カー!といえばグーネットピット

無料整備工場検索&予約アプリ

グーネットピットアプリ

故障・修理
更新日:2019.12.16 / 掲載日:2019.12.16

トヨタ名車列伝 昭和に生まれた日本初のミッドシップ2シータースポーツ

 クルマを構成する部品の中で、最たる重量物となるエンジンとトランスミッション。運動性能を高めるべく、それを車体の中心にレイアウトしたのがミッドシップカーだ。特にコクピットの後方にエンジンとトランスミッションを配するリヤMRレイアウトは、主にスーパースポーツをはじめとする高性能車両に採用されてきた。
 日本でリヤMRを初めて採用したのが、今回このページで紹介するAW11型の初代MR2。高嶺の花であったスーパースポーツでしか味わうことができなかったリヤMRの乗り味を、MR2の登場により多くのクルマ好きが体験できるようになる。

 FFやFRといった駆動方式を表す略語。ミッドシップ車両はMRとなるのだが、MR2のMRはミッドシップエンジン・リヤドライブを示すものではない。本誌をご覧くださる、クルマについて博学のみなさんであればご存じだろうと思うが、ミッドシップ・ラナバウトを意味する(ついでにいえば「2」は2シーターを意味する)。ちなみにラナバウトとは車体のタイプを表すもので、二人乗り小型スポーツカーがそれに当てはまる。
 エンジンをミッドシップ(キャビン後方)に搭載するということは、メーカーとしてはなかりの思い切りが不可欠だったはず。というのも本来であれば後席やラゲッジとなっていた部分にエンジンとトランスミッションを配置するので、居住性や利便性といった面では圧倒的に不利となるからだ。しかしそんなことを気にさせない魅力がMRにはある。重量物が車体中央に集約されることによる、圧倒的なコーナリング性能がそれ。
 AWが登場する以前は、MRといえばスーパーカーが代名詞で、FRやFFと全く異なるMRの乗り味を体感することができる人というのは、当時非常に限られていた。多くのクルマ好きたちは雑誌のインプレッションなどから想像するしかなかったのだが、AWが市販化されたことで実際にMRという駆動方式のドライビングを楽しめるようになったのだ。これこそがAWが日本の自動車界に残した最たる功績といえるだろう。

長い冷却水路ゆえに、冷却水交換は要注意。特にエア抜きは念入りにやるべし!

しっかりMRらしい走りを楽しめるシャーシへ
 AW専門ではないが、AW用のオリジナルパーツをリリースするなど、AWを得意とするチームタックル代表、広納さんに現在行うべきAWのメンテについてお話を伺った。
「MRというパッケージングゆえに生じるトラブルや、それに合わせたメンテメンテが必要となります。たとえばハブですが、ご存じの通りFF化されたE80カローラの部品を前後入れ替えて流用しているのですが、FFとMRでは荷重の掛かり方が全く異なるようで、AWでは前後ともガタが発生しやすいです。特にワイドホイールをいわゆる面イチで装着している車両だと、1万km程度でガタが発生してしまうこともありますよ」
 エンジンやミッションは?
「エンジンであれば、気をつけたいのが冷却水のエア抜き作業ですね。フロントにあるラジエーターからリヤにあるエンジンまでを繋ぐ冷却水路は、フロントエンジンのクルマと比べて長く、そして複雑なので、冷却水交換時になかなかエアが抜けてくれません。各所に設けられたエア抜きバルブからエア抜きするのはもちろんですが、念入りに行ってやり過ぎということはありません。
 ミッションは5速ギヤやクラッチハブの嵌合が固い場合が多く、当時から分解整備を行う際に新品部品への交換が前提となっていたのですが、現在では部品供給がなくなってしまい、分解整備を躊躇してしまう状況となっています」

