パーツ取付・交換
更新日:2019.12.16 / 掲載日:2019.12.16

車のマフラー|重要な役割と交換するメリット・デメリット

車のマフラー|重要な役割と交換するメリット・デメリット

車好きにとって気になるパーツの1つであるマフラー。交換することで音質を変えたりルックスを向上させたりできるため、人気のカスタムパーツとして様々な種類が販売されています。このページでは、そんなマフラーについて役割や交換するメリット・デメリットをご紹介していきます。

マフラーの役割

車のマフラーと言うと、「エンジンから車の後ろにある出口までのパイプ全体」を指すものというイメージが浸透していますが、実はそれは間違いです。正確には、エンジンの各シリンダーから出るガスを集めて1本にまとめる部分をエキゾーストマニホールド。エキゾーストマニホールドから消音器までを繋げるパイプをエキゾーストパイプと言います。その後端に取り付けられる消音器がマフラーです。マフラーには消音器を含め以下の3つの役割があります。

排気

車のエンジンは4気筒や6気筒というように、複数のシリンダーが組み合わさって稼働しています。そして、エンジンをスムーズに回すために、各シリンダーの排気タイミングは気筒ごとにずれています。しかし、異なるタイミングで連続的にガスが排出されると、排気ガス同士が干渉したり乱気流が発生したりとスムーズな排気ができません。これを解消するためのパーツが、先ほど解説したエキゾーストマニホールドです。エキゾーストマニホールドは各シリンダーの排気ガスを集めるためのパイプですが、シリンダーごとにパイプの長さを変えて排気干渉や乱気流の発生を防いでいます。長さの異なるパイプをまとめるためにねじれた造形をしていることから、エキゾーストマニホールドは別名“タコ足”とも呼ばれています。

有害物質の除去

エンジンから排気されるガスの中には、自然や人間に害のある有害物質が含まれています。そのため、車には排気ガス中の有害物質を減少させるための“キャタライザー”というパーツが取り付けられています。キャタライザーはハニカム(蜂の巣)構造で複数のガスの経路を持っており、その経路には白金やロジウムといった貴金属のコーティングが施されています。この貴金属でできた経路を排気ガスが通ることで、化学反応を起こして有害物質を除去しています。とはいえ、完璧に有害物質を除去できる訳ではないため、電気自動車のように完全にクリーンになるまでは至らないのが実情です。

排気音を抑える

エンジンはガソリンを燃やして爆発させることでエネルギーを得ているため、排気をそのまま放出すると非常に大きな爆発音が響いてしまいます。そうした爆発音を軽減するために、マフラー内部はグラスウールなどの消音材や音圧を下げるための仕切りなどで構成されています。レーシングカーの排気音は普通の乗用車に比べとても大きいですが、それは排気効率を重視した結果マフラーの消音機能はほぼ失われているからです。マフラーがないとそのくらい大きな音になってしまうとも言えるでしょう。ちなみに、マフラーは英語の「muffle(音を消す)」という単語が語源となっています。muffleは音を消す以外にも「覆う」「包む」などの意味もあり、首にかけるマフラーも実は同じ語源からきています。

マフラーに関する規定

マフラーに関する規定

マフラーはドレスアップや性能アップを目的に交換されることが多いですが、車検に適合しているかも考慮しながら選ぶ必要があります。国土交通省が定める道路運送車両法に適合しないマフラーでは、車検に通ることができないからです。道路運送車両法のマフラーに関する規定を要約すると以下のようになります。

・マフラーのテールエンドがバンパーから飛び出したり、尖ったりしている場合は車検に通らない
・マフラーから排出される音量は、2010年4月1日以降に生産された車であれば普通乗用車96dB、軽自動車は97dB以下。それ以前に生産された車であれば96~103dB以下の音量でなければならない
・車両の最低地上高は9cm以上確保されていなければならない。つまりマフラーも、その取り付け位置が地面から9cm以上離れている必要がある
・排気ガス浄化装置である触媒が装着されていない場合、排ガス規制に該当するため車検に通らない

規定を見ると難しく感じるかもしれませんが、マフラーが車検に対応しているかはマフラーにある刻印を見れば分かるので安心してください。「保安基準適合品」「車検対応品」「JASMA認定品」のいずれかが記載されていれば、車検に対応したマフラーとなります。ただし、保安基準適合品と車検対応品のマフラーは元から車検に通る規定値のギリギリで設計されている場合があるので注意が必要です。マフラーを長期間使用していると消音材が劣化し、車検の規定値よりも音量が大きくなる可能性があります。劣化して車検に不合格になってしまった場合はマフラーを交換する必要があります。心配な方はより厳しい基準に対応しているJASMA認定品のマフラーを選ぶといいでしょう。

