新車試乗レポート
更新日:2021.03.12 / 掲載日:2021.03.11

SUBARU 新型レヴォーグ 雪上の真実

SUBARUのアイデンティティである水平対向エンジンと左右対称のパワートレーンで構成されるシンメトリカルAWD。スポーティな走りのためだけでなく、安全と安心に重きを置いたAWDシステムだ。今回は雪道で新型レヴォーグを駆り、その実力をチェックしてみた。

「継承と超革新」で登場した2代目新型レヴォーグ

 スバルの四輪駆動の歴史は東北電力からのあるリクエストから始まった。「山間部の総電線の点検用に『ジープ並みの積雪地での走破性(=四輪駆動)』と『乗用車の快適性』を両立したクルマが欲しい」というものだった。
 宮城スバルが製作したff-1ベースの試作車を経て富士重工(現SUBARU)が開発を引き継ぎ生まれたのが、「スバルff-1 1300バン4WD」だ。このモデルは8台の試作にとどまったが、ff-1の後継モデルとなるレオーネに4WD(AWD)を追加、このモデルが“量産”初の乗用4WDとなった。
 当初は通常は二輪駆動で必要に応じて四輪駆動に切り替える「パートタイム4WD」だったが、1980年代に常に四輪駆動となる「フルタイム4WD」が主流となった。スバルの四輪駆動へのこだわりは強く、ひと口にフルタイム4WDと言っても各モデルのキャラクターや用途に応じて異なるシステムが開発された。ここ最近だと、「センターデフ式」、「VTD-AWD」、「ACT-4」、「ビスカスLSD付センターデフ式」、「DCCD式」の4種類が挙げられる。ちなみに、これらのシステムに共通するのは「常時四輪駆動」である事だ。
 実は最近のフルタイム4WDの多くが「スタンバイ式」、「オンデマンド式」と呼ばれるシステムが採用されている。普段は二輪駆動で走行、駆動輪が空転すると必要な時に自動的に四輪駆動に自動で切り替える。その切り替えは技術の進化でシームレスかつ瞬時に行なっているが、わずかな遅れがあるのも事実だ。スバルはその“わずか”がドライバーの安心・安全に大きく影響すると考えており、常に4輪を駆動させることに徹底してこだわっている。もちろん燃費の面では不利だが、そこは地道な進化・熟成が行なわれているのだ。
 そんなスバルAWDの最新作が2020年10月に2代目に進化した新型レヴォーグである。開発コンセプトは「継承と超革新」である。継承とは1989年に登場し、スバルのイメージを積雪地域に乗るクルマから走りにこだわるブランドに変えた初代レガシィで掲げた「グランドツーリング思想」、超革新とはその思想をより高いレベルで実現させるためにパワートレーン/プラットフォームを始めとするメカニズムを全面刷新させた事である。
 その走りは単なる進化ではない、まさに「激変レベル」だ。正直言ってしまうと、あれだけ良いと思っていた初代が「心もとない」と感じてしまうくらいのレベルで、新型レヴォーグはハンドリング/快適性共に1ランク、いや2ランク以上のレベルアップを果たしている。

ドライ路面から、いきなり横殴りの雪という、ガラリと変わる天候でも安心してドライブできるSUBARUのAWDシステム。常時四輪駆動という安心感は絶大だ。

4輪を駆動させることにこだわるシンメトリカルAWD

水平対向エンジンを含む左右対称のパワートレーン。そして重心が低く前後左右の重量バランスにも優れたSUBARU伝統のAWDシステム。新型レヴォーグは駆動力を素早く配分できるアクティブトルクスプリットAWDを採用。

新型レヴォーグが採用するアクティブトルクスプリットAWDは、前60:後40のトルク配分を基本とし、加速や登坂、旋回などの走行状態に合わせてリアルタイムでトルク配分をコントロールする。

降り続く豪雪の中でも安心のハンドリングを誇る新型レヴォーグ。ワインディングのような急な勾配とカーブのある道路でもしっかり路面を掴みしなやかに走っていく。

前輪のスリップを検知すると、すぐさま後輪へのトルクを増やして駆動力を確保。新型レヴォーグでは、横滑り防止のVDCと旋回性能を高めるアクティブ・トルク・ベクタリングを搭載。

絶大な安全/安心/安定を実現したAWD。走る愉しさはその先にある!

