新車試乗レポート
更新日:2020.10.22 / 掲載日:2020.10.22
最新クーペSUVの魅力を 深掘りCHECK!! VOLKSWAGEN T-Roc
SUVクラスが盛り上がりを見せているのは、日本だけではなく世界的な潮流。魅力的で、刺激的なモデルは輸入ブランドからも続々登場している。今回はその中でも大注目な、Tロックの魅力について、改めて確認していこう。
ゴルフなどVW車の良さはそのままに スペシャリティを堪能できるモデルだ

フォルクスワーゲン Tロック【ニューモデル】
●発売日:7月15日●価格:384万9000~453万9000円主要諸元(TDI スタイル デザインパッケージ)●全長×全幅×全高:4240×1825×1590mm●ホイールベース:2590mm●車両重量:1430kg●駆動方式:FF●パワートレーン:1968cc 直4DOHCディーゼルターボ(150PS/34.7kg・m)●トランスミッション:7AT(DSG)●WLTCモード燃費:18.6km/L●最小回転半径(m):5.0●タイヤサイズ:215/55R17
手の届きやすい輸入プレミアムSUVだ
VW車は基本カテゴリーの基準器に例えられることが多い。つまりカテゴリーを支える基本適応用途とクルマのセオリーにとても忠実なのだ。もちろん良いことなのだが、優等生すぎる傾向もある。そんなVWの真面目さから抜け出した新趣向のモデルがTロックである。 コンパクトSUVとしては先に、ポロと同系プラットフォームから発展したTクロスがあるが、その上位車種に位置付けられている。ポロとゴルフの関係を当てはめてもいいが、SUVをモチーフにプレミアム&スペシャリティ志向で発展させたゴルフのバリエーションと考えると分かりやすいだろう。 内外装のデザインセンスも従来までのVW車とひと味違った遊び心を感じさせるが、プレミアム&スペシャリティなキャラを与えながらも、実用性への配慮という真面目さもある。車外見晴らしのいいサイドウインドウ形状もあり、後席はゴルフよりも寛げる。レジャー用途を考えるともう少し荷室容量が欲しいが、実用性を追求したモデルでもないので必要十分である。駆動方式はTクロス同様にFFのみの設定。ちょっと走れば急峻な山岳路が多く、冬期の降雪の可能性がある地域も多い日本では4WDのラインナップが望まれるところだが、欧州系コンパクトSUVではFF専用車は珍しくない。高い悪路踏破性を求めるならティグアンを選ぶ手もある。 そのせいかTロックの走りはかなり高速ツアラー寄りの味付け。高い重心を硬さで抑え込むという側面もあるのだろうが、感覚的にはゴルフより締まった印象。揺らぎなく路面を捉えた後輪を軸に舵角通りに切れ込んでいく緩みないラインコントロール性など、VW車らしい操縦感覚を示した。路面凹凸による車軸周りの振動がちょっと気になったが、VW流で言えば「GT」系にも似たフットワークである。 搭載エンジンは全仕様ともにディーゼルを採用している。実用域の力強さは言うまでもなく、ひと昔前のダウンサイジングターボと比較すると高回転域まで軽々と回る。歯切れ良く変速する7速DCTもあってスポーティドライブも楽しめる。ツーリング&スポーティの両面でVW味がしっかり活かされていた。 つまり、ゴルフを気に入っているドライバーならそのまま受け入れられるのがTロックの走り。もっと言えばゴルフを乗り継いできたけど、ゴルフのよさを失わずにちょっと目先を変えたい、というユーザーにももってこいの一車である。なお、ゴルフTDIハイラインマイスターとTロック・スポーツの価格差は約22万円。言い方を換えるなら輸入プレミアムコンパクトの上級グレードの予算で手が届く。この同カテゴリーからの購入を考えているなら候補車に加えるべきモデルである。
キャビンを小さく見せる、クーペライクなエクステリアデザイン。サイドラインをリヤに向け切り上げていくなど、流麗さも併せもったスタイリングが特徴となっている。
フォルクスワーゲンSUVとして初めて、2トーンカラーを採用。9色のボディカラーがあり、グレード別でブラックかホワイトのルーフを組み合わせられる。
ホイールサイズは4グレードすべて異なり、TDI スタイルは215/60R16、TDI スタイル デザインパッケージ(左)は215/55R17、TDI スポーツ(中央)は215/50R18、TDI Rライン(右)は225/40R19となる。
ガソリンモデルの設定はなく、全車ディーゼルターボ。高速ツアラーに向いた走りと相まって、長距離ドライブも楽々だ。トランスミッションは7速のDSG。
インテリアもモダンな印象。カーナビやオーディオ、コネクテッド機能を有するインフォテイメントシステムや、デジタルメータークラスターを全車に標準装備。完全停止まで自動追従するACCも全車に標準。
TDI スタイル デザインパッケージ(上)では、ラヴェンナブルーメタリックかターメリックイエローメタリックのボディカラーを選ぶと、インテリアも同色系にコーディネートされる。TDI Rライン(下)は専用ファブリックシートとなり前席はスポーツタイプに。
荷室の容量は445L。後席を格納すれば1290Lになる。パワーテールゲートはTDI スタイル デザインパッケージ以上のグレードに標準装備。
●文:川島茂夫 ●写真:フォルクスワーゲン グループ ジャパン