフラッグシップスポーツモデル、NSXに設定されており、その後、インテグラやシビックにも拡大されてきた。イメージカラーとなった白いボディ色と赤いエンブレム、赤いバケットタイプのシートやアルミ製のシフトノブなど、タイプRを形作るアイコンはたくさん存在し、F1で活躍するホンダが精魂込めて開発したレーシーな雰囲気を持つスポーツモデルは、かなり人気が高かった。
しかし、現在の新車展開はシビックのみ(そもそもNSXとインテグラは新車販売されていない)。さらに先代モデルまでの歴代モデルでは、台数限定や期間限定など販売が制限されてきたが、それはなぜか。
実際にタイプRに乗ってみれば、エンジンのレスポンスやコーナリングのキレなど、その走行性能のスペシャルさに圧倒されるだろう。そして、タイプRがカタログモデルとして普通に販売してこなかった戦略にも納得してしまうに違いない。

ホンダ NSX タイプR
中古車中心相場 700万〜3800万円
1992年、初代NSXに追加された特別なグレードが、記念すべき最初のタイプRだった。エンジン内部にまで手が入っている。

ホンダ アコード ユーロR
中古車中心相場 140万〜270万円
6代目アコードに追加されたスポーツグレードで、その名称はタイプRをもじった「ユーロR」。セダン版のタイプRとして誕生した。

ホンダ インテグラ タイプR(初代モデル)
中古車中心相場 200万〜640万円
3代目インテグラをベースにエンジンのファインチューンやギアレシオの見直し、タイヤのワイド化などが行われたモデル。

ホンダ シビックタイプR(現行型)
中古車中心相場 300万〜410万円
ベースとなったシビックセダンのローアンドワイドなデザインが特徴の現行型。2.0ℓVTECターボエンジンを搭載する。
特別グレード学③「GT-R」「WRX」の歴史
グレード名から車名へと昇華

スバル WRX S4(現行型) 中古車中心相場 320万〜410万円
車名から「インプレッサ」が取れても、WRXの魂ともいえる水平対向エンジンと4WDはしっかり受け継いできた。どちらもスバルの象徴的な技術である。
黒いホイールアーチは、2021年から販売されている現行型の外観上の特徴。ラリーイメージを強めた。


日産 GT-R 中古車中心相場 700万〜4300万円
登場から早くも18年の月日が経過したGT-Rだが、次期型の噂は聞こえてこないまま、25年モデルがファイナルモデルとなることがアナウンスされている。
市場では超高額となっているGT-R。なかでも「NISMO」は庶民にはちょっと手が出せない金額となっている。

クルマ界の二大巨頭はどちらも元「グレード」
数ある特別なグレードのなかでも、特に知名度が高いのがこの2つ。「GT-R」と「WRX」、どちらもグレード名から車名へと昇格を果たした、奇跡的な“特別なグレード”である。
「GT-R」は言わずと知れた、スカイラインのハイパフォーマンスグレードであり、「スカイラインGT-R」としての名車が、ハコスカ、ケンメリ、R32、R33、R34と、5台も存在する。誰もが一度は乗ってみたいと思うスポーツモデルであり、2002年に販売終了となると、俄然次期型を望む声があがった。しかし、2007年に新たに誕生したのは、従来のGT-Rの系譜を受け継がない、世界に通用するスーパーカーへ一新された「GT-R」であった。
一方、「WRX」もインプレッサの枕詞のような存在であり、「インプレッサWRX STI」は、通好みのラリー向けスペシャルマシンとして1992年に誕生すると、2010年まで販売され続けた。そして同年、3代目インプレッサのマイナーチェンジ以降は独立車種となって、現在まで販売され続けている。
ちなみに、マツダにも「GT-R」が存在していた。1992年に発売されたファミリアGT-Rであるが、こちらもモータースポーツ向けの高いポテンシャルを誇る特別なグレードだった。

スバル インプレッサWRX STI(最終モデル)
中古車中心相場 90万〜380万円
3代目インプレッサに設定されたWRX STI。当初はハッチバックボディのみだったが、モデル途中でセダンが追加された。

スバル WRX S4(先代型)
中古車中心相場 100万〜250万円
2014年にモデルチェンジされて、車名には「S4」が付いた。4ドアボディに2.0ℓ水平対向ターボエンジンを搭載する。

日産 スカイラインGT-R(R33型)
中古車中心相場 560万〜1500万円
日本車史に残るR32型の後を継ぐ形で1995年に誕生したR33型。ふくよかになったボディにパワフルなエンジンが搭載される。

日産 スカイラインGT-R(R34型)
中古車中心相場 1700万〜5300万円
最後のスカイラインGT-RとなったR34型は、抑揚のあるボディデザインに大経ホイールを組み合わせた迫力あるデザイン。
※中古車価格はグーネット 2025年8月調べ。記事中の価格は参考であり、中古車価格を保証するものではありません。
特別グレード学④過去の名グレードの歴史
クルマ好きの心に残るスポーツモデルたち
売れに売れたモデルと印象強かったモデル
結局、“特別なグレード”というのは人の心に残るグレードということだ。販売的に成功したモデルもそうだし、インパクトが強かったモデルも特別といえる。そう考えたときに、クルマ好きの脳裏に浮かんでくるグレードがいくつかある。
たとえば三菱の「エボリューション」だ。「ランエボ」ことランサーエボリューションはもちろんだが、若いクルマ好きたちは、三菱の代名詞的モデル、パジェロにも設定があったことを知っているだろうか。トヨタでは、「GT–FOUR」や「ツアラー」なんかもクルマ好きの記憶に残っているに違いない。
すでに存在する特別なグレードを手に入れるのもいいが、自分だけの特別なグレードを見つけ出すのも楽しい。自分だけの好きなクルマ、好きなグレードを探しだそう。
ツアラー
トヨタのマークⅡ三兄弟に設定された「ツアラー」。ターボエンジン搭載の「ツアラーV」は特に人気だった。

エボリューション


GT-FOUR
WRC(世界ラリー選手権)に参戦していたセリカのホモロゲモデル。大型ウイングと4つ目ライトが秀逸だった。



Column
グレード名によく使われるアルファベットとは。
いろいろなクルマのグレード名を見ていくと、なんだかアルファベットを使用したグレード名が多いと気づく。それぞれのアルファベットにはどんな意味が隠されているのか、代表的な車種とともに見ていこう。
R…「Rally(ラリー)」や「Racing(レーシング)」などの意味がある「R」は、多くのメーカーで採用されている。

S…「Sport(スポーツ)」の意味が含まれる「S」だが、各車のエントリーグレードに使用されることも多い。

Z…「究極」「最終」「至高」などの意味を持つ「Z」は多くのメーカーで採用され、上級グレードに冠されがちだ。

X…「未知数」や「変革」などの意味を表す「X」だが、日産やホンダでは中間グレードに用いられることが多い。

GT…グレード名ではないがトヨタ2000GTの存在が「GT(グランドツーリング)」のイメージを決定づけた。

RS…左記の「R」と「S」の組み合わせということで、やはりスポーティなグレードになりがち。種類はじつに多い。
