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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.04

日産エクストレイル 期待と不安が相半ば

現時点では唯一のクリーンなディーゼル車

ヨーロッパ仕様のバンパーを採用したことで全長が45mm延びた20GT。バンパー組み込み型のフォグランプは標準装備となっている。タイヤサイズは215/60R17で、アルミホイールも標準装備だ

ヨーロッパ仕様のバンパーを採用したことで全長が45mm延びた20GT。バンパー組み込み型のフォグランプは標準装備となっている。タイヤサイズは215/60R17で、アルミホイールも標準装備だ

【本記事は2008年10月にベストカーに掲載された記事となります。】日産では’03年1月に生産中止となったテラノレグラス以来となるディーゼル車が登場した。X-トレイル20GT。9月4日発表で、発売は9月18日から。来年10月1日から施行される日本のポスト新長期規制に適合する現時点では唯一のクリーンなディーゼル車だ。タイトル部に載せたコメントにあるようにゴーン社長も自信満々なのだが、まったく不安がないわけでもない。まず、6速MTしかないことが日本では不安材料。来年夏前には6速ATが導入されるとの情報もあるが(ヨーロッパにはすでに存在し、4割がAT)、新車はやはりスタートが大事。最初に人気を得られなければ、途中から挽回するのが難しいのはこれまでの例でもわかる。また、ガソリン価格の高騰以上に軽油の値段が上がっているのも不安材料。左上の写真は8月25日の東京都内のあるセルフスタンドの写真だが、レギュラーガソリンとの価格差はなんとリッター3円しかない(石油情報センターによる当日の全国平均価格はレギュラーガソリンが181.7円/L、軽油が165.5円/L)。ディーゼル車を購入するユーザーは、燃費のよさとともに軽油の安さも期待しているはずだから、この状況の変化は大きいはず。と、新車の紹介記事でこんなふうにネガティブな話ばかりするのもどうかと思うが、気になるところをまずは先に述べてみた。

X-トレイル20GTは直4、2LDOHCコモンレールディーゼルターボを搭載する。エンジン型式はM9Rで、日産とルノーの共同開発。エンジンの製造はルノーのクレオン工場で行なわれ、最高出力は173ps/3750rpm、最大トルクは36.7kgm/2000rpm。V6、3.5Lエンジンなみのトルクを発生するのが最大の特徴だ。そして、最も気になる燃費は10・15モードで15.2km/L、より実用燃費に近いとされるJC08モードで14.2km/Lとなっており、ガソリン仕様の20X・4WD(CVT)の13.6km/L、25X(CVT)の11.6km/L(ともに10・15モード)に比べて燃費は大きくリード。また、軽油は燃料を製造する際のCO2排出量がガソリンよりも46%も少ないという利点もある。価格は消費税込み299万9850円で、装備がほぼ同等のガソリン仕様の25X(CVT)との価格差は46万9350円。この価格差を懸念してなのか、目標販売台数は年間1600台と控えめだ。

ヨーロッパ仕様のフロントマスク

日産最後のディーゼル乗用車はテラノレグラス。3LターボのZD30DDTiを搭載していた。低速トルクが太いディーゼルエンジンはSUVに適しており、X-トレイルにもふさわしい

日産最後のディーゼル乗用車はテラノレグラス。3LターボのZD30DDTiを搭載していた。低速トルクが太いディーゼルエンジンはSUVに適しており、X-トレイルにもふさわしい

