新車試乗レポート
更新日:2021.05.26 / 掲載日:2021.04.01
HONDA「S660 Modulo X Version Z」サーキットインプレッション
世界唯一の軽ミッドシップスポーツ、ホンダS660が2022年3月を以て生産終了となることが発表された。なんとも残念ではあるが、そのファイナルバージョンとしてS660 Modulo Xに数々の専用装備を追加した「Version Z」が登場。そのサーキット走行の模様をお届けしよう。

【S660 Modulo X Version Z】●価格:315万400円(6速MTのみ)

モデューロXがベースとなっているので、ロールトップのカラーはボルドーレッドになる。
ベースとなったモデューロXに対し、モデューロXバージョンZはモデューロXの6速MTと比較すると価格は10万7800円高。

モデューロXバージョンZ専用ボディカラーとしてソニックグレー・パールを設定。シビックハッチバックに設定されているボディカラーだが、ミニマムボディのS660がまとうと凝縮感が凄い。
今、ホンダが目指す走りの神髄を実感

NSXの初試乗での印象はS660の兄貴分だった。走りの根っ子あるいはハンドリングの哲学に共通性を見出せた。とはいえS660にはオープン2シーターのコミューターの側面もあり、純スポーツカーとしてみれば些か中途半端な印象もある。そこでモデューロXである。少々大袈裟な表現かもしれないが、ホンダアクセスの手により磨き込まれた空力やホイールの弾性も含めたサスチューニングによりS660はマイクロNSXというべき領域に至る。
試乗したモデューロXバージョンZは来年3月の生産終了が決定したS660モデューロX最後の特別仕様として登場。カタログ設定のモデューロXとの違いはカーボン調加飾部の増加と車体色設定/ホイールカラー/エンブレムを専用とした内外装。空力やサス/ブレーキのカスタマイズはモデューロXに準じている。この試乗ではノーマル(α)/用品装着車(αベース)/モデューロXバージョンZを乗り比べることができた。その大雑把な印象が冒頭である。
ノーマル仕様はタイトターンから高速飛び込みコーナーまで弱アンダーステアでまとめる優等生だが、コーナリング中のフロントの押さえがあまく、量的には少ないが煽られるように上下動する。それに合わせて車体方向も微妙に揺らぐ。危険な兆候はないのだが、身のこなしに締まりが欲しくなる。
用品フルアーマー仕様になるとノーマル仕様が抑えきれなかった揺らぎがなくなり、挙動が安定すればラインもぴたりと収まり、修正操舵もほとんどなし。同じ速度で進入すれば、コーナリング中の余裕は高く、さらに高い速度で進入しても捌きやすくなったお陰で安心感は高い。
ちなみに外装/サス周り/ホイールまでセットで開発されているので一部の変更ではバランスが今ひとつ。まとめて導入できないのなら外装(空力)関係を優先するのがいい、とは開発陣の言。以前体験しているだけに納得だ。
モデューロXバージョンZはフロントもリヤもダウンフォース増。挙動やハンドリング特性は用品装着仕様に似ているが、進入速度もコーナリング速度も高くなっている。高速からブレーキを残しながらのターンインも不安感皆無。パワーのほうは同じなので、コーナリング性能が向上した分だけ非力感が増してしまうのは難点だが、上級スポーツの安定性と軽量車の収束性のよさが見事に両立されている。今、ホンダが目指す走りの神髄を実感できるのがバージョンZなのである。
ノーマルのモデューロXはブラックスパッタリング仕上げだが、バージョンZはステルスブラックに。
モデューロXではボディ同色の専用アクティブスポイラーがブラック塗装になる。
HマークやS660/モデューロXのエンブレムをブラッククローム調に変更。

アルカンターラの本革巻きステアリングやチタン製シフトノブもモデューロXと同様。

本革×ラックス スェードのスポーツレザーシートを採用。ボルドーレッド×ブラックの組み合わせ。
ドアライニングパネルを変更。(ラックス スェード<ブラック>×合皮製<ボルドーレッド>×グレーステッチ)の組み合わせ。
取り外し可能な専用シートセンターバッグ(Modulo Xロゴ付)も特別装備されている。
アームレスト後方に専用Version Zロゴ入りアルミ製コンソールプレートが貼られる。
バージョンZ専用で、インテリアパネル メーターバイザーパネル部/インテリアパネル 助手席エアアウトレットパネル部/インテリアパネルセンターコンソールパネル部がカーボン調パネルとなっている。