新車試乗レポート
更新日:2019.05.23 / 掲載日:2019.05.17
新型RAV4試乗インプレッション[オフロード]

春から初夏に向かうこれからはキャンプや林道ツーリング、アウトドアスポーツが楽しい時期。どんな場所にでも気軽に行けるSUVが活躍するシーンだ。ここでは小石が多いラフロードと少し険しい林道などで遭遇しやすいえぐれた凸凹路面を想定してテストドライブを行った。
RAV4 Adventure (4WD)

●車両本体価格:313万7400円 ●ボディカラー:アッシュグレーメタリック× グレーメタリック(※有料色5万4000円高)
モーグル路ではトルクベクタリングAWDがその実力を発揮。ブレーキ制御によるトルク伝達だと浮いたタイヤの空転が起こりがちだが、スムーズな駆動力伝達で難なく脱出できた。
雪道やぬかるんだ下り坂の不安解消に効果的なのがダウンヒルアシストコントロール。
スイッチひとつで降坂時の車速を一定の低速にキープ。
4WD機構3種に共通採用されているのがAIMと呼ばれるシステム。駆動力、4WD、ブレーキ、ステアリングを最適に統合制御することで自然なドライブフィールを生み出している。
RAV4 X (4WD)

●車両本体価格:283万5000円 ●ボディカラー:ホワイトパールクリスタルシャイン※有料色3万2400円高)
比較テストした3種類の4WDシステム

注目はガソリン車に搭載される「ダイナミックトルクベクタリングAWD」だ。前後トルク配分に加え、後輪トルクを左右完全独立制御可能(0:100~100:0)。また4WD走行不要な時は、後輪に動力を伝える駆動系を切り離せる「ディスコネクト機構」も採用されている。
【テスター山本シンヤ】素晴らしい走り! 好みで選べる4WDシステム

新型RAV4はFFも用意されるがメインは4WDだ。佐伯チーフエンジニアは「RAV4の『4』は四駆の意味。新型は徹底してこだわりました」と語る。その自信の表れなのか、新型試乗は今回の4月の富士山近郊での舗装路とダート、また先立って3月初めに厳寒期の北海道で雪道も走ることができた。
新型RAV4の4WDシステムは3種類ある。ガソリン車には電子制御カップリングで前後駆動力配分を制御するダイナミックトルクコントロール4WDと前後駆動力配分に加えて後輪左右トルクを独立制御するダイナミックトルクベクタリングAWDを設定。ハイブリッドはリヤアクスルに駆動用モーターを搭載し、前後独立で駆動力を発生するE-Four方式だ。しかも、制御の緻密化と後輪用モーターの出力向上で前後トルク配分を100:0~20:80まで可能にした新型を採用している。
その走りは三者三様。ダイナミックトルクコントロール4WDは予想しやすい動きと安定感が魅力的。ダイナミックトルクベクタリングAWDはトルクベクタリングの効果でノーズがグイグイと入る上に、前者と比べると無駄な姿勢変化も少ないので安心感は上。しかも、ドライバーがアクションを起こせば高性能ラリー車のようなゼロカウンター走行も可能だ。キビキビとした気持ちいい走りに、目線の高いセリカGT-FOURと呼びたくなったくらいだ。
新型E-Fourは後輪トルクが大きく、大きなアクションを与えれば最もFRらしい感覚を味わえるものの、基本的にはダイナミックトルクベクタリングAWDのようにグイグイ曲がる……と言うよりも、安定性と旋回性をバランスよく両立させた味付けである。
更に「マルチテレインセレクト(ガソリン)」や「ヒルディセントコントロール(ガソリン)」、「TRAILモード(ハイブリッド)」となどの制御デバイスを活用すれば、ダウンヒルやモーグルといった本格的な悪路でも誰でも、楽に、安心して走らせることも可能だ。
【テスター川島茂夫】踏破性能や旋回性能が秀逸な新型4WDシステム

ダイナミックトルクベクタリングAWD(以後DTVと略)のオンロードでのトルク分配制御が興味深い。軽い登坂や加速など負荷がちょっと大きくなると後輪にトルク伝達するが、少しでも舵を入れると内輪側へのトルク伝達をカットする。直進ではソリッドアクスルの優れた据わり、旋回ではトルクベクタリングのスムーズな回頭性とライントレース性が融合される。ハイブリッドのE-Four以上に据わりのいい操安性である。
こういった特性はダート路での限界コーナリングでも威力を発揮する。減速からの回頭では従来4WDシステムと大きな違いはなくスムーズに回り込む。そこからやや強引にアクセルを開けていくと従来システムではオーバーステアに移行しVSCで抑え込む。ところがDTVでは適度な後輪トラクションと回頭性の維持により、カウンターステア無しの弱アンダーステア気味4輪スライドでコーナリングラインを維持。姿勢や舵角の乱れがないので、その状態からの減速も容易である。回避性や修正に長けた4WDシステムなのだ。
ただし、これはDTVの効能のオマケと考えるべきだろう。本領は悪路踏破性だ。悪路踏破性の検証では急登降坂とモーグル路が用意されていた。登降坂はできて当たり前のレベル。ヒルディセントの利きも良好である。新型の威力が発揮されるのはモーグル路だ。
4WDモードをロック&ダートに設定。登り調子のところで停車して発進を試みる。従来型4WDはホイールスピンを経て踏破。他走行モードでは発進できず、またスタック状態からロック&ダートに切り換えてもダメ。ロック&ダート以外のモードではDTVも発進できないのだが、その状況からロック&ダートに切り換えれば苦もなく走り出す。もちろん、初めから選択していればなお容易。機構的にセンターデフロックに近いので踏破性が高いのも納得だが、トルク分配などの電子制御との相性のよさもあり踏破性は本格クロカン車に比肩するほどだ。