新車試乗レポート
更新日:2018.11.28 / 掲載日:2018.04.04
VOLKSWAGEN Polo 試乗インプレッション


’75年の初代以来、世界中で愛されてきた「ポロ」。約8年ぶりの刷新となる6世代目がいよいよ日本でも発売となった。1Lのダウンサイジングターボを搭載しつつひとまわり大きくなって…一体どう変わった?
【従来型】 欧州Bセグのベストセラー
【従来型】 欧州Bセグのベストセラー
全車ターボエンジンを搭載。1.2L直4(90PS)のほか、1.4LのブルーGT(150PS)、1.8LのGTI(192PS)がラインナップ。Bセグメントの世界標準ともいえるベストセラーカーだ。
プレミアム感を高めつつ汎用性・実用性をキープ
“格”や個性を強く演出しないのがポロの美点のひとつだったが、プレミアム/スペシャリティ志向の高まりの中では、さすがに地味に見えてしまう……そんなイメージを変えたのが新型である。全長と全幅は65mmずつ拡大し、全高は10mm低下。サイドウインドウの上下開口は小さくなり、上すぼまりのクーペ的なフォルムに変化。スペシャリティカーというほどではないにしても新たな魅力を加えている。内装も光沢仕上げの加飾パネル面積を大幅に増加させるなど、プレミアム感を高めていた。
パワートレーンは先代の「ブルーモーション」同様の3気筒1Lターボだが、最大トルクは1.6kg・m増の17.9kg・m。実際に試乗しても低回転のトルクもりもり。最大トルクは2000~3500回転で発生するが、登坂緩加速でも2000回転を超えることはなく、急加速でさえ4000回転以下で済ます。高速域の巡航ギヤ維持能力も高く、車格を超えた力強さが運転を容易にしてくれる。
付け加えるならエンジンフィールは3気筒を意識させない。吸排気音の抑え方が巧みなせいもあるが、回り方も至ってスムーズだ。
JC08燃費19.1km/Lはちょっと意外な印象だ。JC08モード向けのチューンをしていないことが大きいが、試乗の印象ではJC08超えも難しくなく、特に高速長距離ではコンスタントに20km/Lを超えると予想される。
フットワークは最近のVW車らしく乗り心地に配慮したもの。深くロールしたときの抑えが先代より利いているが、短いストロークではしなやかさが増し、路面への当たりも穏やか。それでいて大きなうねりの通過でもストローク速度は抑制されている。高減衰の乗り味を好むドライバーの趣味に合うかは微妙な部分もあるが、日常の快適性と高速や山岳路での安心感が見事に両立されている。
安全&運転支援装備の充実は先代からの大きなアドバンテージだったが、新型では全車速型ACCやAEBSに加えて死角検知のBSM、後退時のRCTAを採用。自動操舵による駐車支援機能も用意され、正にクラスを超えて充実した内容となっている。ホイールベース延長の恩恵で後席ニースペースが約5cm拡大。クラス最大級だった荷室容量は71Lも増加。内外装にプレミアム&スペシャリティ色を加えても、汎用性に富む実用的な2BOX車の本質を違えないのがポロらしい。安全&運転支援装備をフル装着したスタート価格は約240万円。内外装の車格感の向上含みなら、買い得感も一段と向上している。
VOLKSWAGEN ポロ 【フルモデルチェンジ】
●発売日:’18年3月20日
●輸入元:フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン
●問い合わせ先:0120-993-199
■ラインナップ
TSIトレンドライン209万8000円
TSIコンフォートライン229万9000円
TSIハイライン265万円
主要諸元(試乗車:TSIハイライン)※オプションを含まず
●全長×全幅×全高(mm):4060×1750×1450●ホイールベース(mm):2550●車両重量(kg):1160●駆動方式:FF●パワートレーン:999cc直3ターボ(95PS/17.9kg・m)●トランスミッション:7速DCT●JC08モード燃費(km/L):19.1●燃料タンク(L):40(プレミアム)●最小回転半径(m):5.1●タイヤサイズ:195/55R16

