新車試乗レポート
更新日:2026.03.03 / 掲載日:2026.03.03
【アウディ A5】このディーゼル魅力的につき【石井昌道】

文●石井昌道 写真●澤田和久、内藤敬仁
2025年2月に発売された「アウディA5」は、新たな内燃機関プラットフォーム「PPC(プレミアム・プラットフォーム・コンバッション)」を初採用したモデルだ。インフォテインメントも一新され、まさに新世代を象徴したモデルといえる。
ディーゼル+マイルドハイブリッド=大本命!

なかでもディーゼル・エンジンに新たな電動ソリューションである「MHEV Plus」を組み合わせた「A5 TDI quattro」は、本命だと期待していたグレードだ。少し遅れての追加発売であったため、今回が初試乗となった。
なぜ「A5 TDI quattro」が大本命だと期待していたかと言えば、厳格化が進む排ガス規制によって悪化する恐れのあるレスポンスやドライバビリティをMHEV Plusが引き上げる効果があるからだ。

アウディが従来から採用してきた48V電源のベルトドライブ・スターター・ジェネレーターに、新たにPTG(パワートレーン・ジェネレーター)を追加。トランスミッション後方に最高出力18kW、回生出力25kWのモーターを配置し、駆動アシストやEV走行、回生を行う。バッテリーは1.7kWhと MHEVとしては大容量で、アウディ初のLFP(リン酸鉄バッテリー)を採用する。マイルドハイブリッドの枠を超え、電動化比率を高めたシステムと言っていい。
1回の満タンで1000km以上走行できる燃費の良さ

試乗してみれば期待通りで、アクセルを踏み込めば即座に力強く加速していく。ハイレスポンスと大トルクの組み合わせは鬼に金棒と言いたくなるほどで、ドライバビリティはトップクラス。MHEV Plusは燃費改善効果も大きくWLTCモードで17.7km/L(セダン)を達成する。燃料タンクは64L。モード燃費通りに走れれば1132kmの航続距離であり、速度域がさほど高くない日本の高速道路ならば1タンク1000kmは現実的だ。

低負荷域ではEV走行も可能になっているので市街地での燃費改善にも寄与する。高速巡航時にアクセルオフにするとエンジンが停止してコースティング状態へ移行。再始動時もショックはまったくなく、極めてスムーズだ。機能的にはフルハイブリッドに近づきつつあり、そこに“Plus”の意味がある。
雪道を含めた様々な路面状況で安定感のある走りを実現

縦置きエンジン+FWDベースの4WDとしたアウディ伝統のquattroの操縦安定性は格別だ。直進安定性が極めて高く、ウエットなど路面状況が悪化した高速道路でも安心感がある。別件で雪道でも試乗したがセダンとしてはトップクラスの走破性と言えるほどだった。
PPCの採用によってシャシー性能は大きく進化している。試乗車にはオプションのダンピングコントロールSサスペンションが装着され、ドライブモードを切り替えることで変化していく。スポーティな「ダイナミック」でも過度に硬くはなく、快適な「コンフォート」でも上下動が残るようなことがない。明確な差を持ちながら、ネガティブな挙動を見せないのは、そもそものシャシーの能力が高い証拠だ。



ワインディングロードでは、ステアリング操作に対する正確性の高さが印象的だった。PPCではステアリング・システムをボディに直接取り付け、トーションバーの剛性を高めるなどの改良が施されている。その効果は操舵初期から明確で、従来モデルで感じたわずかな曖昧さは影を潜めた。ステアリングフィールの解像度が高まり、ドライビングプレジャーが確実に向上している。快適性とスポーティさが高い次元でバランスしているのだ。
アウディらしい「技術による先進」を体現したモデルだ

アウディならではのエンジン縦置きのquattroと、頼もしくて低燃費なディーゼル・エンジンの組み合わせは、乗用車として魅力的な選択肢だ。排ガス規制の厳格化によってディーゼルは下火になっていくかと思いきやそんなことはない。アウディらしい「技術による先進」によって、ディーゼルは今後も現実的な優れたソリューションとして存在感を放ち続けるだろう。