輸入車
更新日:2020.05.07 / 掲載日:2020.05.07

【試乗レポート BMW 1シリーズ】3世代目にして1シリーズは新しい道を歩み始めた

BMW 118iプレイ

文●大音安弘 写真●澤田和久、ユニット・コンパス
※ナンバープレートは一部はめ込み合成です。
 BMWエントリーとなる1シリーズのデビューは、2004年のこと。クリス・バングルが手掛けた特徴的なモダンクラシックなスタイリングは、強烈な個性を放ったが、同時に何処か惹きつけられる魅力に溢れていた。あの衝撃から15年を経た昨年、第3世代へとスイッチし、全面刷新による新たな1シリーズ像が描かれた。

プラットフォームをFRからFFへと変更

BMWのエントリーを受け持つ1シリーズ。価格は334万円から633万円

 スタイルやメカニズムなど、新型のトピックスはいくつもあるが、ファン最大の関心事は、やはり駆動方式の変更だろう。新型より、伝統のFRレイアウトを捨て去り、FFへとシフトされたからだ。BMWは、傘下であるMINIの開発によりFFノウハウを習得済みであるが、これまでFFモデルの投入は限定的で、初のMPV、2シリーズの「グランツアラー/アクティブツアラー」のみに限定されていた。しかし、新生1シリーズの登場より、事態は一変し、コンパクトクラスのFF化を本格化。2019年10月には、新生1シリーズと基本を共有する4ドアクーペの「2シリーズグランクーペ」も発表している。つまり、新型は、今後のBMWの方向性を示す存在ともいえるわけだ。

ボディカラーは全8色。試乗車のボディカラーはメルボル・レッド

スタイリングはショートノーズかつアグレッシブなものに

前下がりでアグレッシブな印象を与えるスタイリング

 FF化がもたらす最大の変化は、スタイリングだ。特徴的なロングノーズが消え去り、FF車らしいショートノーズのスタイルに。サイドのラインとガラスエリアを尻上がりにデザインすることで、攻撃的な姿勢にまとめた。ひと言でいえば、いまどきのスポーツハッチバックらしいスタイルを選んだのだ。フロントマスクには、大型化された新キドニーグリルやシャープなヘッドライトを採用し、押し出し感も強めた。こうしたイメチェンには、賛否はあるだろうが、旧来のクラシックなイメージを拭い去り、若返ることに重点を置いたのだろう。ただ同時に、見る角度によりボリューム感も強調されたように思える。

FF化によって室内の空間効率が向上した

内部機構がコンパクトになったことで、全長はほぼそのままに、後席の足下や荷室が広くなった

 もちろん、FF化のメリットはある。それはキャビンの広さだ。新型のボディは、一見、大型化されたように思える。しかし、先代と比較すると、全長-5mm、全高+35m、全幅+25mm、ホイールベース-20mmと、全幅こそ拡大したが、取りまわしに影響する寸法は、ほぼ同等か、むしろ切り詰められているのだ。それでいて、後席足元が約40mm拡大され、ラゲッジスペースも20L増しの380Lを確保。これまで弱点といえた実用性が、しっかりと磨かれたのだ。

デジタル化され一気にモダンになったインテリア

AI技術を使った音声会話システムBMWインテリジェント・パーソナル・アシスタントを採用

 インテリアのデザインは、コクピットまわりが一気にモダン化。ダッシュボードは、新型3シリーズと近く、全車標準のデジタルディスプレイメーターも鮮度を高めるポイントだ。またシフトとサイドブレーキも電気式とし、シフト横に新たなiDriveコントローラーを備えたことで、センターコンソールまわりも一変している。 フロントシートに収まってみると、視界がよくなったことを実感。新ダッシュボードが、すっきりした直線的なデザインで、配置も低めとした効果なのだろう。このため、ヘッドアップディスプレイがあると、視点移動をより減らすことができ、重宝する。リヤに目を移すと、後席の居住性は大きく高められ、実用的になったと思う。ただリヤドア開口部のデザインが、下側の幅をタイトにしていることもあり、乗降性は、いまひとつ。そこは勿体ない。

