車の最新技術
更新日:2026.03.04 / 掲載日:2026.03.04
【シンクロウェザー】オールシーズンタイヤのメカニズム【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

文と写真●石井昌道
年に数日しか雪が降らない地域の自動車ユーザーにとって、タイヤを2セット持つ合理性はあるのか。タイヤの保管、履き替えの手間も含めて、サマータイヤとスタッドレスタイヤを使い分けるのは負担が大きい。
それよりも、徐々に日本でも広がりつつある、オールシーズンタイヤに興味を持つユーザーは多いことだろう。なかでも注目なのは、2024年に発売されたダンロップ シンクロウェザー。あらゆる路面にシンクロする次世代オールシーズンタイヤと銘打たれ、雪上や氷上での性能はスタンダード・スタッドレスタイヤのダンロップ ウインターマックス02と同等レベルとされている。これまでドライとウエットで試乗経験はあったものの、今回は北海道の雪上で冬タイヤとしての性能を確認することができた。

シンクロウェザーのコアテクノロジーは路面状態など外部環境によってゴムの性質が変化する「アクティブトレッド」で、ゴムのなかに2つの「スイッチ」が組み込まれている。 1つ目は「水スイッチ」で水に触れるとゴムが柔らかくなってウエットでのグリップが向上。ポリマー間の「共有結合」の一部を水で脱着可能な「イオン結合」に置き換えたという。ドライに戻って乾燥するとポリマーは再結合してゴムの剛性が復活する。
2つ目の「温度スイッチ」は低温になると氷上路面でも柔らかくグリップするゴムになる。ポリマーから切り離しても機能する材料を新開発し、一部をグリップ成分に置き換えることで、常温ではサマータイヤ同等の剛性を持ちながら、低温ではスタッドレスタイヤ並にゴムが柔らかくなってグリップを発揮する。この2つのスイッチによってドライ、ウエット、雪上、氷上といった路面に対応するというわけだ。

ドライ路面での乗り心地はソフトタッチで快適。スポーティではないものの、コーナーでの剛性感や上下動の収束などもある程度は確保されている。ノイズは劇的に静かというほどではないが、スタッドレスタイヤのような耳に付きやすい高周波は抑えられているから不快感はない。
ウエット路面は想像以上に頼もしい。水スイッチの恩恵でグリップ感が高いうえに、V字溝設計のトレッドパターンによって排水性も高いからだ。ドライは平均的なサマータイヤ、ウエットはそれ以上といった印象だ。
北海道市街地の圧雪路を走り始めるとタイヤがきちんと路面を掴んでいる感触がある。平坦路でも登坂路でも、一般的なスタッドレスタイヤと変わらぬ雰囲気。コーナーでステアリングを切り始めていったときの応答性も良くて、オールシーズンタイヤとは思えぬほどだ。ただし、最新のスタッドレスタイヤと比べると轍が深いところではわずかに進路を乱されがちではあった。交差点手前など磨かれたアイスバーンでも、一般的なスタッドレスタイヤに近いフィーリングを示した。厳密に比べれば少し劣るかもしれないが、慎重を期して走らせれば問題ないといったところだ。

最新のスタッドレスタイヤや氷上特化型モデルには及ばない場面もあるだろう。しかし、ウインターマックス02など一般的なスタッドレスタイヤと同等水準に達してることは評価すべきだ。従来のオールシーズンタイヤに比べれば、サマータイヤとしてもウインタータイヤとしても大きく進化しているのは確かだ。
それを可能にしたのが「アクティブトレッド」だが、近い将来にはタイヤにかかる圧力によってゴムの性質を変化させるモデルを開発しているという。スポーツカーやハイパフォーマンスBEV、本格オフローダー向けのタイヤを進化させるポテンシャルがあるそうだ。外部環境に合わせてゴムの性質を変化させるという技術によって、タイヤ開発は確実に次のステージに踏み込んだのだ。