heartとカクテル short story　　「フリードと三色フォグと、 ドイツの気配を忍ばせた午後。」｜車検・点検・修理のグーネットピット

ピットに滑り込んできたのは、
西海岸が似合いそうなスカシた真っ青なフリード。

リアシートの段ボールには、
白・黄・青の三色に切り替えられるフォグ。
そして――


HELLA製のホーン。

国産の“軽い感じ”とは、どこか違う。
控えめなのに、印象に残る音。
たとえるなら、
ドイツ製ジャケットのような品の良さ。

heartはホーンを手に取りながら、
ほんの少しだけ口角を上げる。

「音色に品があると、
　マナーまで良く聞こえる。」

もちろんそんなセリフは、
口にはしない。

ただ黙々とフロントバンパーを外していく。

配線を、ホーンを、フォグを、
静かに、丁寧に仕込んでいく。

最後のカチッというスイッチ音とともに、
フロントマスクがわずかに表情を変えた。

白→黄→青。
どの色も正解じゃないけど、
どれもその人なりの「今」かもしれない。

そしてその先に響く、ちょっと品のあるドイツの音色が、
この日のフリードに、
最後の句読点を打った。

品は見せびらかすものじゃない。

気づく人にだけ、伝わればいい。

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