現行のゴルフ等と同じMQB(Modularen Querbaukasten=モジュラー トランスバース マトリックス)プラットフォームを採用。パワートレーンは1L3気筒ターボ+7速DCTで、標準仕様のトレンドライン、装備充実のコンフォートライン、上級仕様のハイラインの3グレードを用意。なお、従来型はクロスポロとブルーGTが既に生産を終了しており、GTIのみが新型ポロと併売される。新型GTIの日本発売は今年後半となる見込みだ。
ボディカラー全8色
※★は新色、【H】はハイライン専用色
エナジェティックオレンジメタリック★
リーフブルーメタリック★
アイボリーメタリック★【H】
ホワイトシルバーメタリック★【H】
ピュアホワイト
フラッシュレッド
ディープブラックパールエフェクト
リフレックスシルバーメタリック

MQBは前後オーバーハングやホイールベースなどの寸法を自由に設定可能。基本設計が共通なため、新型ポロは上位モデルと同等の運転支援機能が搭載可能となっている。

従来型から全長・全幅が+65mm、全高が-10mm、ホイールベースは+80mmとなり、ロー&ワイドかつタイヤを四隅に追いやったスポーティなフォルムとなった。
ハイラインはLEDヘッドライトやフォグランプを装備。
テールライトはポロ初のフルLEDだ。
従来の1.2L直4ターボよりも出力が向上した1L直3ターボを搭載。2000回転から最大トルクを発生させ、7速DCTとの組み合わせで低回転域を多用するため静粛性も高い。
ハイラインは16インチアルミを履く。なお、コンフォートラインは15インチアルミ、トレンドラインは15インチスチールだ。
後席は視角的には多少閉塞感が強まっているが、寸法的な余裕は増加。着座姿勢もゆったりしている。
視野やインパネの雰囲気もあり、前席は従来車よりもひとクラス上の印象。
後席は脚さばきが若干窮屈だが、この車体寸法では標準的と言えよう。
大きく開くドア開口もあって、前席乗降は姿勢も足着き性も良好。

ダッシュボードの配置は垂直基調から水平基調に。ディスプレイと操作パネルを高い位置に配置し、主な操作系をダッシュボード上方に集中配置。モバイルオンラインサービス「Volkswagen Car Net」対応の純正ナビシステム「Discover Pro」は、コンフォートライン以上にパッケージオプションとして用意(22万6800円)。
車体寸法とともに室内寸法も拡大。
全高は7mm低くなったが、ヘッドルームは前席15mm/後席21mmのプラスとなっている。
中央に情報パネルを配した2眼アナログメーター。情報が整理され、シンプルで視認性に優れている。
ポロシリーズ初採用となるDiscover Proの8インチスクリーンを、ドライバー側に傾けて配置する。

セレクターやスイッチを機能的に配置。走行中に必要な操作のほとんどが手元でできる。
レーダーセンサーによる追従式クルーズコントロール(ACC)は全車速追従機能付きで、機械式Pブレーキながら停車や発進まで制御。渋滞時などの運転者の疲労軽減に効果的だ。
プリクラッシュブレーキシステム「Front Assist」は新たに歩行者検知に対応。歩行者への衝撃を緩和するアクティブボンネットとともに標準装備される。
後方死角検知機能は、他の先進安全装備とともにコンフォートライン以上にセットオプションで用意される。
「リヤトラフィックアラート」は、後退時に障害物を感知して警告や衝突軽減ブレーキ機能を作動させる。
車体周囲を監視し、音と表示の警告や衝突軽減ブレーキで駐車をサポートするパークディスタンスコントロールや、操舵支援付きの「Park Assist」を設定。
スマホ連係機能や音声コマンドにより、便利な機能や欲しい情報を簡単に呼び出せる。
寸法拡大の恩恵はキャビンとともに荷室にも及ぶ。荷室容量は従来比+71Lの351Lと大幅に拡大。歴代ポロが誇ってきた実用性をさらに高めている。
国産ライバルとくらべると…?
バラエティ豊かな日本車に対し、ポロはオールマイティさで勝負
レジャー用途でのクロスビーや先鋭的なスペシャリティ志向のジューク、ユーティリティフリードシリーズのフリード+など、特定の用途やキャラの濃さでは国産車のほうが魅力的なモデルが多い。ポロの見所はウェルバランスの極致。どこを取ってもクラス最高水準が魅力。とくに高速長距離ツアラーとしての資質の高さは見逃せない。そこでの運転支援機能も含めたライバルとしてはアクセラやCX-3のガソリン車、インプレッサ/XV等が挙げられるが、ユーティリティや街乗りでの扱いやすさ、ターボ/DCTのドライブフィールがポロのアドバンテージである。
ジューク
フリード+
アクセラ
CX-3
インプレッサ
スバルXV