パーツ取付・交換
更新日:2018.02.05 / 掲載日:2018.02.05
走れR-2 「エンジンをバラす」の巻
「エンジンをバラす」の巻
昭和44年8月、ロングセラーだったスバル360の後継車種として誕生。基本構造を継承しながら、広い室内とモダンな外装を得た。走りの良さからハードミニの愛称を持つ。
マフラーの接続部にパテ盛りの修復跡を発見
360cc時代では、多くの軽自動車メーカーで採用されていた2ストロークエンジン。R-2は並列2気筒のクランクケースリードバルブ式で冷却方式は強制空冷。このようなメカニズムのため、エンジンの基本構造はシンプルそのもの。今回からエンジンのオーバーホールにとりかかるのだが、このような旧車で問題になるのがガスケットやパッキン類の供給である。人気車種のてんとう虫(スバル360)とほぼ同型のエンジンだが、若干の仕様変更によりガスケット類は専用となるパーツも多く、手配には苦労した。オイルシールなど現段階では揃っていない部品があるけれど、フロントハブのリペアで行ったように純正以外でも工業用の汎用部品などを探せば見つけられそうな気配。ガスケットやパッキンについては、シート素材から切り出すという手もあるので、分解したあとに組めなくなることはなさそうである。
エンジンは補機類が付いた状態で降ろしているので、まずはそれらの取り外しだが、手こずりそうな雰囲気なのがマフラーである。排気側は前側にあり、RRのために車上では見えなかったが、マニホールドとマフラー本体を繋ぐジョイントのネジが腐りかけになっている。そこで浸透性潤滑剤を吹いてしばらく放置したのだが、ジョイントの形が変だ。突いてみると、マフラーの補修パテだった。これまでのオーナーが排気漏れに悩んでやったのだろう。
この部品たちを再利用する時は、またパテのお世話になる可能性があるが、分解時は邪魔になるだけなのでパテを軽く叩きながら取り除き、錆びたボルトにはワイヤーブラシを掛けてネジ山をできるだけ露出させてやる。こうすることで、緩んでから取り外しまでの異物噛み込みが少なくなる。マフラーは、エンジンが載せてあるメンバーやファンシュラウドの横から出ているステーに固定されているので、このボルトも外していくが、メンバー側のボルトはナゼか曲がっているものがあった。
分解する前にまずは下準備から
ダイナモなどの補機類を取り外す
マフラーの他にあるエンジンの周辺パーツは、キャブレターとインマニ&リードバルブ、ダイナモ、スターターモーター、ディストリビューターがある。ダイナモやスターターモーターは、今のクルマと取り付け方法は一緒なので、これといった難しいところはない。キャブレターは、インマニとセットで外すが、リードバルブが付いているところが独特である。リードバルブは、2ストロークのバイクを知っている人ならおなじみだが、クランクケースに直接混合気を吸引させるタイプに付けられるワンウェイバルブだ。横V字状になったハウジングに薄い金属の弁があって、クランク室が負圧になった時にキャブレターからの混合気が通過し、正圧になると弁を閉じてキャブレター側に吹き返さないようにしている。エンジンが正常に作動していたので当然だが、リードバルブはキレイな状態だった。
次は、エンジンの左サイドから上面を覆っているシュラウドの取り外しだ。強制空冷式では、エンジンで回すファンでシリンダーやシリンダーヘッドの放熱を行うが、冷却風を導くためのシュラウドがあるため、分解前は排気量以上に大きく見える。もちろんシリンダーやヘッドも空冷のフィン面積が必要なので、それなりの外寸があり、薄いウォータージャケットの水冷エンジンよりも外寸が大きめとなっている。前回もシリンダーヘッドの点検で上面側は外しているのだが、今回はファンのある左サイドも外していくことになる。
その前にクリアしておかないといけないのが、空冷用ファンの取り外しだ。ファンとエンジンの間にシュラウドのバックプレートがあり、ファンが外れないと固定ボルトにアクセスできないのだ。ファンはアルミ製で、中央にはゴムを使ったトーショナルダンパーが内蔵されている。固定は大型のナットである。まずは、スターターの取り付け穴にプライバーを入れて回り止めとして、ナットを緩める。ナットが外れたら、軽くクランクのシャフトをプラハンで叩きつつファンを引っ張ってみるが、そんなに簡単に抜けるわけがない。やはりプーラーが必要だ。ハブ部にはM6×1.0のメネジが対称にあるので、バイク用のマグネットロータープーラーを使って引き出してやる。