  • パーキングブレーキが電動化され、コンソール周辺も上級モデル同様になった

  • シート生地はクロスが標準で通気性を高めたレザーもオプションで用意

  • 後席足下は先代と比較して40mm拡大された

走りの爽快感はさすがBMW。ワインディングでは水を得た魚のよう

118iは140馬力の1.5Lガソリン直3ターボ、118dは150馬力の2L直4ディーゼルターボ、M135i xDriveは306馬力の2L直4ターボを搭載する

 エントリーモデル118iのパワートレインは、1.5Lの3気筒DOHCターボに、7速DCTを組み合わせたもの。最高出力140馬力/4600~6500rpm、最大トルク22.4kgm/1480~4200rpmと実用的なスペックを備えるものだ。エンジン自体は、従来型118iと同様だが、こちらは横置きで、トランスミッションが異なる。わずかだが、出力も高まっている。 試乗車は、118i Play。エントリーの118iに、快適装備を追加したものだ。タイヤは、205/55R16のランフラット。サスペンションもノーマル。いわゆる素の「1」となる。 正直、新型は、MINIとプラットフォームを共有するため、どんな味付けなのか、気がかりだった。その背景には、従来のFF車は、MINIを含め、BMW感は薄かったことにある。そのため、1シリーズも、BMWらしさに欠けるのではと、心配したのである。しかし、結論からいえば、それは杞憂に過ぎなかった。 走り始めて、まず感じたのが、静粛性の高さだ。3気筒エンジンは、音と振動の両面で不利となるが、それをしっかりと手なづけている。もちろん、回転数が高まれば、3気筒特有の音は伝わるが、それも最小に留められているようだ。音と振動対策を入念に、行ったのだろう。また標準サスは、乗り心地も良く、先代118iと比べても快適だ。では、新生118iは、単に大人しいクルマに仕上げられたのだろうか。その点もよい意味で裏切ってくれた。 ワインディングに持ち込んだ118iは、まるで水を得た魚だ。ステアリングやシートからのインフォメーションもよい。標準サスなので、ロールは大きめだが、その反面、車体の動きが分かりやすい。限られたパワーをしっかりと引き出して、走りを楽しむことができた。FFながら、心地よりコーナリングが楽しめたが、これは、新機能「タイヤスリップコントロール」の働きも大きい。この機能は、タイヤの滑りを素早く検知することで、スリップを抑える制御を行う。これによりアンダーステアを抑制し、狙いのラインをトレースできるわけだ。標準ステアリングは、スポーツステアよりもにぎりが細いので、日本人の小さい手でも、しっかりホールドできるのも好印象であった。

コンパクトカーとしての完成度を高めた3世代目

 今回の試乗で、BMWの開発者たちが、FFでもBMWらしさを演出するレシピを手にしだしたなと実感することができた。では、FF万歳となるかといえば、然にあらず。やはり、BMWらしさだけでいえば、先代モデルの方がリードする。また人気のMスポーツの味付け、そして、この4月に登場したばかりのクリーンディーゼルの118dの存在も気になる。もし、1シリーズを検討するなら、118dとはしっかり比較すべきだろう。ただ4WD化したM135i xDriveは、価格も性能も別物なので、ターゲットとするひと以外は気にする必要はない。 それよりも最大の懸念は、宿命のライバル、メルセデスベンツ「Aクラス」の存在だ。単に出来のよいFFハッチを選ぶなら、Aクラスの存在は脅威となる。しかし、BMWにも強みはある。それは伝統の駆け抜ける喜びという独自の価値だ。BMWらしいFF車として、着実な一歩を踏み出した1シリーズ。その熟成がBMWの未来を左右するかもしれない。


BMW 118iプレイ(7速AT・DCT)

全長×全幅×全高 4335×1800×1465mm
ホイールベース 2670mm
車両重量 1390kg
エンジン 直3DOHCターボ
総排気量 1499cc
最高出力 140ps/4600-6500rpm
最大トルク 22.4kgm/1480-4200rpm
サスペンション前/後 ストラット/マルチリンク
タイヤ前・後 205/55R16



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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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