車検・点検・メンテナンス
更新日:2018.02.01 / 掲載日:2018.02.01
走れR-2 「状態チェック」の巻
「現状をチェックする」の巻
昭和44年8月、ロングセラーだったスバル360の後継車種として誕生。基本構造を継承しながら、広い室内とモダンな外装を得た。走りの良さからハードミニの愛称を持つ。
1970年式スバル R-2がAMガレージにやってきた!
部分修理で終わらせるのかフルレストアするか迷うところ
とある仕事の締め切りが押し迫ったある日、なかなか進まない原稿に嫌気が差し、息抜きという言い訳をしながら、いつものようにネットオークションでパーツを物色していた。一通りのチェックを終えた後、特に買う気もないのに、自分の好きなクルマはいくらくらいで取引されているのかなぁ、などと思いながらいくつかのクルマをチェックしていると、気になるクルマを発見。写真を見る限りボディの傷みもそれほど酷くない。エンジンは不動でブレーキは抜けているものの、修理はそれほど難しくないかも。そしてなにより、価格が相場より安い。とはいえ、ネットオークションだから最終日まではどうなるか分からないので、とりあえずウォッチリストへ入れておいた。そしてオークション最終日。この日はまさに原稿の締め切りの日。ネットオークションにかまっている暇はないのだが、やっぱり気になるので覗いてみることに。値段は最初に見た日から変動はない。残り2時間、1時間、30分と迫り来る終了時間。終了5分前、現在の価格より少しだけ高い金額を入札した。それから終了までの5分間、誰も入札することなく、あっさりと落札してしまった。嬉しいやら困ったやら複雑な気分だった。ちなみに値段はiPhone 6 plusくらい。
そして数日後、そのクルマ、スバルR-2がAMガレージにやってきた。早速状態をチェックすることに。まずはボディからいってみよう。
全体の印象はそれほど悪くないかも。ただ、細かいところを見ていくと、気になる箇所があちこちに。最も腐りやすいのは、フロントフードの先端部分。ここは一度切り接いで補修してあるようだが、パテがたっぷり盛ってあり、中から錆が出ている。ドアの下部分も同様の処理がされている。幸いなことにフロアには大きな腐りはなく、サイドシルも外から見る限りでは大丈夫みたい。どこまで直すのか、じっくり考えたい。
メカ部分のチェックはAMスタッフの(高)氏にお願いすることにした。
診断その1 ボディパネル
診断その2 ブレーキまわり
合わせホイールはそのままでハブを直接分解した
放置期間が長かったために、ブレーキはパーキングしか作動せず、フットブレーキは踏み応えが全くない状態。フロントフード内にはマスターシリンダーがあるが、周辺のペイントは荒れた状態なので、ここから漏れた可能性もある。車重が430kgと軽いので、ガレージ内で手押しする程度なら、ブレーキが効かなくてもいいが、このままでは極短距離のテスト走行すらできない。クルマでも自転車でもブレーキが効かないと危ないので、まずはここの状況を把握してみる。
当時の軽自動車の特徴は合わせホイールを使っていること。ホイールといってもディッシュ面はなくて、ブレーキドラムにタイヤを付けるためのリムだけとなっていて、スクーターの延長線上で作られたような構造だ。ホイール自体は軽く回せるので、ドラムへのライニング貼り付きはない模様。恐らく油圧系のシール類かシリンダー系が傷んでいると思われる。
まずはドラムを外して内部をチェックする。R2はリヤ駆動なので、リヤドラムのセンターに大きなナットがあり、割ピンで緩み止めが行われている。赤錆が出ているので、これはちょっと手こずりそうだ。特に右側は割ピンが折れていて、その抜き取りから始めなくてはならなかった。ナットの固着も激しく、エクステンションバーを付けて回したら、何とタイヤがスリップして空回りする始末。予想外の出来事に思わず笑ってしまったが、センターナットはなにが何でも外さなくてはならないのだ。
最近は、ミニダクターという電磁誘導でボルトやナット自体を発熱させるようなツールもあるのだが、あいにくAMガレージには置いていない。そこで原始的ながら、バーナーであぶったり浸透性潤滑剤を吹いたりして様子を見る。何度かのアタックで固着が緩んだらしく、それ以降は簡単に緩めることができた。
ドラムを外してみると、見た目は割とよい状態でライニングの剥離も見られないし、フルード漏れもない。だが、ピストンが完全に固着していて強く押しても全く動かなかった。ホイールシリンダーのオーバーホールは困難を極めそうな予感。
診断その3 エンジン エンジンはかかるかな?