マフラーの種類

マフラーの種類

マフラーはドレスアップを狙ったものから軽量化を狙ったものまで、様々な素材やデザインのものが販売されています。マフラーと言えば鉄製のイメージがあるかもしれませんが、ほかにもチタンやカーボンで作られたモデルもあり、それぞれ以下のような特徴を持っています。

スチール

スチールは加工が容易で単価も安いため、一昔前の純正マフラーに多く採用されていました。防錆処理は施されているものの、長年使っていると錆びやすいです。特に、塩風を受ける海岸沿いや融雪剤が撒かれる降雪地帯を走る車は錆びやすいので要注意です。こうしたデメリットから、近年の純正マフラーはステンレス製がトレンドになりつつあります。なお、スチール製マフラーは低めの音が出る傾向にあります。

ステンレス

スチールよりも錆びにくく高強度であることから、近年の標準マフラーはステンレス製のものが多いです。スチールに比べればコストは高いですが、チタンやカーボンに比べ安価な素材と言えます。スチールマフラーとは異なり研磨によって鏡面仕上げもできるため、美しい輝きからドレスアップ効果も期待できます。ちなみにステンレスは「ステイン(汚れ)・レス(ない)」が語源で、その名の通り汚れづらく錆びにくい素材です。音質はスチールに比べると高めで、その差は高回転域で特に感じやすいでしょう。

チタン

軽量な金属として知られるチタン合金。軽量かつ高強度、おまけに錆にも強いのでマフラーにはうってつけの素材です。その証拠に、レーシングカーのマフラーはチタン製のものがほとんどです。性能面では文句なしのチタンですが、加工が難しくコストが高いという欠点があるため、市販車のマフラーではサイレンサーやテールエンドのみに使われることが多いです。オールチタン製のマフラーも販売されていますが、非常に高価となっています。チタンマフラーは甲高く乾いた音がする特徴があり、その音色に魅了される車好きも多いようです。

カーボン

軽量素材の代名詞とも言えるカーボンファイバー。軽量高剛性なことからマフラー以外にもボンネットやウイングなどにも使用される素材です。高性能なだけでなく、カーボン独特の折り目模様はドレスアップ効果も与えてくれます。カーボンは製造方法によってウエットカーボンとドライカーボンがあり、ウエットカーボンはコストが低いが強度が低く熱に弱い、ドライカーボンはコストが高いが強度が高く熱に強いという特徴があります。一般的にカーボンとして売られているものはウエットカーボンであることが多く、熱に弱い特性からマフラーではテールエンドのみに採用されることが多いです。

マフラーの本数と排気量

マフラーの本数と排気量

マフラーの本数は片側1本出しが一般的ですが、ほかにも

・片側2本出し
・両側2本出し
・両側4本出し
・センター2本出し

など様々な本数のマフラーが存在します。なぜこのようにマフラーの本数が違うかと言うと、「消音効果」と「デザイン」に違いが生まれるからです。以下で詳しく見ていきましょう。

消音効果

マフラーの本数が多いと迫力が増して音が大きそうなイメージを抱くかもしれません。しかし、実はマフラーの本数が多いほうがサイレンサーの数が増える分、消音効果が高くなります。排気量の大きい車はマフラーが2本(4本)出しであることが多いですが、それはサイレンサーが1本だけだと消音効果が十分に得られないことが理由です。また、サイレンサーの径が大きくなると最低地上高が足らなくなってしまうので、それを分散してクリアランスを確保する狙いもあります。

デザイン

車好きにとって、マフラーは車のパフォーマンスを誇示する一種のアイコンのような存在です。片側1本出しよりも、両側2本出しやセンター2本出しのほうが「速そう」「高級感がある」といったイメージを受けます。そのため、デザイン性を重視して1本出しで十分な排気量であってもあえて2本出し、4本出しにするケースがあります。特にスポーツカーではその傾向が強く、純正1本出しマフラーの車種であっても社外品では両側2本出しやセンター出しの大口径マフラーなどが販売されています。

マフラー交換のメリット

マフラー交換のメリット

ここまでの解説からも分かるように、マフラーは素材や本数などで特性が変化します。軽量化やドレスアップ効果を狙っての交換が多いと思いますが、今一度マフラー交換で得られるメリットについて確認していきましょう。

