新車試乗レポート
更新日:2022.05.27 / 掲載日:2022.05.27
【ベンテイガ ハイブリッド】電動化でベントレーは変わるのか【九島辰也】
文●九島辰也 写真●ベントレー
ベントレーベンテイガハイブリッドに乗りました。ベントレーにハイブリッドモデルがあるの知っていましたか? 実は彼らは2030年に全てのモデルをEVにすると早くから宣言したブランドなんです。なので、このベンテイガに続いて今年4ドアサルーンのフライングスパーのハイブリッドも発表しています。追って2ドアのコンチネンタルGTにも追加されるでしょう。

ちなみに、ベントレーは“ハイブリッド”とモデル名に記していますが、正式にはプラグインハイブリッドです。ただ、ベンテイガは日本の急速充電の方式CHAdeMO方式を取り入れていないので、家庭でもできる200V方式となります。EV走行距離は一回の充電でおよそ50キロ。約3時間で満充電になります。
これによって、燃費が向上したのは事実です。お財布にも優しいベントレーと言えます。そんなことを言うと、「このクラスのクルマを買うのに燃費なんて関係ないのでは?」なんて声が聞こえてきそうですが、そんなことはないと思います。燃費が悪いとガソリンスタンドに行く回数が増えますよね。それって時間の無駄な気がします。
事実自分がメルセデス・ベンツGクラスを所有しているときそう感じました。憧れのGヴァーゲンは5リッターV8だったため、東名高速を走っているとみるみるガソリンゲージが下がります。仕事柄御殿場までしょっちゅう往復していましたが、100リッターのガソリンタンクは2往復で空っぽです。これにはさすがに参りました。
そんなとき登場したディーゼルエンジンのGヴァーゲンは“夢のクルマ”と思えたほど。クリーンディーゼルで燃費がよくなれば長距離移動は助かります。かつてアメリカ車のことを“ガスガズラー”、つまり“ガソリンを大飲みするクルマ”と評していいましたが、ガソリンエンジンのGヴァーゲンはまさにそんな感じでした。
ベンテイガハイブリッドのパワーソースは、3リッターV6ターボエンジン+モーターとなります。12気筒と8気筒で売ってきたベントレーとしては小排気量です。なので、高速域での走りはどうなのかと少しばかり心配していましたが、それは不要でした。東北道で東京から宇都宮の先まで往復したのですが、高速域はお手のもの。追い越し加速はさすがベントレーで、他の追随を許しません。アクセルに対し瞬時に加速し、ブレーキでガツンと減速します。この“間”が大切なんですよね。そこでワンテンポ空いてしまうとかえって危険ですから。スポーツカーメーカーであるベントレーはその辺を熟知していると思われます。
ドライブモードはいつも通り、“コンフォート”“スポーツ”、それとベントレー推奨の“Bモード”があります。今回はリアにも人を乗せていたので、“コンフォート”が評判でした。もちろん、ケースバイケースですが、エアサスのセッティングは相変わらず秀逸です。個人的にはクラスナンバーワンだと思っています。ホイールサイズ21インチでこの快適な乗り心地は想像を絶します。
ハイブリッドの試乗で、あらためてベンテイガのラインナップを見ると、増えているのがわかりました。ベンテイガV8、ベンテイガS、ベンテイガスピード、そしてこのベンテイガハイブリッドの他に、ベンテイガEWBとベンテイガEWBアズールが追加されています。
EWBはその名の通り、“エクステンデッド・ホイールベース”を意味します。スタンダードボディを180mm伸ばし、全長は5300mmを超えます。ユニークなのは、それで3列シートにしたのではなく、2列目のスペースを拡大したことです。乗員人数を増やすより、リアシートをさらに快適にするというウルトララグジュアリークラスならではの発想です。エンジンは4リッターV8で、EWBアズールはEWBの発売を記念した12ヶ月限定のモデルとなるそうです。
こうした状況を鑑みると、このクラスの需要はさらに高まっていると思われます。これまでカーメーカーを25年以上取材してきましたが、こうしたモデルの追加はマーケットのニーズに応えたものと想像できるからです。世界中のセレブリティもそうですが、5つ星ホテルの送迎用とかにも使われそうですね。
いずれにせよ、ベントレーは元気のようです。今後の展開からも目が離せません。
