新車試乗レポート
更新日:2020.03.03 / 掲載日:2020.03.03

【試乗レポート トヨタ グランエース】新境地を切り開く!プロフェッショナルな1台

グランエース プレミアム

文と写真●大音安弘

「ジャパンタクシー」に代表されるように、身近な働くクルマも多く手掛けるトヨタ。2019年11月25日に発表したフルサイズワゴン「グランエース」は、その最新作となる。なんと全長5mを超えるフルサイズボディのワゴンで、その活躍の舞台は、送迎だという。海外では、Vクラスに代表されるように大型ワゴンが活躍しているが、これまで日本では、上級セダンや高級ミニバンが、その役目を担ってきた。独自の価値による新市場の開拓を目指すグランエースのどんなクルマなのだろうか。乗客、そして、ドライバーの両方の視点で、試乗してみた。

日本ではめずらしいフルサイズのワゴン

グランエース プレミアム

 グランエースは、とにかくデカイ。それもそのはずで、ボディサイズは、全長5300mm×全幅1970mm×全高1990mmと超ワイド。日本では、珍しいフルサイズワゴンなのだ。これは、アルファード(※)がすっぽり収まってしまうほどの大きさである。さらに独自のスクエアなスタイルも、サイズ感を強調。正面から見れば、ほぼ真四角。サイドビューもフロントを除けば、ほぼ長方形だ。まさにしゃれっ気とは、無縁の実用重視のスタイルである。
 とはいえ、大切なお客様を迎え入れるクルマだけに、高級感は重要だ。しかもビジネスカーなので、ライフサイクルも長い。そこで飽きの来ない和風デザインに仕立てたという。アルファードのようなぎらつきは不要だが、車格を感じさせる大型グリルは、必須アイテムだ。シャープな前後マスクは、なかなか凛々しいもの。過度な装飾がないから、大きくても威圧感もなく、フォーマルな佇まいに仕上がっているのだろう。
 ボディカラーもブラック、ホワイトパール、グレーメタリック、シルバーメタリックの4色と、フォーマルシーンにも最適なオーソドックスなカラバリとしている。

※1:全長4945mm×全幅1895mm×全高1950mm

アルファードと並べるとグランエースのサイズ感がよくわかる

移動中の快適さを重視したインテリア

グランエース プレミアム

 ボディ同様、キャビンも、ゆとりにあふれたもの。室内長3365mm(※2)×室内幅1735mm×室内高1290mmを確保する。グレードでシートレイアウトが固定されており、2タイプを設定。上級モデル「プレミアム」は、3列シート6人乗り仕様。スタンダードな「G」は、4列シート8人乗り仕様となる。もちろん、主力となるのは、快適性を重視した「プレミアム」だ。
※2:6人乗りの室内長。8人乗りは、3290mmとなる

 「プレミアム」では、高級ミニバンでもセカンドシートのみとなるキャプテンシートを2列目だけでなく、3列目でも採用。後部の4名に同様のスペースと高機能な「エグゼクティブパワーシート」が与えられるのが、大きな特徴だ。
 このエグゼクティブパワーシートには、パワーリクライニング、パワーオットマン、角度調整式大型ヘッドレスト、大型アームレスト、シートヒーターなどが備わる。広大な後部スペースは4座のためだけに使われるので、他のシートを気にせずリラックスした姿勢が取れる。まるで気分は、新幹線のグランクラスや飛行機のビジネスクラスでの移動だ。
 シートは足元だけでなく、左右乗員間の距離も広いため、圧迫感とは無縁。正直、アルファードの車内が狭く見えてしまうほど。後席間の移動もシートの間をすり抜けて行えてしまう。また荷物が少なければ、2、3列席で同時に、リクライニングとオットマンを利用してくつろぐことができる。もちろん、ラゲッジスペースを活用する場合も、3列目のリクライニングこそ制限が出るが、全席で快適なスペースを維持しながら、約90Lのスーツケースを4つ立てたまま収めることが出来る。これも大きさの成せる業である。
 ただ8名乗車仕様の「G」では、少し事情が異なる。左右の広さこそゆとりがあるが、1列分シートが増えるため、シート間の距離は狭まる。あくまで多人数乗車を優先するユーザー向けだが、これでは、グランエース独自の快適性が薄れてしまい、もったいなく思う。ちなみに、「プレミアム」と「G」との差は、シートレイアウトと装飾が中心で、装備差は限定的。これも用途に特化したモデルの特徴といえそうだ。
 乗降性については、電動式後席スライドドアの開口部は100mmが確保されており、2、3列シートともにアクセスし易い。ただFRレイアウトであるがため、フロアの若干高く、2ステップでの乗車となる。ファーストステップの高さが410mmあるので、幼い子供やお年寄りは乗りづらいかもしれない。トヨタとしても、この点を課題として把握しており、今後、電動格納式ステップの設定などの対策を検討中とのことだ。

