パーツ取付・交換
更新日:2022.12.20 / 掲載日:2022.12.20
すべての人々に「移動の自由」を 高齢者の移動を支える業界の取組み

内閣府の「令和4年版高齢社会白書」によると、日本の総人口は1億2550万人で、うち65歳以上人口は3621万人となっている。65歳以上人口のうち「65~74歳人口」は総人口の14.0%、「75歳以上人口」は14.9%で、65歳以上の高齢化率は28.9%と実に日本の人口の3割近くを65歳以上の高齢者が占めている。
こうした高齢者の移動を支える「福祉車両」の重要性は年々高まっており、自動車メーカー各社はより使いやすい車両開発に力を入れている。
「福祉車両」需要の急増期へ突入か メーカーを超えた取り組みも

福祉車両の需要増が見込まれる時期として、突出した人口ボリュームを持つ「団塊の世代」が全員後期高齢者となる「2025年」が挙げられる。今後の超高齢化社会への対応として、すべての人々が自由に移動しやすい環境の整備が進んでおり、自動車メーカーでは福祉車両の開発に注力している。
その一環として、車いす利用者が福祉車両をより使いやすくするために、メーカーの垣根を超えた動きが進んでいる。今年4月には、国内の車いすや車いす移動車、バスのメーカー12社の協力により「車椅子簡易固定標準化コンソーシアム」が設立された。
経済産業省が推進する「車椅子の自動車等へのワンタッチ固定機器に関する国際標準化」事業と連携し、ISO(国際標準化機構)に提案予定の「車椅子の車両における簡易固定システム」の浸透・普及を担っていく。
幹事社はトヨタ自動車、本田技研工業、スズキ、日産モータースポーツ&カスタマイズ、車いすメーカーの日進医療器と松永製作所の計6社で、コンソーシアムでの活動により、車いす利用者が従来以上に安心してスムーズに乗降できる車いす移動車の普及を目指していく。
第49回国際福祉機器展「H・C・R 2022」が開催

こうした中で第49回国際福祉機器展「H・C・R 2022」が開催された。
H・C・Rはアジア最大級の福祉機器展示会(22年は342社が出展)。「ハンドメイドの自助具から最先端技術を活用したロボット介護機器まで、福祉機器の今・未来を、みて、さわって、たしかめる3日間」をコンセプトに、高齢者や障がい者の暮らしを支える福祉機器の最新情報の発信と共有の機会として大きな役割を果たしている。
今回、リアル展は「東京ビッグサイト」で10月5日~7日まで、web展はH・C・Rウェブサイトの特設サイト内で9月5日~11月7日まで公開された。リアル展には自動車メーカーから、トヨタ、日産、マツダが出展した。各社の最新の福祉車両を見てみよう。
【トヨタ自動車】ハイエースから小型EVまで コンセプト車両と試作車

トヨタは「C+pod Plus Concept」(シーポッドプラスコンセプト)と「ハイエース車いすワンタッチ固定装置装着車」(試作)を出展した。
シーポッドプラスコンセプトはトヨタの超小型EV「シーポッド」の福祉車両バージョンであり、超小型で取り回しのしやすいシーポッドのメリットはそのままに、回転式シートを採用することで車いすから乗り込みやすい構造を実現。また、1人用とすることで超小型ながら車いすの収納スペースを設けて利便性を高めている。
ハイエース車いすワンタッチ固定装置装着車は、車いすをリフトに乗せて固定する場合に必要な作業を簡素化する装置を搭載。スイッチ操作でワンタッチ固定ができるようにすることで、車いすの乗せ下ろし時の作業効率を大幅に高める。
【マツダ】MX-30やロードスターの手動運転装置付き車両

マツダは手動運転装置付き車両の「MAZDA MX-30 Self-empowerment DrivingVehicle」と「MAZDA ROADSTER Self-empowerment DrivingVehicle」を出展した。
センターコンソール横に「コントロールグリップ」を配置。引くと加速、押すと減速を行うことができるため、手だけの操作でクルマを意のままに操ることができる。
また、ステアリング右側のスポーク内に「ステアリングシフトスイッチ」を設定。マニュアルモードも右手のみで操作できる( クルーズコントロールなしのグレードのみ装着可)。
オプションとして、片手でのハンドル操作をサポートする「旋回ノブ」や、運転席への乗り移りをよりスムーズにする「乗降用補助シート」、車いすを助手席に収納するための「車いすカバー」(オプション)などを用意。価格はリング式アクセル&レバーブレーキ・ブレーキサポートボード・移乗ボードの3点で38万1千円(工賃は14万7千円の合計52万8千円、車両別)。

【日産自動車】軽自動車ルークスもラインナップするライフケアビークル


日産と日産モータースポーツ&カスタマイズは、「クルマのシートに楽に座りたい」「クルマの乗り降りが楽にできるようにしてほしい」「車いすでの乗車、車いすから席への移動を簡単にスムーズに行いたい」などのニーズに応えるために、同社が「ライフケアビークル」として展開している福祉車両を出展した。
車種別に3台のライフケアビークルを用意。静かで揺れが少ない電動リフターを採用し、主に福祉施設や病院の送迎用としての活用が見込まれる「キャラバンチェアキャブ」や個人ユースから施設まで幅広いニーズに対応でき、e-POWER設定も選ぶことができる「セレナチェアキャブスロープタイプ」、乗り降りの利便性を高めた「ルークス助手席スライドアップシート」を出展した。
出典:アフターマーケット 2022 年 11月号