自力回転は無理だが、点火系は正常に機能している
ブレーキは今すぐどうにもならないので、次はエンジンの状態をチェックしてみる。いきなりクランキングするのはマズイので、ギヤを3 速に入れてクルマを手押ししてみる。そうするとタイヤの回転に従ってエンジンも回り、内部の固着はないと判断。2 ストロークの潤滑用オイルはエンジンルーム右側の樹脂タンクに入っていて、ポンプが正常なら給油も行われるハズ。
プラグホールからシリンダーへオイルでも入れようかと思ったが、程度は悪くないのでスターターを回してみる。キーを回してみると、昨日まで動いていたかのごとく何のためらいもなくスターターが勢いよく回り出し、まずは一安心。しかしガソリンがないので、エンジンはかからない。
タンクにガソリンを入れ、キャブレターに繋がる透明ホースを観察しながらクランキングを繰り返すと、ホース内の泡が動き出し燃料が送られてきた。エンジンで駆動される燃料ポンプも生きているようだ。しかし、チョーク操作をしたり、アクセルを何度か踏んでみたりしても、初爆が起こる気配はない。多分キャブレターの内部のガソリンが腐っているのだろう。
ここで、プラグを抜いてみると、ガソリンでベチョベチョ。これもバーナーであぶって、完全に乾燥させてからスパークテストを行うと、火は飛んでいる。混合気と点火の条件がそろっているのだから、火がついてもよさそうなものだが、プラグを見ると混合気が濃すぎている感じだ。
そこで、手持ちの始動補助剤を投入することにした。これは、エーテルがベースのスプレーで、始動が難しいエンジンでも点火系が生きていれば着火させることができる。キャブレターの入口にスプレーしながらクランキングすると、ボローンと簡単に初爆発生!
しかし、始動補助剤を入れないと自力回転はムリ。プラグがガソリンで湿るので、キャブレターの霧化が非常に悪いのだろう。恐らくチョークを引いても、液状のガソリンが流れ込むだけなのではないかと思われる。まずは、キャブレターをOH して、詰まった部分を直してやらないとダメなようだ。
キャブレターを掃除して再チャレンジ!
積載車のレンタカーは数が少ないみたい
今月の作業で最も大変だったのが、クルマの引き上げ。不動車だから積み込みが大変だった、のではなく、車両積載車のレンタカーがなかなか見つからなかったこと。自宅付近のレンタカー屋で、積載車を取り扱っている営業所は、どの営業所も1 週間先までスケジュールがいっぱい。ようやく見つけた積載車は4 トンの2台積み。さすがに全長3mしかない小さなクルマをそんな大きなクルマで引き取りに行くのも嫌だなぁ、なんて考えていたところ、最初に問い合わせた営業所からキャンセルが出たとの連絡が入った。ようやく積載車を確保した。引き取り場所は静岡県。特にトラブルもなく、無事にクルマを引き取り、AM ガレージに運び込んだ。
今月の出費
レンタカー代 2t積載車(12時間)¥20,304
高速代+燃料代(相良牧之原~加平) ¥19,382
合計¥39,686
スバルR-2 当時の資料から
当時のキャッチフレーズは「ハードミニ」だった
昭和44 年7 月24 日、R-2 の記者発表時に配られた資料を入手できたので、その中からいくつか紹介しよう。
スバルR-2 は昭和44 年8 月15 日金曜日に全国一斉発売が開始された。グレードはスタンダード、デラックス、デラックス・オートクラッチ、スーパーデラックスの4タイプ。価格は群馬工場渡しで31.3万円から37.8 万円。販売計画は月販1 万台と記されていた。実際には販売期間は約3年とモデルサイクルは短かったR-2だが、累計販売台数は29 万台を記録。販売計画には少し届かなかった。
R-2 の特徴は、快適と安全をスローガンに、軽の極限を追求し、遂に軽の概念を超越した理想の正統派ミニセダン(ちょっと言いすぎか?)。ネーミングの由来は、「R」はスバルFF-1 の記号式ネーミングに合わせ、ローマ字の中からイメージが豊かで語感もよいR を選び、「2」はスバルの軽乗用車で2 代目のモデルを表している。
提供元:オートメカニック