新車試乗レポート
更新日:2022.03.26 / 掲載日:2022.03.23

新型アウトランダー公道試乗インプレッション

進化したプラグインへ!

昨年10月28日の先行受注開始から今年2月5日までに
約3か月で1万台超受注となった新型アウトランダー。
約8割が新規顧客というから驚きだ。
そしていよいよ公道を走ることができた。
その実力は!?

●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之

MITSUBISHI 新型アウトランダー 公道試乗インプレッション

MITSUBISHI 新型アウトランダー

●車両本体価格:462万1100〜532万700円
●発売日:’21年12月16日
●販売店:三菱全店

■試乗グレード:P(7人乗り)
■車両本体価格:532万700円
■ボディカラー:ホワイトダイヤモンド×ブラックマイカ
[試乗グレード主要諸元]●全長×全幅×全高(㎜):4710×1860×1745 ●ホイールベース(㎜):2705 ●最低地上高(㎜):200 ●車両重量(㎏):2110 ●パワーユニット:2359㏄直列4気筒DOHC(98kW[133PS]/195N・m[19.9㎏・m]+フロントモーター(85kW/255N・m)+リヤモーター(100KW/195N・m) ●WLTCモード総合燃費:16.2㎞/ℓ ●使用燃料・タンク容量(ℓ):レギュラー・56 ●タイヤサイズ:255/45R20

重量級電動SUVとは思えない、軽やかな走り

ガソリン車からの乗り換えでも
違和感のない運転フィール


 純電動駆動と前後独立駆動のメリットを最大限に活かした駆動制御。電動4WDの可能性を具現化したモデル。それは間違いないのだが、出来る事が増えるほどに按配を付けるセンスが問われる。そこが新型アウトランダー(PHEV)の要点のひとつだ。

 電動はタイムラグなしで正確に要求トルクを発生。そのままではコントロールが神経質になりやすい。そこでしゃくるようなトルク変動やドライバーに予兆感をもたせる過渡特性の設定が必要になる。その味付けもアウトランダー(PHEV)の特徴のひとつ。

 ゆるゆると発進するもダッシュを利かせるも状況に求められるとおりのコントロール性。ガソリン車から乗り換えても違和感なく、電動は力強いと意識させるドライブフィールを生み出している。

 興味深いのは乗り味だ。新型の車重は従来型から200kg近く増加しているのだが、運転した印象では新型のほうが軽量に思えた。悪く言えば余韻のある挙動など車格を感じさせる重質な味わいが減少したとも言えるのだが、据わりや収束感での軽量のデメリットは感じられず、車軸周りの揺動感の少なさなど、総合的な走りの質感はレベルアップしていた。

 ちなみにこの味付けは意図して設計されたものとのこと。ガソリン車からの乗り換えユーザーの違和感を減少させ、PHEVからなら運転感覚を一層気軽なものとしてくれる。実際に車体寸法はほぼ同じなのに、一般用途での運転感覚は一回りコンパクトになったように錯覚してしまうほど。重量やサイズを意識させないのは運転ストレス減の要点。実用性能も高く、電動の魅力をさらに昇華させた新型アウトランダー、注目の一台だ。

PHEVのみの構成になったが
3列シート仕様が設定された


 SUVの中でもキャビンスペースや走行性能、車体寸法の面からファミリー&レジャー用途適性が高いのがミドルSUV。アウトランダーはミドルSUVの基本に合致したモデルとして誕生し、その基本コンセプトは新型にも継承されている。

 PHEVは先代から採用され、先代後期モデルではエンジンを2・4ℓに換装し、電動系のパワーアップを施している。このシステムはエクリプスクロスPHEVにも採用されているが、新型アウトランダー(PHEV)が採用するシステムはさらに進化。バッテリーも含めて電動系を一新。シリーズ式を基本に高速巡航専用のエンジン直動機構による部分的にパラレル式を併用するハイブリッドシステムや普通と急速に対応した充電などの基本構成は従来型と共通だが、電動系の大幅ポテンシャルアップが施されている。