ヨーロッパ仕様のフロントマスクになっているのがX-トレイル20GTの特徴。ユーロバンパーの採用により全長は45mm延びて4630mmになるが、全幅1785mm、全高1685mm、最低地上高200mmは変更なし。車重は25X(CVT)の1530kgに対し、20GTは1660kgと130kg重くなっている。もちろん、ガソリン仕様と同じ4WDシステムのオールモード4×4-iを採用し、また、急な下り坂で自動的に低速走行をコントロールしてくれるヒルディセントコントロールを標準装備するなど、X-トレイルらしいタフな走りを実現しているが、インテリアはプレミアム感を強調した内容となっており、防水加工インテリアやポップアップステアリングは採用されていない。シートはスポーティなクロスシートとし、インテリジェントキー&イモビライザーや6スピーカーを標準装備。また、ポップアップステアリングのかわりにチルト&テレスコピックステアリングを採用している。ただし、ラゲッジルームだけはガソリン仕様と同じ防水タイプのウォッシャブルダブルラゲッジを採用している。装備はオーディオ、カーナビ、サイド&カーテンエアバッグがオプションとなるほかはほぼフル装備といっていい内容で、20GT専用装備として、右記装備のほかフロントバンパー組み込みフォグランプ、ラゲッジキッキングプレート、全席3点式シートベルト、後席中央ヘッドレスト、寒冷地仕様(ヒーター付きドアミラー、大型バッテリー)などを用意。ボディカラーは全6色の設定だが、そのすべてにボディの傷がつきにくいスクラッチシールドが採用されているのもトピックだ。

経済性という点では手放しに喜べないディーゼル。でも、確実にCO2は削減できる!

経済性という点では手放しに喜べないディーゼル。でも、確実にCO2は削減できる!

さて、X-トレイル20GTの概要を説明すると以上のようになるわけだが、このクルマにふさわしいユーザー像を考えてみると「高速道路を使った長距離走行を頻繁にする人」が本命だろう。もちろん、それに加えて「MTに乗ることが苦ではない」ことも条件となる。10・15モードが15.2km/Lであることはすでに紹介したが、この燃費は60km/h定地燃費になると23.4km/Lまで伸びる。プリウスの60km/h定地燃費は26.1km/Lだから、ディーゼルの一定速度での燃費のよさがわかるというものだ。ストップ&ゴーの多い都心部ではアイドリングストップができるハイブリッドが有利だが、淡々と長距離を走るならディーゼルの燃費はかなり伸びる。日産の発表では、X-トレイル2.5Lガソリン仕様に対し約14%CO2を削減、また、燃料製造の際の削減分まで含めると約18.5%削減できるとしている(10・15モード換算)。また、燃費のよさだけでなく、太いトルクで運転が楽なのも大きな魅力。高速道路なら6速に入れたままのイージードライブも可能だろう。価格は299万9850円でガソリン仕様の25Xに対し46万9350円高で、20Xに対しては62万6850円高。ただし、経産省が来年度よりクリーンディーゼルの購入補助金制度を計画しており(詳細は次ページ)、また、今年4月1日から自動車取得税の減税(来年9月30日までは1%減、来年10月1日から’10年3月31日までは0.5%減)も始まっているなどのメリットもある。ユーザーにとって、この価格差と燃費のよさ、そして軽油の値段をどう考えるかが重要だが、そのあたりについては下のコラムを参照していただきたい。6速MTのみの設定で登場したX-トレイル20GT。開発サイドは、とにかく早く日本初のクリーンディーゼル車を発売し、今後の道筋をつけたかったとのこと。ATでポスト新長期規制をクリアするのはもう少し時間がかかるということなのだろうが、結果として世界初の座を確かに獲得した。

いきなりギモン解明 なぜ軽油は激しく値上がりしているのか?

でも軽油の高騰ぶりはガソリン以上。大丈夫か、ディーゼル! 軽油高いゾ!!

でも軽油の高騰ぶりはガソリン以上。大丈夫か、ディーゼル! 軽油高いゾ!!