ハブとシャフトの組み合わせ面はテーパー(これだとガッチリ固着する)ではなく、平行だったのでスルッと抜き取ることができた。そこで見つかったトラブルが、クランクシャフトシールからのオイル漏れ。2ストロークエンジンは、クランクケースで混合気を圧縮する。内圧が高くなるため、オイルシールが劣化していると外に2ストロークオイルが出てきてしまう(ガソリン分もあるだろうが大半は蒸発するはず)。滲んだ部分はホコリ付着のレベルではなく、液として垂れているのでオイルシールは新品にしないといけない。
クラッチの分解には専用プーラーが必要だった
エンジンを降ろす前までは、オイルポンプの漏れくらいしか汚れの酷いところが見つけられず、洗浄も簡単かなあと思っていたが、シュラウドを外したところから真の姿を見ることになった。2ストロークエンジンでは、クランクケースにシリンダーが差し込まれているが、どうやらこの部分から長年にわたってオイル漏れを起こしていたようなのだ。クランクケース上面を中心に、ミッション側まで黒いベタベタ汚れがこびりついている。そのため、分解作業を一旦中止して、エンジンを洗浄することにした。
年季の入った汚れなので、最初から高圧洗浄機を持ち出してきた。20万kmオーバーのポンコツジムニーのオーバーホールでも、高圧洗浄機で非常にはかどった記憶がある。しかし、コイツの汚れは尋常ではない。まるでアンダーコーティングかと思えるくらいにびくともしない。業務用のスチーム洗浄機か、せめて家庭用のスチームクリーナーでも持ってこないと、汚れが軟化しないようだ。通常、エンジン外装には使わないガスケットリムーバーまで吹いてみたが、ペロッと剥がれるような効きは見られなかった。現代の直噴ガソリンエンジンの吸気ポートでも汚れはガンコで、一部のメーカーではクルミの粉でブラストして落とすツールが純正パーツとして用意されているくらいなのだが、ガソリンとオイルの混合物で生成した汚れは、通常の汚れと質が違うような気がする。AMガレージには大型のブラストマシンはないので、パテベラで汚れを掻き落としていくしかないが、3時間ほど格闘してようやく素手で触れるレベルになってきた。
キレイになったところで分解を再開。今度はファンと反対側のクラッチ部を分解する。バイクのようなエンジンとミッションのレイアウトなので、クラッチの取り付け方が普通の横置きエンジンとは違っている。こちらもプーラーが必要で、サスの部品を加工してボルトと組み合わせた簡易品を使って抜き取った。
思っていたより状態はよかったが……
シリンダーヘッドのボルトは6本で、対角線上に3回ほどに分けてボルトを緩めて外す。どちらのヘッドも燃焼室は最小のカーボン付着で済んでいる。シリンダー内径とピストン外径は標準状態で3つのサイズがあり、2つのピストンにはBとC(?) のマークがありオーバーサイズ加工は行われてないのが分かる。シリンダーはクランクケース側にスタッドボルトとナットで取り付けられているので、ナットを緩めて取り外す。この辺は固着もないのでスムーズに外すことができた。シリンダーは上に引き上げると、ピストンがコンロッドに付いたまま抜き取れる。気になるピストンスカートは左の#2は素晴らしい状態で、目立った縦キズはほどんどない。一方右側の#1はピストンリングの下のスラスト力が掛かる部分にキズが多くなっていた。ピストンリングまでダメージがないので、圧縮はキープできているが、これはオーバーサイズにするか、再使用するとしても修正しておきたいところ。
最後にクランクケースの分解だ。クランクケースはミッションケースも兼ねているが、クランク部のハウジングは前側で分割されているので、ミッション側に手を付けなくても分解できる。こちらはキャップボルト(ヘキサゴン)12本で固定されていて、吸気ポート内にもボルトがある。ここまで比較的順調にきたのだが、このボルトがものすごく固い。そこで、ヘキサゴンの穴を洗浄して工具をしっかり差し込めるようにし、ハンドルも1/2角にして力を入れやすくする。初期のネジレがあり、折れるかも? と覚悟したがキューッと鳴きながらも全数緩めることに成功。クランクまで取り出すことができた。
今回のまとめ
できる限り消耗したパーツを交換できるようにパーツを探しているのだが、なかなか見つからない。人気のスバル360と基本的には同じエンジンなのだが、R-2では改良されているので流用できない専用パーツも多いのだ。もしかしてバラさないほうがよかったか?
提供元:オートメカニック