 中でも注目すべきは駆動モーターだ。前輪駆動用に85‌kW、後輪駆動用に100‌kWを採用。総合最高出力ではエクリプスクロスPHEVを55‌kWも上回っている。また、後輪駆動が大出力なのも特徴。例えばRAV4PHVの前後の出力比は前77/後23だが、アウトランダーPHEVは前46/後54。後輪の駆動力は悪路踏破性でも重要だが、駆動力配分で操安性を向上するS-AWCの性能アップの要点のひとつにもなっている。

 実用面のアピールポイントはPHEVと3列シートのコンビ。PHEVのみの車種構成となったため、ガソリン車とともに整理された3列シート仕様をPHEVでカバーする形だ。乗車定員は実用性に大きく影響するだけに3列シート仕様の設定はアウトランダーにとって重要だ。サードシートはレッグスペースもヘッドルームも成人男性には狭すぎ、乗降も窮屈だが、SUVのサードシートの多くは多少の違いはあっても緊急用以上の実用性はない。従来型で3列シートの必要性からガソリン車を選んでいたユーザーにとって大きな進歩と言えよう。

 また、安全&運転システムはe-アシストに加えて三菱版プロパイロットとも言えるマイパイロットを採用しバージョンアップ。全車速型ACCやライン制御LKA、BSM、移動物検知機能付全周モニターなどが全車に標準装着。

 9インチDAシステムを全車に採用するとともに車載ITのミツビシコネクトをMにOP、上級グレードに標準とするなどIT&インフォテインメント系も最新モデルに相応となり、プレミアムと先進性の両面でSUVの最上級クラス相応としている。

走行性能にグレード間格差が
ないのが優れたポイント


 高い動力性能とプレミアムに相応な洗練の両立でも純電動駆動は有利。その点で新型アウトランダーが如何に巧みに制御されているかは冒頭で述べたとおりだが、PHEVシステムの真価はS-AWCとの相性のよさ。と言うよりもS-AWCに最適化したシステムと理解してもいいだろう。

 オンロードに於けるS-AWCの実力は生産プロトタイプのサーキット試乗で実証済み。2t級のSUVには不似合いなほどの限界コーナリング、オーバースピードでのコーナーへの進入等々を試してみたが、コーナリング限界速度を超えれば速度超過分だけラインが孕むが、方向性の乱れは少ない。深めのスリップアングルでも浅いアングルの4輪ドリフト状態でも、最適な姿勢を維持してくれる。自転速度(回頭)と公転速度(ライン変化)を一致させてくれるので、修正操舵や加減速操作もさほど神経質にならず、普段の運転の延長上で済む。ドリフト自慢のスポーツカーにも劣らない走りである。

 ASC(横滑り防止装置)オンでも確かなコントロール性を維持できる領域では滑らせ気味のコーナリングまで減速介入を行わないが、あからさまな速度超過では安定性確保のために自動減速。ASCオフならば派手にドリフトもさせられるし、ドライビングスタイルや路面環境に応じて4WD制御モードを選べるのも魅力だ。

 また、今回の試乗ではダートトライアルコースが含まれていたが、ここでもS-AWCが効果を発揮する。クロカンコースに比べればフラットだが、速度を乗せた段差通過等で跳ね上げられることもままある。しかも路面の走行抵抗は大きく、頻繁に加減速もする。各輪の接地荷重が大きく変動する。直線スピンもあり得る状況だが、新型アウトランダーは確かな方向性を維持し続ける。一般ユーザーがこのような状況で走り続けることはないだろうが、不意の段差通過で方向性を乱さないのは悪路走行の信頼感を大いに高める。

 しかも、走行性能にグレード間格差はない。e-アシストとマイパイロット、マルチアラウンドモニターも全車標準装着。高速や山岳路から氷雪上、ラフ&オフロードなどSUVが使われる状況での安心と信頼がアウトランダー(PHEV)の基本なのだ。

 従ってグレード選びの基本はシート仕様や内装、利便快適装備が中心。ベーシックのMでも一般上級グレード相応の装備を備えるが、2列と3列の両シート仕様が設定されているGを基準に選び分けるのが賢明。価格のハードルは高いが納得の内容である。