エンジン

NAの4A-Gと、S/Cによる過給でトルクフルな4A-GZの2種がメイン

4A-GZE

4A-GE

AWに搭載されたエンジンは、1.6LDOHCの4A-GEとそれにS/Cを装着した4A-GZEがメイン。それ以外に1.5Lの3A-LUも設定されていた。とはいえ3Aを搭載する車両は当時でも少なく、30年を経た現在ではお目にかかれることはほとんどないといっていいだろう。ということでここではNAとS/Cの4A-G搭載車のメンテナンスについてお話を伺った。

デスビのオイル漏れが定番その原因は2種あり
AWに限らず4A-Gエンジンの定番トラブルとなるのがデスビからのオイル漏れ。漏れが発生する部分は2か所あり、デスビのハウジングとエンジンの間のパッキンからと、デスビシャフトのシールから漏れる場合がある。部品供給がないため、後者の場合は、タックルでは分解整備で対応しているそうだ。

タイミングベルトは10万kmごとがベースとなるが
タイミングベルトは、メーカー指定の10万kmごとに交換するのが基本だが、あくまでもそれは日々乗られていた場合の話。不動期間などがあった車両はベルトの状態を把握できないので、最近整備した記録がないような場合は、交換したほうがいいようだ。またその際には同時にW/Pのメンテも行おう。

アイドリングを制御するためのISCVが定番トラブル箇所
アイドリングが不調の場合は、ISCVユニットが不具合を起こしている場合が多い。4A-GZの場合は写真の位置にISCVユニットが装備されているのだが、この部品も製造廃止となってしまっており、新品を入手することができない。それゆえ現在では機能する中古部品に交換するしかないようだ。

NAとS/Cで異なるベルトの取り回し
クランクプーリーから補機類を駆動するベルトまわり。4A-GEと4A-GZではS/Cの有無でベルトや補機類のレイアウトが異なっている。4A-GZではS/Cが車体後方側に設置されるため、4A-GEで車体後方側に設置されていたオルタネーターが車両前方側に設置されるようになる。

S/Cオイルも定期的なメンテナンスが必須
S/Cには内部を潤滑するオイルが入っている。いうまでもなくこのオイルのメンテナンスも必要不可欠であり、オイル交換がされないままだと焼き付きが発生する場合もあるそうだ。写真の矢印部がS/Cオイルのドレンで、ここからオイルを抜き取る。メンテサイクルは車検ごとには行いたい。

オイルフィルターとエンジンの間にあるブロック
社外のエキマニに変更された車両の場合、オイルフィルターの脱着がスペース的にやりづらいことが多いという。チームタックルではオイルフィルターとシリンダーブロックの間に設置される部品を取り去ってしまうことで、作業スペースを広げるという手法で対応しているそうだ。

冷却水路のドレンとエア抜きバルブの位置
AWは冷却水交換がとても面倒だ。冷却水を抜くのも、ラジエーターのドレン以外に、ラジエーターとエンジンを繋ぐパイプに設けられたのドレン2か所の他、オイルフィルター付近にあるシリンダーブロックのドレンプラグからも抜かないと、古い冷却水を完全に抜き取れない。そして新しい冷却水を入れる際には、 エア抜き穴から冷却水が溢れたことを確認した後で、エンジン側にあるラジエーターキャップ部でしっかりとエア抜き作業を行う必要がある。

純正マフラーは錆びて穴が開いていること多し
車体後端部に横向きに配置された大型のサイレンサーの下部が錆びて穴が開いてしまうことが多いようだ。純正マフラーは既に製造廃止となる。

社外EXマニ装着時の注意点
社外のエキマニを装着した場合、周辺パーツへの熱害には要注意だ。オイルエレメントのところでも触れたが、エキマニと排気管が近いので油温を上昇させてしまう他、4A-GZの場合、オルタネーターに熱害が及んだり、シフトケーブルのアウターを溶かし、それにより車両火災が発生する場合もあるという。

