新車試乗レポート
更新日:2021.06.16 / 掲載日:2021.06.15
【試乗レポート 日産 ノート オーラ】乗れば納得、ワンランク上の世界

日産 ノート オーラ
文と写真●ユニット・コンパス
クルマの格は大きさだけじゃ決まらない。日産から新しく登場したノート オーラ(以下、オーラ)のことだ。モーター走行ならではの静かさ、力強さに加えて、ステアリングの手応えにもクルマ好きの心をくすぐる上質さを感じて、思わず頬が緩んだ。
ノート オーラの開発コンセプト

ノートと並ぶとノート オーラのデザイン的な違いがよくわかる
オーラはどういうクルマなのか。ひと言で表せば、オーラはノートの上級モデルである。だが、日産開発陣の話を聞いていると、単純にそういう話でもない。
そもそもノートは日産のコンパクトカー群のなかで、ちょっとユニークな立ち位置にあった。当時、日産の世界戦略車として開発され、2005年に登場した初代(E11型)は、小さな車体に広々とした室内、そして従来の小型車の枠を超えた爽快な走りを実現していた。次に登場した2代目(E12型)は、初代のコンセプトを継承しながらさらにその実力を高め、2016年のe-POWER投入で大ヒットモデルとなったのは記憶に新しいだろう。その2代目に上級グレードとして存在していたのが、ノート メダリストであった。このモデルの投入には、日本で販売を終了したティーダのユーザーをカバーする意味もあったという。
では、オーラはメダリストの後継車なのか。日産によれば、YesでありNoでもあるという。その理由は、オーラを、単なるノートの上級グレードではなく、別のブランドとして捉えているから。ノートのターゲットがコンパクトカーおよび軽自動車ユーザーであるのに対して、オーラがねらうのはセダンからのダウンサイザーや輸入車検討者。つまり、ボディサイズこそコンパクトだが、本質は上質なプレミアムカーだというのがノート オーラのコンセプトだ。
ノート オーラの専用装備と室内に座った印象

ノート オーラのインテリア
ノートとオーラの違いは、内外装のデザインと走りのゆとりにある。
エクステリアで専用となるのが、ヘッドライト&テールライト、バンパーデザイン、ボディ(ワイド化)、ホイールデザイン。インテリアでは、12.3インチのフルTFTメーター、本革ステアリング、加飾パネル、イルミネーション、シート表皮、そしてBOSEによるサウンドシステムも用意される。
ベースとなったノートもフロントマスクの品質感が高かったが、オーラはさらに一歩上をいく印象。ボディのサイドパネルがワイド化されたことで、足まわりがしっかりとした印象になり迫力が増している。日常の足となるコンパクトカーは5ナンバーが好まれていたが、あえて横幅を広げたことで路上での存在感は確実に大きくなっている。
ドアを開けてシートに腰掛けるとノートとの違いは明らか。まずシートの座り心地が違う。聞けば、シート表皮がこれまで高級車にしか採用しなかった3層構造になっているのだとか。もともとノートのシートはホールド性と快適さのバランスが高かったが、オーラのフワッとした座り心地には車格の違いを感じることができた。取材車両は、ダッシュボード上面がツイード柄の表皮にオープンポア木目加飾のパネルという組み合わせ。従来の木目調パネルに比べてより本物感が高く、抑えられた艶も上品だ。
ノートに対する全方位的なゆとりと静けさがオーラの価値

パワーアップによるゆとりに加え、静粛性の高さもノートよりさらに一段上
試乗コースの舞台となったのは日産のテストコース「GRANDRIVE」で、一般道を再現した一周約4kmのコースをドライブモードを切り替えながら数周テストすることとなった。
この日は、2WD仕様(Gレザーエディション)と4WD仕様(G FOURレザーエディション)を乗り比べることができたが、いずれにも共通していたのが静かで力強い走り。ノートから出力を18%(85kWから100kW)、トルクを7%アップ(280Nmから300Nm)しており、とくに中間加速が力強くなった。たとえば一定速度で走っていて、さらに加速が必要になったとき、高速道路での合流などのシーンで違いが感じられるはずだ。もっとわかりやすい違いが車内の静粛性で、高速走行時のゴーという音が聞こえにくくなっていて車内での会話がしやすい。フロントサイドガラスに採用したラミネートガラスのおかげだろう。ガラスからの透過音は当然耳に近いため、違いがわかりやすい。まるでうっすらと開けていたドアをしっかりと閉めたときのような、外界との遮断された感じは、たしかに高級車に近い。
2WDと4WDの違いもレポートしよう。2WDは、すっきりとした爽やかなステアリングフィールが好印象。対する4WDは、リヤモーターを積極的に使うことで姿勢を積極的に制御し、安定感とタイヤの性能を引き出してくれる電動化ならではの走りに魅力がある。とくに加減速時に同乗者の頭が揺すられにくいのもいい。なので、予算が許すならば降雪地域でなくても4WDを選ぶ意味がある。
ボディサイズと車格がイコールではない時代のプレミアムカー

オーラは小さくてもプレミアムな存在だ
そんなオーラの価格は、261万300円から295万7900円。内外装の品質感、LEDヘッドライト&テールランプ、12.3インチモニター、17インチホイールといった多くの標準装備、そしてパワーと静粛性が高いことを考えれば、ノートとの40万円ほどの価格差も納得はできる。ただ、そこへさらにプロパイロットなどのメーカーオプションを装着することを考えると、最終的な支払い金額はそれなりになる。そういう意味でも、オーラは小さなプレミアムカーなのだ。
日産の販売店を対象にした試乗会で、販売会社の重役が、いまの高級セダンからオーラに乗り換えてもいいなともらしたというが、その感想は共感できる。車体の大きな高級車は、快適だが疲れているときなどふと鬱陶しく感じるときもあるからだ。その点、オーラならコンパクトカー的な小まわりと高級車につながる快適性が両立されている。日産は、ティアナやスカイライン、フーガといった上級セダンのオーナーたちの乗り換えを期待しているというが、乗ってもらうことができれば、確かにオーラを選択するユーザーもいるだろう。「ボディサイズ=車格」といった価値観から自由になれば、クルマ選びはもっと楽しくなるはずだ。
日産 ノート オーラ Gレザーエディション(電気式CVT)
■全長×全幅×全高:4045×1735×1525mm
■ホイールベース:2580mm
■車両重量:1260kg
■エンジン:直4DOHC
■総排気量:1198cc
■モーター最高出力:136ps/3183-8500rpm
■モーター最大トルク:30.6kgm/0-3183rpm
■サスペンション前/後:ストラット/トーションビーム
■ブレーキ前/後:Vディスク/ディスク
■タイヤ前後:205/50R17
■新車価格帯:261万300円-295万7900円(ノート オーラ全グレード)