軽油の価格がガソリンに比べて上がっているのは、需要と供給の関係というしかない。ガソリンが世界的に余りつつあるのに対し、軽油の需要は増加。日本で精製した軽油が海外に輸出される量も増えているという。また、「軽油はもともと異様に安かった」(元売り会社広報部)こともあり、同じ価格の値上げでもガソリンより軽油のほうが「値上がり感」が大きいということもある。ただし、ガソリンと軽油の税金差21.7円は変わっていないので、右写真にあるような価格差3円というのは「販売価格は各店舗の経営判断によるが、普通はありえない価格差」(元売り会社広報部)とのこと。

Engine cmmentary エンジン解説

来年秋に施行される排ガス規制「ポスト新長期規制」をクリアしたディーゼルをクリーンディーゼルと呼ぶ。そして、現時点でクリーンディーゼルを名乗れるのはこのX-トレイル20GTだけなのだ。このM9Rエンジンは173/36.7kgmで、ディーゼル2Lクラストップの高出力。0~100km/h加速は9.5秒と、ガソリン仕様の2Lはもちろん2.5Lも上回る速さを発揮する(2.5Lは10.0秒)。高いクリーン性能のカギを握っているのがリーンNOxトラップ触媒(LNT)で、有害物質であるNOx(窒素酸化物)を無害なN2(窒素)とH2O(水)、CO2(二酸化炭素)に浄化。高精度なエンジン制御との組み合わせにより、効率よく作用させる。日産+ルノーの共同開発によってできたエンジンに、日産独自の技術を加え、クリーンディーゼル化しているのである。もちろん、PMを99%以上処理する高性能なDPFも採用している。1600気圧もの超高気圧で燃料を微粒化して噴射するコモンレールシステムに加え、この燃料噴射を最大5回に分割して行なうピエゾ式インジェクターを採用して燃焼音を抑制。また、振動を打ち消し合うバランサーシャフトも使ってディーゼルの弱点である振動、騒音を抑えているのだ。すでにプロトタイプの試乗をしている鈴木直也氏は、「トルク特性がいいから普通に乗っていて力強さを感じる。ガソリンエンジンの2Lはもちろん、2.5Lに比べてもトルキーで、音、振動もベンツE320CDIにもぜんぜん負けないくらいに上質だった。両車の価格差を考えたら立派。アイドリング時は車外では少しディーゼル車独特の音はするけど、車内ではガソリンエンジンとほとんど同じ」と高評価。高速道路での追い越しなどもシフトダウン不要で楽々。ディーゼルには、独特のファンtoドライブがある!

X-トレイル20GTはガソリン車に対し、いつモトがとれるか!?

主要諸元

主要諸元

先号、9/26号で、X-トレイルのディーゼルとガソリン仕様では年間1万km走行の場合、1年間の燃料代にどのくらいの差が出るかをシミュレートしてみた。10・15モードをベースに、レギュラー=184円、軽油=167円で計算してみた結果、ディーゼルは1年間で2Lに対して2万5442円の得、2.5Lに対しては4万8755円の得と出た。確かに燃料代はかなり節約できる。しかし、問題は価格差。先にも述べたように、ガソリン仕様の20Xに対して62万6850円も高く、25Xに対しては46万9350円高い。その価格差を考慮して計算すると、モトをとれるのは、20Xに対しては約24万6400km走行、25Xに対しては約9万6300km走行が必要となるのだ。よほどのヘビーユーザーでないかぎり、この距離は数年では走れない。今後、軽油の値段がさらに上がれば、モトをとるのに必要な距離はさらに増えることになるし、このあたりは実に微妙な問題である。ただし、購入補助金(次ぺージで解説)が実現すれば、話は変わる。経産省の計画どおりいけば、ガソリン仕様のベース車の半額分、つまり、25Xとの価格差の半分である23万円程度安くなるからだ。そうなると、モトをとるための走行距離は、20Xに対しては約15万4000km、25Xに対しては約4万8000kmに減る。これならモトをとるのもかなり楽になるし、現実味も出てくる。この「モトをとる」という考え方はハイブリッドでもかなりシビアで、何万キロも要するのは同じこと。しかし、それをわかったうえで、購入後の燃料代の節約や、何よりもCO2の削減に協力しているという気持ちの充実からプリウスはヒットしている面もあり、いちがいにお金の計算だけですべてが語れるというものでもない。また、ディーゼル独特の太いトルクによる乗り味の気持ちよさもお金では換算できない部分であり、これらはあくまでも参考として考えていただきたい計算なのだ。でも、最近の軽油の価格上昇は気になりますね、やっぱり。

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

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