素材が選べる

先ほどご紹介した通り、マフラーはステンレスやチタン、カーボンなど様々な素材で作られています。スチールマフラーからステンレスマフラーに交換すれば錆びにくく。チタンマフラーにすれば軽量化に繋がるなど、自分が求める素材でできたマフラーを選べるのは大きなメリットです。素材によっては高価なものもありますが、音質や見た目に歴然とした違いがあるので価格に見合った価値はあると言えます。

排気効率がアップする

マフラーを交換する目的としてパワーアップを期待する方は多いでしょう。エキゾーストマニホールドやエキゾーストパイプによっても排気効率は変わってきますが、マフラー単体でも十分効果はあります。しかし、マフラーの排気効率は抜けが良いほど正義かと言うと、そう単純なものでもありません。過剰に抜けが良すぎるマフラーを装着すると、音ばかり大きくなってパワーが上がらないこともあるからです。特性が変化する場合もあり、「高回転の伸びが良くなった代わりに低速トルクがスカスカになった」といったパターンもあります。

実はマフラーにはエンジンから排気ガスを引っ張る役割があり、ピストンだけの力で排気を行っている訳ではありません。マフラーを太くすると排気効率は上がりますが、同時に排気流速が下がってしまいます。これは水道のホースをイメージすると分かりやすいです。ホースを指でつまんで流路を狭くすると水の勢いが増しますが、指を離すと水の勢いは下がります。また、極端につまみすぎても水の勢いは失われます。これと同じことがマフラーにも起きており、太すぎるマフラーは流速が上がらないため排気をうまく引っ張れません。細すぎても排気が詰まってしまいますが、太すぎても返って逆効果になるのです。そのため、マフラーの排気効率はエンジンに見合ったものを選ぶことが重要です。細すぎず太すぎず、エンジンに合ったベストなマフラーを選ぶことで初めてエンジンパワーの向上が見込めるでしょう。

ドレスアップ効果

素材の放つ輝きやテールエンドのデザインなど、マフラーが車に与える印象は意外と大きいものです。エアロやホイールがバッチリカスタムされていても、マフラーが純正ではどこかいまいちな感じになってしまいます。大口径の砲弾型マフラーや2本出しのデュアルマフラーなど、自分の好みのデザインのマフラーを選ぶことで、理想的なリアビューを実現できるでしょう。

自分好みの音にできる

車検に通る音量の範囲であれば、自分好みのサウンドを追及することが可能です。ステンレスやチタンなど、素材によっても音質は変わりますが、構造によってもサウンドは変化します。同じ素材のマフラーでも、メーカーやタイプ(1本出しor2本出しなど)によってサウンドは変わります。マフラーによっては動画サイトなどで実際の音が聞けるものもあるので、購入前に一度チェックしてみることをおすすめします。

マフラー交換のデメリット

マフラー交換のデメリット

マフラー交換はメリットばかりに目がいきがちですが、デメリットもしっかりと把握しておく必要があります。マフラー交換のデメリットは主に以下の2点です。

排気音が大きくなる場合がある

マフラーを交換する場合、少なからず純正マフラーより排気音が大きくなることを覚悟しなければなりません。車検に通る音量のマフラーであっても、人によっては迷惑だと感じることもあるでしょう。特に、深夜の住宅街ではできるだけ無駄にアクセルを吹かさないなどの配慮が必要です。また、先ほども触れましたが排気抜けが良すぎると音量が大きくなる上に低速トルクがスカスカになることがあるので注意してください。ちなみに、低速トルクがスカスカになってしまった場合はマフラーそのものを交換せずとも対処する方法があります。その方法とは、マフラーエンドに“バッフル”というパーツを装着することです。バッフルはラッパのようなフォルムをしており、排気抜けを適度に抑制することで音量を低減し、排気の抜けすぎも防いでくれます。上級テクニックになりますが、あえて抜けすぎるマフラーを装着してバッフルで調整する人もいます。また、エアロを交換する際はテールエンド形状とのマッチングを考えてから行いましょう。エアロのデザインとマフラーのテールエンドがミスマッチだと見栄えが悪くなる可能性があります。

車検に通りにくくなることも…

先ほどもお伝えしたように、マフラーの音量や取り付け位置は道路運送車両法によって厳しく規定が定められています。規定に沿わないマフラーでは車検に合格することができないので、購入の際はマフラーが車検対応なのかをしっかりチェックしておきましょう。

