新車試乗レポート
更新日:2019.05.22 / 掲載日:2018.08.17
【試乗レポート・レクサス ES】大幅にクオリティアップし、優雅に生まれ変わって日本初導入

レクサス ES
文●石井昌道 写真●レクサスインターナショナル
累計販売台数は218万台。1989年、フラッグシップのLSとともにレクサス・ブランドを立ち上げた「ES」は、もっとも販売台数が多いレクサス車でもある。最近ではSUVのRXが販売トップに立ってはいるが、それでも北米・中国を中心にレクサスを支える屋台骨であるのは確かだ。
そんなESは、日本国内では2代目、3代目、4代目が「ウィンダム」として販売されていたものの、「ES」としては7代目となる新型にしてようやくのリリースとなり、発売を目前に控える。FFの中・大型セダンの需要があまり見込めないという事情もあったのだろう。だが、新型ESは「GA-K」と呼ばれる新規プラットフォームで開発され実力が大いに高まったことで、日本や欧州にも市場を拡げていくことになった。ドライビングの歓びを強く求めるユーザーにとってFRセダンの価値は大きいが、果たしてプレミアム・セダンのユーザーがそこまでこだわっているのか? そんな疑問に答えていく存在にもなりそうだ。
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エレガントさを増した新デザイン

GA-Kを採用したモデルとしては、先にトヨタ・カムリがデビューしている。世界でもっとも売れているセダンであるカムリは、これまで80点主義の無難なモデルだったが、現行カムリは攻めの姿勢をみせた。デザインが派手になり、走りのクオリティもアップ。日本でも想像以上の評価を得ている。新型ESもモデルチェンジの方向性としては同じかもしれない。デザインは最近のレクサスらしくアグレッシブ。とてもFFセダンとは思えないほど流麗なルックスで、プレミアムカー然としている。GA-Kは低重心化が一つのテーマにもなっており、パワートレーンなど各コンポーネントがなるべく低くレイアウトされている。ボンネットも低くなり、ワイド&ローなプロポーションの実現にも貢献している。フロントピラーは後方へ寄せられロングノーズに。リヤピラーは大胆に寝かせられ、サイドウインドウグラフィックは天地が狭く、横方向にシャープでクーペ風になった。そこへレクサス・デザインの代名詞である「スピンドル・グリル」がマッチして、クーペルック・セダンの大胆さを際立たせている。

全長ほぼ5m、先代よりもひと回り大きくなり堂々としたボディからは、大きなゆとりが感じられる。

リヤから眺めると、ルーフが後方に傾斜し、クーペのように躍動感あるスタイリングとなっている。

室内はさすがに広い。カムリよりも長くとられたホイールベースは、「GS」をも凌ぎ、後席のレッグルームは余裕たっぷり。インテリアはややデコラティブだが、質感は高い。その仕上がりは、「LS」や「LC」ほど高級感を突き詰めた感はないものの、プレミアムカーの標準は上回っているだろう。
走りに爽快感が生まれたハイブリッド

パワートレーンは直列4気筒2.5Lエンジン+モーターのハイブリッドとV型6気筒3.5Lエンジンのガソリン車の二つが用意された。ハイブリッドのエンジンはダイナミックフォースと呼ばれる新世代のもので、熱効率は41%で世界トップを誇るばかりか、レスポンスの良さも大いに改善されている。そのため、これまでのレクサス/トヨタのハイブリッドのイメージを覆すほどに走りが気持ち良くなった。アクセル開度一定の巡航から、アクセルを踏み増して加速に移るときの遅れのない反応は、下手なガソリン車よりも素早くて気持ちいい。全開にしてもエンジン回転が先にあがって速度があとからついてくるラバーバンドフィールにならないよう制御されている。4000rpm で50km/h 、5000rpmで80km/h、5500rpmで100km/hオーバーと段階的に伸びていく。速さ的にも十二分でワインディングを元気よく走らせての満足度も、ハイブリッドとしては異例に高かった。これにステップギア制御などが加われば、そのまま「スポーツハイブリッド」と呼べるぐらいになりそうだ。

もっともハイブリッドの本領が発揮されるのは街中や郊外路、高速道路などを普通に走らせているときだ。モーターを巧みに使いながら高い静粛性と燃費性能をみせつける。これだけ大きなセダンながら、実用で20km/L超えも無理なく実現してしまう。

走りの楽しさではV6に軍配が上がる。低回転域でも十分なトルク感がありながら、アクセルを踏み込めば4000rpm以上で活気づいてリミットまで勢いよく回る。サウンドも官能的でスポーツセダンと言ってもいいほどだ。
従来モデルと乗り比べるとシャシー性能の進化は相当に大きかった。ステアリングフィールはフリクションが少なくすっきりとした手応えで、路面の状況がクリアに伝わってくる。接地感も確かで、コーナーでの反応は素早く正確。走りを強く意識したFRセダンほどではないものの、リラックスしながらほどよく楽しく走れるハンドリングに仕上がっている。
それ以上に嬉しくなるのが、快適性が高いことだ。乗り心地は硬くはないが、安定感があり、サスペンションなどすべての動きがスムーズ。静粛性の高さはプレミアムカーのなかでも随一で、移動を快適なものにしてくれる。

ESは多くの日本のユーザーがレクサスに求めているものを実現しているように思える。基本的な走りの実力は高いが、いたずらに欧州勢の背中を追ってスポーティに振るよりも、リラックスできる乗り味で上質な快適性を追求した姿勢が「日本ブランドならでは」だからだ。今まで販売されていなかったのが不思議なぐらいに、日本市場でも受け入れられることになりそうだ。

ルックス、走りの質感ともにプレミアム感が感じられて、ユーザーの多くが大きな満足感を覚えるセダンに仕上がっている。