  • 新開発の1.8L水平対向直噴ターボDITを搭載。なめらかな加速とリニアなレスポンスを実現したリニアトロニック(CVT)との組み合わせで、繊細なアクセルワークを必要とする雪道でも扱いやすい。

  • STIスポーツに搭載されるのが「ドライブモードセレクト」機能だ。ComfortからSport+までの4つのモードの推奨モードのほか、各項目を自由に設定できるIndividualモードも搭載する。

今回のドライブテストを行った山本シンヤ氏の雪道走行オススメモードは、パワートレーンは穏やかな「I」、ステアリングは手ごたえ重視の「Sport」、サスペンションはストロークさせ接地感を高める「Comfort」、AWDは安定方向の「Sport」だ。

雪道でより際立つAWDとクルマとしての総合性能

 そんな新型レヴォーグ、本誌でも詳細な車両解説は報告済み、さまざまなステージでチェックしてみたが、今回は「雪道」だ。それも整えられたテストコースやクローズドコースではなくリアルワールドのロングツーリングである。
 今回の試乗車はトップグレードである「STIスポーツEX」にスタッドレスを装着。銘柄はレヴォーグの純正タイヤ(ヨコハマ・ブルーアースGT)に合わせて、「アイスガード6」をセレクトした。
 目的地までは約300km。高速道路はほぼドライ路面だったが、レベルアップした基本性能の高さに加えて、プロドライバーがアシストしているような制御のアイサイトXのタッグは鉄壁である。
 関越トンネルを越えると景色は一転して大雪。インターを降りて一般道を走るが、月刊自家用車編集部がセレクトした道は、何と山越えルート……。登っていくにつれて雪はどんどんひどくなる。普通のクルマだったら「ちょっと心配!?」と感じるシーンだが、レヴォーグだとなぜか「絶対に大丈夫」と感じる何かがある。それが何かと言うと……。
 具体的にはドライバーの意のままの走りを高いレベルで実現させる「インナーフレーム構造のSGP」、“常時四駆”にこだわった「AWDシステム」、路面を離さないしなやかな「サスペンション」、実用トルクと扱いやすさにこだわった「CB18水平対向直噴ターボエンジン+新CVT」と言った基本性能。そして、スポーティなルックスと両立させた「直接視界の良さ」や取り回しの良い「ボディサイズ」、さらにはワイパー払拭面積の広さやワイパーデアイザー(寒冷地でのワイパーの張り付き/ワイパー下に雪が溜まるのを防ぐ)と言ったアイデアや、素早く温まる空調やシートヒーターなどが挙げられる。つまり、「○○がいい」ではなく様々な要素が合わさって総合性能が優れている。それは走行環境がより厳しい雪道のほうがより際立つ。その結果、常に冷静なドライビングが可能で、それが安全運転にも繋がる……と言うわけだ。
 STIスポーツには走りの特性を変えることが可能な「ドライブモードセレクト」が採用されるが、これは雪道にも使える。筆者のお勧めは、パワートレーンは穏やかな「I」、ステアリングは手ごたえ重視の「スポーツ」、サスペンションはストロークさせ接地感を高める「コンフォート」、AWDは安定方向の「スポーツ」だ。
 そろそろ結論に行こう、新型レヴォーグは絶大な安全/安心/安定を実現した結果、その先に見える「愉しさ」を感じることのできる一台だ。欲を言えば、あともう少しだけ燃費が伸びてくれると完璧に近づくのだが……。

全長:4755mm、全幅:1795mm、全高:1500mm、ホイールベース:2670mm、車両重量:1580kg、乗車定員:5名、WLTCモード燃費:13.6km/L、JC08モード燃費:16.5km/L、エンジン形式:CB18、エンジン種類:1.8L水平対向4気筒DOHC直噴ターボ、エンジン最高出力/最大トルク:177PS/30.6kg・m、トランスミッション:リニアトロニック(CVT)、燃料タンク容量:63L、サスペンション前/後:ストラット式独立懸架/ダブルウィッシュボーン式独立懸架、ブレーキ前/後: ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク、タイヤサイズ:225/45R18

●文/山本シンヤ ●写真/澤田和久

提供元:月刊自家用車

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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