・保安基準適合品
・車検対応品
・JASMA認定品

これらの表記は車検対応を表すものなので、マフラー選びの指標にするといいでしょう。中でもJASMA認定品は最も厳しい基準に合格したマフラーなので、保安基準適合品や車検対応品のマフラーよりも更に安心感がありおすすめです。マフラーの規制は年々厳しくなっており、派手なエキゾーストノートやターボ車のパワーアップが手軽に楽しめなくなっていることも事実です。

参考URL:https://car-me.jp/custom/articles/1965

マフラー交換の費用

マフラー交換の費用

好みのマフラーが決まれば早速交換したいところですが、交換費用はどのくらいかかるのでしょうか?マフラー交換はマフラー本体の部品代と、交換工賃がかかります。内訳としては以下の通りです。

・マフラーの部品代=1~10万円程度
・工賃=作業時間1時間あたり5,000円程度

マフラーの部品代は純正ほど高く、リビルド(中古)品のほうが安くなります。純正マフラーの相場は6~10万円程度、リビルド品のマフラーの相場は1万~5万円程度と考えておけばいいでしょう。なお、社外品のマフラーはものにもよりますが純正とリビルド品の中間くらいの価格を想定するといいです。チタン製など一部純正よりも高額なマフラーはありますが、基本的には純正マフラーより安価に交換できます。工賃はマフラー単体の交換であれば、平均して5,000円~2万円程度が相場です。ディーラーやカー用品店など、作業するショップによって多少前後することがあるので事前に見積もりを取って比較するといいでしょう。なお、ディーラーでマフラー交換をお願いする場合は基本的に純正マフラーのみの対応ということが多いようです。社外マフラーへの交換は、カー用品店で作業してもらいましょう。

マフラー交換にかかる時間

マフラー交換にかかる時間

交換工賃は作業時間によって前後しますが、一般的には1時間あれば作業は終了します。マフラーの取り付けが複雑な車種の場合は、作業時間が延びて工賃が増えることもあります。また、繁忙期や込み具合によっては作業時間に加えて待ち時間がかかることがあります。待ち時間が工賃にカウントされることはありませんが、時間のロスを減らすためにも事前に作業予約をしておくことをおすすめします。

自分でマフラー交換する場合の手順

自分でマフラー交換する場合の手順

マフラー交換はディーラーやカー用品店に依頼するのが一般的ですが、技術的にはそれほど難しい作業ではなく、自分で行うこともできます。DIYでマフラー交換をするにあたって、必要な工具や注意事項、作業手順を解説します。

マフラー交換に必要なもの

・作業用グローブ(素手では手を切ってしまう恐れがあるため厳禁)
・メガネレンチ
・ソケット&ラチェットハンドル
・トルクレンチ
・ジャッキ
・リジットラック(通称:馬)
・交換用ガスケット

マフラー交換時の注意事項

・走行直後はマフラーが熱いので、しばらくして冷えてから作業すること。熱いまま作業すると熱膨張でボルトが外しづらく、火傷の危険もある
・ガスケットは再利用不可なので無条件で交換が必要だが、劣化度合いによってはマフラーハンガー(ゴム製)やボルト・ナットも交換する
・ジャッキだけ噛ませた状態では絶対に作業しない。万が一ジャッキが外れると車に押し潰されて死亡する危険があるので、必ずリジットラックに車体を載せてから作業する

マフラー交換の作業手順

1. 車の後ろをジャッキアップし、リジットラックを2つ噛ませる。リジットラックを噛ませる位置はリアタイヤ前のサイドメンバーあたりが適切(車種により異なります)
2. マフラーとエキゾーストパイプを繋ぐボルトを外す。ボルトが固い場合は、無理に回そうとせずに潤滑剤などを併用すること(無理に回すとボルトが折れます)
3. マフラーを吊るしているマフラーハンガーを取り外し、マフラー本体を取り外す
4. 交換するマフラーをマフラーハンガーで再び吊るす
5. エキゾーストパイプとマフラーの間に新品のガスケットを挟み、ボルトで固定する
6. マフラーを取り付けたら、リジットラック→ジャッキの順番で車を降ろして完了

まとめ

いかがでしたか? マフラーと一口に言っても、その材質や形状、音質など様々な違いがあります。エンジンパワーを引き出したり車のリアビューをドレスアップしてくれたりと、マフラーが車に与える影響は大きいです。市場には多種多様なマフラーがありますが、購入の際は「JASMA認定品」など車検に対応しているかどうかをしっかりとチェックする必要があります。また、車検に受かったとしても近隣住民や環境への配慮も忘れないようにしましょう。ルックスや性能、音質など、あなた好みの1本を見つけてカーライフを楽しんでください!

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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