輸入車
更新日:2019.08.30 / 掲載日:2019.08.30

【試乗レポート アウディ Q8】これがアウディの考えるSUVの最上級

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス

 アウディの最上級クラスに位置するフラッグシップモデルは、“8”の数字がつく。サルーンのA8、スーパースポーツのR8、そして今回のQ8がそう。SUVクーペのQ8はオーセンティックなQ7の派生モデルと考えていたが、そうではないということだ。

クーペスタイルを採用したQ8のデザイン

八角形のシングルフレームグリルを始め、最新のデザイン言語を採用

 たしかに、Q8は既存のプラットフォームを利用しながらもボディワークはオリジナル。ルーフからのリヤパーツだけでなく、全部が新しい。ポルシェから新たに登場したカイエンクーペは、ベースとなったカイエンに対してボンネットとフロントフェンダー以外を専用部品とするが、Q8はその上を行くことになる。
 例えばQ7とはヘッドライトとグリルの形状が異なる。六角形のシングルフレームグリルがQ8では八角形になった。それにグリル内の格子は縦のラインが強調される。ただ、これは今後SUVの新型車に波及されるもので、いわゆる新アイコン。具体的にはQ3以降がこれを装備する。その意味ではこの2台の間に若干の世代差があることは否めない。
 ヘッドライトやリヤコンビネーションランプのデザインが違うのもそう。独立した左右2つのテールランプを持つQ7に対し、Q8のリヤは左右のライトが一本につながる。これはA7スポーツバック以降のデザインで、A8にも採用されるものだ。暗闇で横に一本に伸びたLEDライトの光がいかにも未来的で新しい。

  • サッシレスドアによってクーペらしい美しいサイドビューを実現

  • ガーニッシュによって左右が連結されたテールデザインは、スポーツクワトロからの引用

フラッグシップにふさわしい品質と機能性を備えたインテリア

A8ともデザイン的な関連性を持つインテリア

 新世代という面ではインテリアでも違いが現れる。Q7はフルデジタルメーターであるバーチャルコクピットを有するものの、インフォテインメント用モニターがダッシュボード上に設置されるだけ。ところがQ8のそれは2つあり、ダッシュボード中央にアッパースクリーンを、その下にローワースクリーンを配したものとなる。上がインフォテインメント、下がエアコンなどの快適装備だ。
 モニターが操作の中心となるのはまさにトレンドである。これまでのようにスイッチやボタン、ダイヤルをむき出しにするのではなく、すべてモニター内の階層に入れてしまおうという方向性だ。目的はダッシュパネルやコンソールのシンプル化。そこに置くのを必要最低限とし、デザインの優位性を高めようとする算段である。アウディの場合、メーターの位置にバーチャルコックピットがあるので、デジタル感はより一層強くなったように思える。

  • 2枚の液晶ディスプレイを並べるインフォテインメントシステム

  • スポーツシートはオプションの「Sラインパッケージ」に含まれるもの

  • サッシレスドアの採用によって後席の乗降性も良好

  • スクエアで使いやすいラゲッジルーム

「クワトロ」、「マイルドハイブリッド」などアウディが誇るテクノロジーを凝縮

インタークーラー付き3L V6ターボエンジンにモーターを組み合わせたマイルドハイブリッド

 それではハードウェアに話を移そう。Q8のエンジンは3L V6ターボで340馬力を発揮する。48Vリチウムイオンバッテリーを積んだマイルドハイブリッドだ。モデル名がQ8 55 TFSI クワトロとなっていることからもお分かりだろう。“55”が、排気量ではなくパワーを示す指標になっている。理由は、今後EVがラインナップに加わってくると、排気量でクラスわけできなくなるからだ。
 日本仕様ではこのモデルを中心に、「デビューパッケージSライン」と「デビューパッケージ ラグジュアリー」を用意する。言わずもがな装備違いだ。ただ、今後エンジンの追加も予想される。ディーゼルエンジンもそうだし、ガソリンのV8も十分想定される。というか、トップエンドモデルであれば当然V8ツインターボは欲しいところだ。 トランスミッションは8速ティプトロニックで、駆動方式はもちろんクワトロ(四輪駆動)。そして、オールホイールステアリング(四輪操舵)で、アダプティブエアサスペンションというプロフィール。言うなれば、あらゆる装備が付いている“全部載せ”的なイメージ。先進のドライブアシストと安全装備も充実だ。まぁ、冒頭に記したようにフラッグシップモデルと鑑みれば、それもわからなくない。

Q8の走りは滑らかかつジェントル

八角形のシングルフレームグリルは今後のSUVモデルに受け継がれていく

 では実際に走らせるとどうなのか。
 “走り”を総合的に言うと、とても滑らかでジェントルな印象。出だしからスッと出て、そのままシームレスに加速する。マイルドハイブリッドのメリットで出だしの音が静かなのがいい。しかもその後もずっと静か。つまりキャビンの静粛性がそもそも高く設計されている証拠でもある。リヤにバルクヘッドのないパッケージングでこの高級感は格別だ。
 それでいてアクセルを深く踏み込んでいくと、ターボが背中を押すようにグイグイ加速する。今回は高速道路が試乗コースに入っていなかったため、ハイスピード領域でのクルージングは体験できなかったが、その安定感のよさは想像できる。加速と同時に沈み込むエアサスのセッテイングは完璧だ。次回はぜひロングドライブを試したい。
 そして今回いちばん驚かされたのがワインディングでの軽快な身のこなし。リヤタイヤがステアされることで、イメージ以上の小まわりを見せた。連続するタイトコーナーをヒラリヒラリ抜けていく様は、まるでハッチバックのよう。2トンを超える車両重量をネガティブに感じさせないのはさすがとしか言いようがない。それとこのときボディサイズはふたまわりくらい小さく感じられるのも付け加えたい。この辺の身のこなしや味付けは、レースの経験が生かされていることだろう。

完成度の高さと1000万円を切るスタートプライスに驚き

SUVにおけるフラッグシップという位置付けにふさわしい洗練された乗り味

 以上がQ8とのファーストコンタクトとなる。かっこいいスタイリングだけに走りが気になったが、結果は満点。もさっとした動きは微塵もない。それと値段にも驚いた。フラッグシップの一角を担いながらスタートプライスは1000万円を切る。ここはもしかしたら輸入元のアウディジャパンががんばったのかもしれない。兎にも角にも、個人的に今年の輸入車の中では上位に来そうな1台である。



アウディ Q8 55TFSI quattro エアサスペンション装着車(8速AT・4WD)

全長×全幅×全高 4995×1995×1690mm
ホイールベース 2995mm
エンジン V6DOHCターボ+モーター
総排気量 2994cc
最高出力 340ps/5200-6400rpm
最大トルク 51.0kgm/1370-4500rpm
サスペンション前後:ウィッシュボーンブレーキ前後 ディスク
タイヤ前後 275/50R20



 

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グーネットマガジン編集部

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