新車試乗レポート
更新日:2019.05.22 / 掲載日:2019.02.20
【海外試乗レポート・ポルシェ 911】今度の911は雨でも安心。抜群の安定性を実感!

文●九島辰也 写真●ポルシェ
8世代目のポルシェ911が誕生した。といってもまだ日本へのデリバリーが始まったわけではないので、実感は薄い。ただ、今回LAオートショー前日のワールドプレミアや1月後半のスペインでの国際試乗会に参加したことで、その印象はお伝えすることはできる。自身歴代911を所有してきたこともあり、どちらの機会もプライベート目線でも興味を注いだ。
まずはカレラSとカレラ4Sからリリース

発表されたのはカレラSとカレラ4Sの2台である。おもしろいことにこの時点でスタンダードのカレラはまだお披露目されていない。2台の次はカブリオレが順番を待っていそうだ。というのも、スペインでのプレゼンテーション会場にそれが置いてあったからである。
ワイドボディが標準となりトレッド幅が拡大された

それはともかく、新型はボディサイズがひとつとなり、いわゆるワイドボディがデフォルトとなった。要するにRWDもAWDと同じアクスル幅である。また、それと同時に駆動方式に関わらずフロントアクスル幅も45mm従来車より拡幅されている。これにより安定性が高められたのは言わずもがなだ。
新型は前後のホイールサイズが異なっているのもポイント。試乗車はフロントが20インチ、リヤが21インチ。この辺はそのまま走りに直結しそうだし、後方からの眺めがより力強くなったメリットもある。
エンジンは従来モデルよりも30馬力アップ

ではパワートレーンに話を写そう。
エンジンは3L水平対向6気筒ターボを搭載する。新採用のピエゾインジェクションバルブや新設計のインタークーリングを搭載し、さらに最新の微粒子フィルターで排ガス対策も進化させている。最高出力は450馬力。991型カレラSより30馬力アップで、現行GTSと同じになる。トランスミッションはおなじみのPDK。タイプ991では7速だったものが8速へ多段化された。しかもギヤレシオはすべて変えたというから手が込んでいる。
ドライブモードに「ウェット」が追加された

といった内容を踏まえてのロードインプレッションだが、今回は通常の街中、高速道路、ワインディングのほかに、サーキット走行が含まれていた。場所はバレンシア近郊のリカルド・トルモ・サーキット。一周4kmちょっとの本格的なコースだ。
と、その前に用意されたのはウェットコースでのプログラム。サーキット内のカートコースに水を撒いたもので、そこで新型911のウェット性能を試す。その理由は今回そこがフューチャーされたから。ドライブモードの「ウェット」が新生911のウリとなる。
その効能はフロント側ホイールハウス内に仕込まれた音響センサーから始まる。それが路面がウェット状態であることを感知すると、ドライバーにインジケーターでウェットモードに入れることを促す。ただしこの時点ですでにPSM(ポルシェ・スタビリティ・マネージメント)とPTM(ポルシェ・トラクション・マネージメント)システムがあらかじめ調整を開始する。そしてウェットモードを作動させると、これらのデバイスと各システムが連携され、最大限の安定性を実現するというものだ。アクセルレスポンス、シフトアップ&ダウンのタイミング、リヤスポイラーの稼働速度も同調する。
実際、ウェット路面でこれを効かせると、クルマが恐ろしく安定した。目で見る路面のイメージ以上にちゃんと走っていることに驚くほどだ。ステアリングを切った方向とは逆にズズズッと滑ったり、リヤタイヤがアウト側から前に出てクルマを真横にすることはない。試乗車はカレラS、いわゆるRWDだが、まるで4WDのような安定感であった。周回を重ねるとコーナーのスピードも上がるが、それでも破綻することは一度もなかった、こんなに濡れた路面を安心して走れるスポーツカーは初めてである。
ステアリングが従来よりクイックになりながらも安定感は増した

そして次にサーキット走行。ある意味ここでもその安定性は実感させられた。ブレーキングでバタついたり、多少のオーバースピードであっても、コーナーでステアリングをしっかり操作できる。
気に入ったのはこのステアリングの精緻さと反応。従来型より約10%クイックにした設定だそうだが、これがサーキットで開花する。アクセルを踏みながらの操作感やクリッピングポイントにピタッと合わせる感じが気持ちいい。それと絶対的なストッピングパワーでアクセルを安心して踏ませてくれるブレーキも感涙ものであった。新型はホイールが大きくなり、合わせてブレーキも容量が上げられたと考えられる。一発で効かせることも、ジワッと減速させことも高い次元で自由自在だ。
リヤ21インチでの乗り心地は許容範囲

そんなサーキット走行を楽しんだ後は一般道テスト。ここでは乗り心地を主にチェックした。結果はリヤ21インチであっても許容範囲。現行991型とそれほど変わらない。段差でダン!と来るときもあれば、意外にもソフトにこなすときもある。まぁ、この辺はボディ剛性、サスペンションの取り付け剛性などが上がっているので問題なさそうだ。
カレラSでも十分以上のハイパフォーマンス。上位モデルの仕上がりが楽しみ

といったのが新型911のファーストインプレッション。サーキット走行に注力し過ぎてしまった部分もあるが、トータルで進化の度合いは十分感じた。高いスポーツ走行性能が確保されているのはたしか。となると、ターボS、GT3あたりがさらに良くなっているのでは? なんて妄想が止まらない。8世代目になっても911伝説はまだまだ続きそうだ。