駆動系

分解整備時に不可欠な部品が製造廃止に! 安易に分解整備を行うことができない

シフトワイヤー切れ
AWのシフトはワイヤー式。新車から交換されることなどない部品だけに、昨今ではワイヤー切れが発生する車両もあるそうだ。

ドラシャトラブルはまれ
FFではブーツ切れが定番となるドライブシャフトだが、操舵による力が加わらないので、ブーツを定期交換すればトラブルはほぼないという。

ミッションやデフのO/H時に不可欠となる部品の供給がない
ミッションは、ミッション本体のO/Hの他社外の機械式LSDをO/Hする際に分解が必要となるが、現役時代から5速ギヤなどの嵌合がきつく、部品の破壊分解が前提だったそうだ。しかし現在ではその新品交換が前提の部品が製造廃止となってしまっていて、ミッションや機械式LSDのO/Hを躊躇してしまう事態に陥っているそうだ。

ガレージジャッキをフロア部に掛けるのはNG、という一般常識(?)はAWではNG

足回り

FRONT

FF車両から流用された足回り部品、MR車両の走行負荷には役不足?

REAR

通称テンションロッドブッシュが軟らか過ぎてヘタリが早い
フロントのストラットバークッション、通称でいうところのテンションロッドブッシュの硬度が軟らか過ぎるようで、寿命が短くガタが発生しやすいそうだ。AE86の純正品が適度に硬度が上がり、形状的にも流用が可能なので、チームタックルではAE86用を使ってリフレッシュすることが多いという。

ロアアームのボールジョイントにガタが発生していること多し
ロアアームとナックルを繋ぐボールジョイントもガタが出やすい部分。ロアアームにボールジョイントがカシめられている場合が多いが、AWの場合ボールジョイントはボルト留めとなる別部品なので簡単に交換可能。現在のところ部品の供給もあるので、今のうちに交換しておくほうがいいだろう。

走行中のフロント部から聞こえる異音の原因はここかも?
走行中にフロント部から異音が聞こえる場合、スタビライザーブッシュのガタが原因となることとともに、ステアリングラックブッシュの摩耗によるガタであるケースも多いという。ラックエンドを分解すると見える樹脂ブッシュの交換で改善されることもある。まずはタイロッドのガタを確認。

リヤサスアームのガタ発生ポイント2点
リヤもフロント同様に通称でいうところのテンションロッドのブッシュにガタが出やすい。またサスペンションアームNo.2(トーを調整するアーム)のボディ側が前期はゴムブッシュだが、後期はピロボールとなるので、乗り味はピロのほうに軍配が上がるもののガタが発生しやすいという欠点がある。

ハブは前後とも容量不足ガタの確認は頻繁に!
FF用を前後入れ替えて流用するハブだが、前後ともにFFよりも負荷が大きいようで、ガタが発生しやすい。またガタが発生したまま走行距離を伸ばしてしまうと、軸部が摩耗してしまうようで、ベアリング交換してもガタが早く出てしまうので、ガタに気づいたら早めに交換するほうがいいだろう。

サイドブレーキの遊び調整遊びを詰め過ぎてしまうと……
サイドブレーキの調整を誤り、引きずりが発生してしまっている車両が多い。これはAWのサイドブレーキレバーが、引いた状態で写真のように垂直となるのが正常なのだが、前に傾いた状態に調整されてしまうことが多いのが原因。基本的にフロア下のサイドブレーキ調整部に貼られた調整方法のシールに従って調整しよう。ちなみに下の写真はブレーキキャリパーを真下から見たものだが、サイドブレーキのレバー部とストッパーに、隙間があるのはダメな調整となる(サイドブレーキ解除時)。

ブレーキマスターシリンダーはインナーキットも入手困難
ブレーキのマスターシリンダーは、アッセンブリーはもちろんだが、今やインナーキットさえ部品供給がないそうだ。つまりO/Hさえできないのだが、チームタックルでは、他車種用のシールなどを流用し対応して、O/Hを行っているという。

外装系

気づかぬうちに錆が進行しているカバーや内張りの中に要注意

Awの錆多発ポイントはこちら!
フロントのトランク内の底の部分にブレーキのマスターシリンダーから漏れたフルードが溜まり錆が発生していることが多い。

フロントバンパーのレインホースが錆びてしまっていることが多いという。写真のものはかなり重傷で交換されたものだが、これに近い状態で錆びていることも少なくはないそうだ。

