輸入車
更新日:2024.12.10 / 掲載日:2024.12.10
手に入らないからこそ価値がある。天井知らずの超富裕層向けマーケットと、世界の高級車ブランド

天井知らずの超富裕層向けマーケット|2024年輸入車業界を賑わした5つのキーワード[Keyword-4]|
文●ユニット・コンパス 写真●マイバッハ、ブガッティ、フェラーリ、ロールス・ロイス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2025年1号「2024年輸入車業界を賑わした5つのキーワード」記事の内容です)
車両価格が数千万円から数億円もの超高額車両が売れている。いま、超富裕層向けマーケットに何が起きているのか。
手に入らないからこそ価値がある超高額車両
超富裕層と呼ばれる人々が増えている。野村総合研究所は、純粋な金融資産を5億円以上保有していることをその定義としている。
調査期間のレポートによれば、超富裕層は世界全体で約40万人存在。日本においても2013年以降増加傾向にあり、保有する資産額も増加しているという。
その背景にあるのが、一代で成功を収めたニューリッチ層の拡大だ。オールドリッチ層と呼ばれる代々の資産を受け継いできた人々が保守的で資産を守る傾向にあるのに対して、ニューリッチ層は資産を増やすことを重視する。そして、ニューリッチ層は若く、消費意欲も旺盛。そんな彼らをターゲットにしたニューラグジュアリー市場が台頭している。
超富裕層は、高級時計やアートに興味関心を持ち、高額な買い物を行う。だが一方で、単に消費を重ねているだけではない側面があるという。それが、投機的な目線だ。
彼らが好むのは、手放すときに購入時よりもプレミア価格がつくものを好む。時計やアートだけでなく、クルマにもそうした視点が注がれる。
だから超富裕層をターゲットにしたクルマは、販売台数や販売期間が限られていることが多い。
購入するのも簡単ではない。特別なモデルの多くは、存在が公になったときにはすでに完売しているからだ。特別なモデルを手に入れるためには、上級顧客として販売店やブランドそのものと関係性を積み重ねる必要がある。ブランドのほうから購入を打診されるようになって初めて、購入するかどうか検討が許されるという特殊な世界である。
ある意味でデザインや性能よりも、「手に入らない」ことこそが超富裕層向けモデルとして最も大切な要素なのかもしれない。
希少性があるからこそ価値は高まる。天然物のダイヤは美しいだけで価値があるわけではない。大きく、品質の高いものは数がなく市場に出回ることがない。それと同じだ。
現在、自動車の超富裕層向けマーケットは天井知らずの状態だ。
たとえばフェラーリが80周年を記念して開発した「F80」の価格はおよそ5億9000万円。しかし生産台数は799台と発表されており、すでに完売しているという。
実車を確認することなく顧客に5億9000万円のクルマを買わせてしまうブランド力がフェラーリにはあるということだ。それにしても、将来F80が市場に放出されたとしたら、いくらになるのだろうか……。
そうした超富裕層向けマーケットに受け入れられるべく挑戦しているブランドもある。メルセデスはマイバッハブランドの可能性を広げるために、これまで手がけたことのないオープンスポーツモデルに着手。「SL 680 モノグラム・シリーズ」は、ボンネットのマイバッハパターンが印象的だが、この塗装工程は一部が手作業で行われるという。
普及価格帯のクルマのデジタル化がどんどん進む一方、超富裕層向けマーケットのクルマたちが、それに逆らうようにアナログ的な手法で作られ、販売手法もフェイス・トゥ・フェイスのクローズドなものとなっているのは興味深い。
それにしても、美術品的に扱われ、そのパフォーマンスを発揮することなく転売されていく個体は、クルマとして幸せなのだろうか。いや、きっとそれは庶民の僻みだ。顧客がいるからこそ、胸躍る特別なクルマたちが誕生するのだから。
[メルセデス・マイバッハ SL 680モノグラム・シリーズ]マイバッハ史上最もスポーティ

マイバッハ初の「モノグラム・シリーズ」が登場。SLをベースにしながらも、内外装のカラーや素材を見直し、マイバッハの世界観を表現。ボンネットのマイバッハパターンは、クラフトマンによる手作業で装飾されるという。発売は2025年に欧州からスタートし、他の市場にも順次展開していく。エンジンは4LV8ツインターボを搭載する。

[ブガッティ トゥールビヨン]100年先を見据えたウルトラ・アナログ

システム合計1800馬力を発揮する電動ハイパーカー。ハンドメイドで製作される超複雑時計にインスパイアされたインテリアなど、時代を超越して語り継がれる傑作を目指して開発中。顧客へは2026年のデリバリーを予定。

[フェラーリ F80]スーパーカー新時代の幕開け

ブランド生誕80周年を記念して開発されたスペシャルモデル。内燃機関搭載モデルとして究極のエンジニアリングをコンセプトとしている。3LV6ターボに3基のモーターを搭載し、システム合計で1200馬力を発生する。

[ロールス・ロイス ファントム エクステンデッド ゴールドフィンガー]1年をかけ1台のみ製作された希少モデル

ロールス・ロイスが「真のラグジュアリーの本質を明確にする、パーソナルな価値を深く反映したマスターピース」と説明するこのモデル。映画『007/ゴールドフィンガー』公開60周年を祝いたった1台が制作された。