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更新日:2026.02.20 / 掲載日:2026.02.20

旅のスヽメ ランドクルーザー250【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】

文と写真●池田直渡

 本連載は【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】というサブタイトルで、基本的にはクルマにまつわる経済や自動車メーカーの経営に関する話を主題にしているのだが、こういう縮こまりがちな厳寒期には少し肩の凝らない趣味的なテーマを取り扱ってみるのも良いのではないかと思う。そこで「學問ノスヽメ」ならぬ「旅のスヽメ」である。

 筆者は、常々、クルマの魅力とはそもそも「移動の自由」にあると思っている。高校生の頃初めて手に入れた原付はカワサキのオフロードバイクでAE50という当時としてもマイナーなものだった。それまで電車に乗らなければ行くことができなかった場所までいつでも行かれる。

 それはこの日本のどこだって自分の家の前の道からつながっているという、当たり前と言えば当たり前の事実が、実体験となった経験だった。ポケットの中の小さなキーがどこまででも行かれる通行手形に思えた。

 以来、45年、筆者の中では長距離ツーリングはいつでも想像力を掻き立ててくれる夢である。原稿が山積みになると、「よしこれが終わったら、グランドツーリングに行ってやる」。そうやって終わらない原稿と戦うのである。

 ここ数年忙し過ぎてやっていないが、毎年新型車の中で「これは推せる」と思ったクルマは借り出して1000km以上の試乗を行い。「今年良かったクルマ」として記事化してきた。

 2年ばかりお休みしているのは、前述の通り忙しすぎるのは確かに理由のひとつだが、それと同時に、トヨタ以外のクルマがちっともデビューしなかったことも大きい。コロナ禍で開発を止めなかったトヨタだけが相変わらず好調に新型車をデビューさせているが、あの時期開発を止めてしまった他社は、ここ数年新型車のデビューが減っている。別にトヨタがいけないわけではなく、本来は他社に咎がむくべきではあるが、とは言え「今年良かったクルマ」の候補が全部トヨタではあまりにも興が削がれるではないか。

トヨタ ランドクルーザー250。ガソリンとディーゼル、5人乗り、7人乗りから選択可能

 さて、そんなわけで年末の良かったクルマ大会はやらなかったが、その代わりと言ってはなんだが、雪国を走りたくなった。そう言えば、トヨタ・ランドクルーザー250は、試乗会で乗った印象が好感触だったことを思い出し、トヨタに問い合わせてみると、スタッドレスを装着した試乗車があるという。これは渡りに船とばかりにクルマを借り出して旅に出た。

 都内から関越に乗って、日本列島を横断、群馬県から新潟県へ入り、魚沼あたりから始まる豪雪地帯の折立温泉で一泊。翌朝はちょっとゆっくり目に出て、燕三条の回転寿司を堪能し、信濃川の右岸を走る国道403号を山裾に沿って北上。加茂市、五泉市を抜けて、進路を会津へ向ける国道49号へ。会津からは東北道に乗って東京まで戻る。1泊2日で走るにはそれなりの距離である。

 もちろんせっかく遠路を出向くので圧雪路をドライブしたい思いはあるのだが、こればかりは天気任せ。豪雪地帯の除雪も昨今は人手不足が叫ばれているのだが、それでも2日も降らないと積雪路は皆無になる。日本のインフラ維持能力は頭が下がるレベルで勤勉に機能している。

ランドクルーザー250のステアリングを握る自動車ジャーナリストの池田直渡氏

 ただし、そこはそれ豪雪地帯。一晩で1m積もる日もあり、そういうタイミングに運良く合えば、真っ白な雪の上を走ることも可能だ。一方で冬季閉鎖の道は今度は完全に雪壁に閉ざされて進入を拒む。ランクルであろうがとても踏み込めるものではない。その前にどこが道路なのかさえわからない。

 ゆえに関東の物好きが、予定決め打ちで出かけて行って想像通りの圧雪路に出会えるかどうかは、運任せというわけだ。

 関越はクルージング中に見える遠景こそ真っ白な雪山で、特に谷川岳が迫るころには、見事な銀世界が広がる。全長11Kmの関越トンネルを越えて、新潟県に入ると、湯沢、石打、塩沢というスキーリゾートエリアに入る。ありがたいことに空は雪模様で、ワイパーが忙しくフロントウインドウの雪を拭うが、交通量もそれなりに多く、路面はシャーベット止まり。

