パーツ取付・交換
更新日:2022.12.20 / 掲載日:2022.12.20

整備業界に「プラ修理」関心拡大 コスト低減でユーザーにもメリット

 車体の軽量化のため、バンパーやフェンダーなどの外装部品に「樹脂パーツ」が多く使われるようになっている。樹脂は軽量で加工しやすく、金属に比べて安価であることから、採用部位は拡大傾向にある。一方、衝撃などで破損してしまった場合は修理が困難なため、新品に交換されるケースがほとんどだったが、損傷が大きすぎなければ修理ができる新技術が登場して注目を集めている。普及次第ではユーザーにもメリットの大きい技術だという。

米国製の窒素シールドプラスチック溶接機で修理を普及へ

ポリバンスの「Nitro-Fuzer 窒素シールドプラスチック溶接機」
ポリバンスの「Nitro-Fuzer 窒素シールドプラスチック溶接機」

 板金塗装や車検を手掛けるティークラフトは、米国の自動車プラスチック部品補修用溶接機メーカーであるポリバンスの「Nitro-Fuzer Welders 窒素シールドプラスチック溶接機」の日本総代理店として、樹脂パーツ修理の普及を図っている。

 この溶接機は、窒素シールドガスを用いて熱風を起こすことで、樹脂を溶かして破損した部位を溶接する装置。窒素を用いることで樹脂の加熱時に酸化が起こらず、優れた強度で接合できるのが特長だ。エポキシ接着剤でつなぎ合わせた場合と窒素シールドプラスチック溶接機でつなぎ合わせた場合の引張り強度を比較すると約2.3倍の差が出るという(ポリバンス調べ)。

技術者養成トレーニングがテュフ認定を受ける

ティークラフトはプラ修理を普及させるべく、独自の教育体制を構築して技術者の育成に注力している
ティークラフトはプラ修理を普及させるべく、独自の教育体制を構築して技術者の育成に注力している

 ティークラフトはプラ修理を普及させるべく、独自の教育体制を構築して技術者の育成に注力している。そのトレーニングがテュフラインランドジャパンから「プラスチック溶接エキスパート認定トレーニング」として認定を受けた。

 テュフラインランドジャパンは第三者認証機関として、自動車修理工場の技術者育成トレーニングを評価認定する「技術者育成トレーニング認定」を行っている。ティークラフトのトレーニングは「確実にプラスチック溶接ができるポリバンス社のプラスチック溶接機の原理や種類、材料の選定から部位による溶接の違いなどを技術者が理解し、高い技術を習得する内容になっている。

 トレーニングを受講した技術者は自身の技量や修練にのみ頼るのではなく、確立された技術を身に着けることができる」と評価された。トレーニングを受けて必要な知識と技術を有した技術者は「プラスチック溶接エキスパート」として認定される。テュフ認定トレーニングは10月から開始し、受講者数は10月中旬時点で約30人と反響を呼んでいる。

3つのコースでプラ修理からヘッドライト修理にも対応!

今後も外装における樹脂パーツの需要は増え続けることから、修理に対するニーズは高まっていくと予想している
今後も外装における樹脂パーツの需要は増え続けることから、修理に対するニーズは高まっていくと予想している

 トレーニングは3つのコースに分かれている。

【窒素プラスチック溶接 PR-01】

 1つは、バンパーの修理技術を習得する「窒素プラスチック溶接 PR-01」で、8項目のプログラムで構成されている。

1.修理するバンパーの素材(プラスチックの種類)を特定
2.基本的な溶接プロセスの理解
3.プラスチック溶接機の適切な操作方法
4.バンパーの裂け目の溶接
5.バンパーの穴を修理
6.破れたスロットタブを修理
7.破れたバンパー取り付けフランジを修理
8.ポリウレタンバンパーの修理

【窒素プラスチック溶接 PR-02】

 2つめの「窒素プラスチック溶接 PR-02」は、窒素プラスチック溶接機を使用して修理を行う際に必要である技術的な側面に重点を置くプログラム。併せて、プラスチック素地やシボ目模様の修復についても技術を習得できる。

 具体的なプログラムは以下の12項目。

1.プラ素材の特定
2.基本的な窒素溶接プロセスとプラ溶接機の適切な操作方法
3.プラ製バンパーからへこみや変形を取り除く方法
4.プラ製バンパーの清掃方法
5.プラ製バンパーの裂け目の溶接方法
6.プラ製バンパーのスロットタブの修理方法
7.破れたバンパー取り付けフランジの修理方法
8.プラ製バンパーの破れたフレキシブルヒンジタブの修理方法
9.熱硬化性ポリウレタンバンパーの修理方法
10.溶接修理を行った部分の仕上げ方法
11.テクスチャード加工されたプラ部品の再仕上げ
12.ポリバンス製品の適切な使用方法

【窒素プラスチック溶接 PR-03】

 3つめの「窒素プラスチック溶接 PR-03」は、ヘッドライトの修理に対応する内容。こちらは以下の7項目がある。

1.損傷したヘッドライトが修理可能であるか診断する方法
2.使用されているプラの種類の識別方法
3.壊れたタブが修復可能かどうかを評価する方法
4.ヘッドライトタブで荷重経路を特定する方法と強度を保てる溶接方法
5.ホットステープルを使用して溶接するために壊れたタブを固定する方法
6.壊れたヘッドライトタブの溶接方法
7.ヘッドライトを元の外観に修理する方法

旧車でプラ修理への関心が上昇 メリットを訴求し普及を促進

 ティークラフトによると、プラ修理は「環境に優しい」「コストパフォーマンスが良い」「修理で済むため部品の欠品や納期などの心配がない」などのメリットが評価され、米国の中古車販売店や整備事業者、 損害保険会社などを中心に普及が進んでいるという。

 国内ではまだ認知度が低いため、ユーザーだけでなく事業者も「樹脂パーツを修理する」という概念が乏しいが、最近は旧車を取り扱う事業者でプラ修理への関心が高まっている。実際に同社にも、部品が欠品となっている車種(スカイラインGT-R BNR32)の樹脂製燃料タンクの修復依頼が入ってきている。そのため昨年の溶接機や関連用品の売上は前年比60%増、直需の修理件数は20%増と着実に伸びている。

 同社では今後も外装における樹脂パーツの需要は増え続け、かつ自動車修理には環境対応が求められるようになることから、修理に対するニーズは高まっていくと予想している。ただし、美観と強度に優れた修理を行うためには、正しい溶接技能の習得が不可欠であり、テュフ認定トレーニングを積極的に推進することで、プラスチック溶接エキスパートの育成に励んでいく。

 部品交換から修理へシフトすることは、ユーザーにとってコスト低減という利益があり、事業者も工賃収入を得られるため、双方にメリットが生まれる。こうしたメリットを訴求し、溶接機の導入を促進してプラ修理の普及を図っていく考えだ。

出典:アフターマーケット 2022年 11月号

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

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自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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