  • グランエース プレミアム

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快適な移動を支える鍛え抜かれたボディ

グランエース プレミアム

 グランエースは、海外向けのハイエースのコンポーネンツをベースに開発されているが、その中身は、専用チューニングが施され、もはや別物だという。ライバルとなる大型ワゴンがフレーム構造を持つのに対して、グランエースはモノコックボディである。このため、ボディ剛性も強化も大きな課題に。そこでフロアをストレートラダー構造とし、上屋となるボディ部にも環状骨格構造を採用。これにより上下ともにハリを多く持つボディ構造となり、しっかりとしたボディに仕上げているのが特徴。足まわりも日本の道路事情と送迎車としての快適性を踏まえた専用仕様となるという。
 パワートレインは、2.8L直列4気筒ディーゼルターボ。ランドクルーザー・プラドなどにも搭載されるハイチューン仕様で、最高出力177ps/3400rpm。最大トルク450Nm/1600rpm~2400rpmを発揮する。トランスミッションは、6速ATを設定。駆動方式は、FRのみとなる。

乗員誰もが快適な走りを実現

4列8人乗り仕様の「G」

 アルファードと同等の静粛性を実現したというキャビンは、とにかく静か。これだけ大きなボディなのに、3列目シート付近の最後部からでも走行中にドライバーとの会話も可能なほど。さらに驚かされたのが、その乗り心地のよさ。大型クルーザーを思わせるゆったりした乗り味なのだ。しかも5mの長さと2mの背丈を持つボディながら、後席で感じる車体の動きにも遅れがないため、アップダウンがある道路やコーナリングでも違和感がない。これは、酔わないクルマを目指したためだという。またフロアが高い分、乗員の視点も高くなり、景色もより楽しめるのもポイントだ。送迎車にふさわしい後席の快適性をトコトン追求したことを実感できた。
 では、ドライバー目線でみたグランエースはどうなのか。意外なことに、結構、運転は楽しい。くせのないFRらしい走りに加え、45°の切れ角を持つ前輪と滑らかな油圧パワーステアリングが優れた操作性は、ボディサイズを忘れてしまうほど。車線変更時なども狙ったラインを、しっかりトレースしてくれる。また大きいドアミラーとデジタルルームミラーのおかげで、周囲の状況もつかみやすかった。何よりも魅力的なのが、大型車を操る醍醐味を味わわせてくれる力強いエンジンと剛性たっぷりのボディだ。450Nmという大トルクを発揮するディーゼルエンジンは、ATのチューニングも絶妙。必要とあればギアをキープし、しっかりと上までまわる。その上、エンジンの回転フィールも、じつに滑らかだ。高速道路などの合流も、スムーズにこなすことが出来る。また高いボディ剛性と接地性に優れた足まわりは、フラットな乗り心地だけでなく、ワゴンとは思えないシャープなコーナリングも見せてくれる。またブレーキのコントロール性もよく、快適な移動につながるなめらかな走りのサポートしてくれる。グランエースは、ドライバー目線でもしっかりと磨き挙げられた、まさにプロフェッショナルの相棒なのだ。

8人乗り「G」の4列目シート

今後の成長が楽しみな一台

グランエース G

 いわゆる働くクルマであるグランエースは、上質さを備えるが、いわゆるアルファードのような豪華装備は持ち合わせていない。これは必要とあれば、カスタマイズを行うプロ向けのクルマであること。そして、現時点では、個人ユーザーは限定的と見られているためだ。このため、まだ粗削りな部分がみられる点もある。小さく産んで大きく育てようというスタンスなのだ。現時点では、ビジネスユースに特化しているが、個人的には、大家族やレジャーなど個人ユーザー向けの仕様があっても面白いと思う。
 価格については、「プレミアム」が650万円。「G」が620万円を掲げている。高級車ではないが、走りや乗り心地など性能としては磨きあがられており、正直高いとは思わない。もちろん、アルファードと比較すると、標準的なグレードと最高級グレード「エグゼクティブラウンジ」の中間的な価格となり、高級感と日常での使い勝手ならアルファードに分がある。しかし、グランエースに触れてみると、広さでしか得られないものがあることも実感させられる。誰でも進められるクルマではないが、この快適さはクセになる。


トヨタ グランエース プレミアム(6速AT)

全長×全幅×全高 5300×1990×1970mm
ホイールベース 3210mm
車両重量 2740kg
エンジン 直4DOHCディーゼルターボ
総排気量 2754cc
最高出力 177ps/3400rpm
最大トルク 46.1kgm/2400-4000rpm
サスペンション前/後 ストラット/トレーリングリンク
タイヤ前後 235/60R17






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グーネットマガジン編集部

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グーネットマガジン編集部

1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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