 試乗車が履くダンロップ・ウィンターマックスSJ8+ (265/60R20)は、心強いグリップで、不安を微塵も感じさせない。ランクル250は、今時少数派となる堅牢で本格的なラダーフレームを備える。かのレンジローバーさえモノコックフレームになってしまった昨今、設計年次の新しいGA-Fプラットフォームを採用したクロカンという意味では、ある種の一途さを感じる。

場所や天候によっては積雪路と出会うこともあるが、生活路や主要道路は除雪されていて、日本のインフラ維持能力の高さを実感する

 現在ランクルシリーズは、フラッグシップの300と、この250。そして働くクルマ=ワークホースであり、1984年デビュー以来のキャリーオーバーの70改良版という3シリーズで成り立っている。今夏にはこれにハイラックスから譲り受けたIMV系のフレームを与えられた普及価格帯のランドクルーザーFJが加わる。今時ラダーフレームのクロカンをトヨタブランドだけ(要はレクサス版もある)で4車種もラインナップすることに底力を感じざるを得ない。

 端的に言えば、岩やガレ場や砂漠でアドベンチャーを求めるユーザーに向けた走破性最優先のユーザーに向けたモデルが300。ある程度のアドベンチャーと日常性を併せ持つのがこの250。林業や農業などの仕事で使い倒すためのクルマが70。そしてまだ運転していないのでわからないながら、安価かつ乗用としてのクロカンを求める人に向けたモデルがFJということになるだろう。

 筆者の見立てでは、今回の様なグランドツーリングのお供としては、250がベストである。まず300と比べて高速直進安定性が良い。ランクル300はそもそもの素養がオフローダーであり、高速道路の長距離は少々不得意。比較すると250の方が圧倒的に安心で快適にクルージングできる。

 では走破性で大きく劣るかと言えば、普通の人が走るであろう環境下で250が音を上げる様なことは起こらない。人の頭サイズの石がゴロゴロしているような岩山を登る場面での電制クロカンとしての能力に限って見れば300に分があるがそんな使い方をする人は稀だろう。

ランドクルーザー250はフレーム構造を採用するリアルオフローダーでありながら、乗用車的な快適性を併せ持つのが魅力

 今回借り出した250は2.8リッター直4ディーゼルとダイレクトシフトの8ATを備え、極低速からリニアなトルクフィールが味わえる。ランクル初となる電動ステアリングも正確で、とにかくストレスフリーだ。

 国道を使った雪の峠越えでも、トラクション、ブレーキ、コーナリングの何もかも自然で、ストレスフリーに感じた。そこに加えて、“ランクル”という絶大な信頼感を発揮するので、本当に不安がない。守られている。

 こいつさえガレージにいれば、いつでもどこにでも旅に出られる。現実の生活ではそんなにしょっちゅう旅に出る暇もなければ、金だって続きはしない。けれども、そういう気持ちになれる心の豊かさが日々の生活を支えてくれる。時速340km出せるスーパーカーだって、ガレージの夢だが、その能力を発揮させられる場所はサーキットであっても限られている。ストレートの長さが必要だからだ。

 けれどもランクル250なら、年に1度か2度くらいなら、その夢を本当に実現できる。あとは月に一度妄想の中で旅を楽しむだけかもしれないがそれはそれで、やっぱり心の支えになる1台だと思う。何台もクルマを持てる身分ではないのがとても残念だし、これをガレージに持てる人が正直羨ましい。

 まあ、たぶん250がそういう旅の最強のお供であることは認めるのだが、そうでなくても良いではないか。たまには自分のクルマで1000kmのグランドツーリングに出掛けてみよう。はるか遠くの町から、住み慣れた家に淡々と走る時の寂寥感は、味わい深いクルマの楽しみだと思うのだ。

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池田直渡(いけだ なおと)

ライタープロフィール

池田直渡(いけだ なおと)

1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(『カー・マガジン』『オートメンテナンス』『オートカー・ジャパン』)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。

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1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(『カー・マガジン』『オートメンテナンス』『オートカー・ジャパン』)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。

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