故障・修理
更新日:2021.08.21 / 掲載日:2021.07.28
DATSUN「フェアレディ」再起動!!【VOL.3】
これまでオートメカニック誌で数々のレストアを手掛けてきたハリー山崎ですが、そんな彼が昨年末に知人から「アメリカから輸入するフェアレディの車検を通すのを助けて……」というヘルプコールを受けた。5年近くコツコツと直してきたベンツちゃんの代わりを探していたこともあって、この依頼を即座に快諾。こうして1969年式のフェアレディが次のメンテの相棒に決定したわけです。
国内外に多くの熱狂的なファンを持つモデルだけに、一人でコツコツ作業をするのはもったいない。そこで今回は、これまで多くの企画でお世話になってきた「日本工学院北海道専門学校 自動車整備科」の協力を得て、自動車整備の未来を担う学生さん達と一緒にレストアを進めることにします。
やるつもりはなかったけれどボディも降ろすことに……
ここまで状態が悪いと、ボディ側もしっかりとやる必要があるだろう。ちなみにこのお二人は、同校自動車整備科の卒業生。現在は日産1級整備士として最前線で日々活躍中。忙しいなか特別に作業を手伝ってもらった。
プロの手助けを借りてパーツ外しに挑みます
ニコイチのリヤ側のサビは少なめで、ガソリンタンク自体もしっかりしていた。ただし、タンクの形式が異なるためか、ボディ側のガソリン配管とマッチしておらず、無理やり加工した形跡があった。いいかげんな燃料系の加工やパイプ&ホースの劣化は、車両火災の原因になるので、ここはしっかりとしたカイゼン策が必要だろう。
各パーツはまさにボロボロ。脱着の難易度は過去最高レベル
サビが酷いフロント側は、ボディ×フレーム固定ボルトのみならずブレーキパイプ接続部のナットまで激しくサビている。サビたブレーキパイプは危険なのでカットしてしまう。ああ、車検はどんどん遠のいていくなあ……。
ドキドキが止まらない。足回りの状態は如何に?
ボディとフレームの固定ボルトを慎重に取り外していく。ドイツ車だと、新旧問わず過剰かつ贅沢な構造を持つモデルが多いため、ボルト緩めやパーツ脱着に悩んでしまうことも多いが、このフェアレディは、整備性も良好。ボルトの脱着も比較的楽に進めることができる。この整備性の良さも、彼の地で好評だった理由だろう。
天井クレーンを使ってフレームを脱着する
ボディの変形が心配だったため、ボディが無理なく持ち上げるように、フロント側を天井クレーン、リヤ側を人力パワー(2人)で注意深く持ち上げた。サイドシルが激しくサビていると逆への字になっちゃうかも……、とも心配したが、状態は想定よりもマシな状態。緊張の一瞬を無事クリアすることができたのだ。
整備書で見かけるXフレーム。パッと見はキレイです
ボディに比べると圧倒的な頑丈さを持つXフレーム。フェアレディの車体強度をこの頑丈なフレームが受け持っていると思うと、ボディ側の酷いサビ補修の方法を考えるストレスも若干軽減された。
ボロボロボディをお手製キャリアに載せて作業続行
溶接のエキスパート、整備科の齋藤先生に作ってもらったキャリアと変形防止バーのおかげで作業性向上を狙う。ネタばらしになるが、この2つのツールがこの先のレストアにおいて大活躍します。
あまりにも酷い汚れに閉口。禁断の水洗いをしちゃいます……
パーツの洗浄と点検はメンテナンスの基本。とはいえ、このフェアレディのフレームは、半世紀の間に蓄積した汚れが分厚く付着しており点検どころではない。少しでもクリーンな作業環境を求めて、思い切って洗剤と温水で洗浄することに。フレーム内部からいろいろなゴミが出てきました。
モハーヴェ砂漠(北米の有名砂漠)の洪水のごとき濁流に遭遇
今まで体験してきた数多のメンテでは、車体の中空部やフレーム内部から謎の物質が出てきて閉口したこともあった。そのため、フェアレディのフレーム洗浄はドキドキしながら進めていた。幸いにも小動物の巣のような異物は出てこなかったが、溢れ出る大量のドロに驚いてしまった。さらにスプレーガンでボディの塗装部分を軽く洗浄したら、塗装面があちこち剥離状態に……。やりすぎてしまったかも。
【今後の予告】ノックスドールに協力してもらってボディ内部を内視鏡で検査します!
最初に送ってもらったフェアレディの画像をメールで見たときは、基本的な整備で並行輸入&車検はなんとか通りそうとも考えていたが、実際はそんな甘い考えを無残に打ち破ってくれた。当初描いていたプランとはかけ離れた展開になりそうだ。だが、旧車はフレームさえしっかりしていればまだ復活の望みがある。次回はフレーム内部の錆の内視鏡検査をすることにする。乞うご期待あれ!
●文:ハリー山崎