ラジエーターのロアマウントも錆びやすい部分。またこの部分は、誤ってガレージジャッキを掛けられてしまうことが多く、写真のように変形していることも多い。

ラジエーターを固定するブラケットも錆びていることが多い。

フロント側ガレージジャッキアップポイントは?
ラジエーターのロアサポート同様に、ロアアームサポート部もフロアジャッキを掛けられて変形していることが多い部分となる。ガレージジャッキを掛ける位置は、ボディではなくメンバー部に掛けることが一般的だが、AWではその一般論に縛られてはいけない。

フロントのガレージジャッキポイントは、トランク部の底、つまりボディ部側に設けられているのだ(矢印部)。ちなみにロアアームサポートは残念ながら新品部品の供給がない。チームタックルでは、ボディ補強パーツとして代用部品を用意しているので、それを使うのも手だ。

センタートンネルに収まる燃料タンクのメンテや整備はかなり面倒となる
AWのガソリンタンクは、フロアのセンタートンネル内に埋め込まれる。重量物をホイールベース内に配するという志しの高い配置となるが、旧車となった場合、メンテナンスが必要となることも多く、その作業性に問題がなくもない。たとえばタンク内が錆びて脱着が必要となった時などに、手間がかかるのだ。

Cピラー部に手をつく、寄りかかるはNG
エンジンの整備時などに気をつけたいのが、Cピラー後方の樹脂パーツ。ここに手をかけたり寄りかかったりすると、劣化した樹脂が割れてしまうのだ。新品の供給も終了しているので注意が必要だ。またリヤのバイザーは、室内からのボルトを固定したまま取り外そうすることが多く、割れていることが多い。

AWの特徴的な部分となるヘッドライトあれこれ
リトラクタブルヘッドライトはAWの魅力のひとつ。そのトラブルは、リンク類の不具合などから左右の動きが同調しなくなることで、モーター部の接点のどちらかが常にオンになり、作動したままになることもある。またトラブルではないが、ライト前方のモール(矢印部)が現在黒のみの供給となるので、ボディと別色となってしまう。

内装系

廉価車ならではの簡素な内装は大きな不具合はない

P/Wレギュレーターはギヤ割れが定番
パワーウインドウは、ワイヤー式レギュレーターのギヤが欠けてしまうトラブルが定番。特にオートでの上げ下げをすると、ギヤ部に過大な負荷が掛かる構造となるので、ギヤを保護する意味でも閉め切る、開け切る際にはオートモードではなく、スイッチ操作でギヤに負担が掛からない操作を行うようにしたい。

灯火類&ワイパースイッチの軸部のクラック
車内のスイッチ類のトラブルとしては、右側のライト、左側のワイパースイッチのトラブルが定番となる。壊れるのは樹脂のハンドルパーツとスイッチ本体の金属部が合わさる軸部分。樹脂部にクラックが入ってしまうことで、スイッチ本体側を回転させることができなくなってしまうという。

空調&オーディオパネルのトリム固定部の割れ
オーディオは2DINが入るAW。DIYで交換されることも多いようで、空調のスイッチ部と一体となるトリムの固定ネジ部が破損していることが珍しくないようだ。内装の部品だけに新品パーツも手に入るとは思えないため、まだ傷ついていないトリムの場合は、破損に注意して、オーディオ交換などを行うようにしたい。

教えてくれたのはチームタックルの広納さん

Team Tackle
80年代以前の旧車のメンテナンスを得意としているのが兵庫にあるチームタックルだ。代表の広納さんは90年代にAE86などでレースを行っていたという経歴の持ち主でもある。そんなチームタックルでは、80年代前後のトヨタ車オーナー他、多くのクルマ好きが、2か月ごとにガレージに集まる「よかわミーティング」も開催している。


この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

この人の記事を読む

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

ȥURL򥳥ԡޤ