エクステリア

左右に配置されたヘッドランプは、縦に並び上の2つをロービーム、下をハイビームとしている。ランプ類はすべてLEDを採用している。
フロントマスク上部には薄型のデイタイムランニングランプとターンランプを配置。Mグレードを除きターンランプはシーケンシャルタイプを採用。
存在感のあるシルバーカラーのルーフレールを全グレードにメーカーオプションとして設定。一体感の高いデザインとなっている。
Mグレードは18インチ。その他のグレードは20インチホイールを採用。20インチアルミホイールは2トーン切削光輝仕上げとなっている。

●ボディカラー

★は13万2000円高、☆は7万7000円高。

インテリア

極めて乗用車ライクな水平基調のインパネデザインを採用した。これは走行時に車体姿勢の変化がつかみやすいため。ステッチやトリムなど高級感あふれる設えとなっている。
三菱自動車初の12.3インチ全画面フルカラー液晶メーターを全グレードに装備。メーター専用のスピーカーを車室内に配置し、今までにない独特の効果音で表現。
フルカラーメーターのクラシックモード。アナログによる認知性と立体的な文字盤と加飾付き指針で高級感を演出している。左がパワー、右が速度計。
9インチのWVGAディスプレイを採用したスマートフォン連携ナビゲーションを全グレードに標準装備。Android Auto、Apple CarPlayに対応。
9個のスピーカーから構成されるBOSEサウンドシステムをPグレードに標準装備。Gグレードにメーカーオプション設定。ラゲッジにサブウーファーを設置。
エレクトリックテールゲートをMグレードにメーカーオプション。その他に標準装備。つま先をバンパー下にかざすだけで開閉できるセンサー付き。
920㎜×702㎜の大開口電動パノラマサンルーフをGグレード以上にメーカーオプション設定。支柱の幅が130㎜と狭く、開放感はかなり高い。

●シートカラー/素材

メカニズム&装備

三菱車初の試みとして運転席のエアバッグモジュール自体をマスにしたダイナミックダンパーを装着。剛性向上と不快な振動を排除した。
サスペンションには三菱自動車初のアルミ製前後ナックルを採用。フロントはマクファーソンストラット式、リヤはマルチリンク式となる。
PHEVコンポーネントは完全にリニューアルされ、フロントモーターは60kWから85kW、リヤモーターは70kWから100kWへそれぞれパワーアップ。
PHEVの充電コネクターには、充電の可否や充電状態がひと目で分かるインジケーターを装備しているので安心。利便性を高めている。
発電用エンジンは先代後期モデルから採用された2.4ℓエンジンに改良を加え継続採用。低回転から効率の良い発電を可能にして静粛性も高めた。
3つの走行モードの1つ「EV走行モード」。EV走行の頻度を高めるプライオリティモードも設定され、スイッチにより選択が可能になっている。
エンジンで発電し、駆動用バッテリーに充電しながらモーターで走る「シリーズ走行モード」。走行状況や電池残量に応じて最適なモードに自動切り替え。
「パラレル走行モード」はエンジンの動力で走行し、モーターがアシストする。前述のEVモードはシフト横のスイッチで4つのモードを選択可能。
家庭のコンセントと同じ100VのAC電源(1500W)を駆動用バッテリーから取り出すことができる。災害緊急時だけでなく、アウトドアレジャーでも活躍。
100Vコンセントはラゲッジルームのほか、フロアコンソールボックスからも取り出し可能。クルマと住まいを繋ぐV2Hは最大約12日分にUP。
セレクターレバーや走行モード/EVモードスイッチは整然とレイアウトされており、直感的に使える配置。間隔が広いので余裕を持って操作できる。
路面状況や運転スタイルに最適化した車両運動特性を選択できる7つのドライブモードを設定。向かって左が運転スタイル、右が路面状況で選択できる。

●新型アウトランダー 主要諸元&装備

おすすめグレード

走行性能などにグレード間格差がないため、グレード選びは乗車定員や快適装備などのチョイスがメインとなる。2列5人/3列7人乗りの両方が選べる「G」グレードを軸に考えよう。

2/3列シートを用意する中間グレードの「G」

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内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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