新車試乗レポート
更新日:2019.05.22 / 掲載日:2018.04.02

【試乗レポート】ついに日本上陸したVW最新ディーゼル「TDI」は期待に応えるのか!?

パサート ヴァリアント TDI ハイライン

文と写真●ユニット・コンパス

 フォルクスワーゲンが元気を取り戻している。2017年から立て続けにニューモデルを投入してその機運を高めてきたが、いよいよディーゼルエンジンを搭載する「TDI」モデルを日本にも投入することとなった。
 ディーゼルといえば、2015年に発覚した、排ガス規制を逃れるための不正ソフトウェア問題で、VWが大きなダメージを受けたことは記憶に新しい。だがVWはその後、ユーザーからの信頼を取り戻すべく様々な取り組みを行ってきた。そしてついに、ブランドイメージに敏感な日本市場でも、ディーゼルモデルを投入するべきタイミングが来たと判断したということだろう。もちろんそれは、商品の魅力に自信がなければできないことだ。

 そもそも、なぜ乗用車用パワートレーンとしてディーゼルに注目が集まっているのか。それは、ディーゼルエンジンが、噴射する燃料の量がガソリンよりも少なくて済むため、燃焼効率に優れ、結果として低燃費&低ランニングコストで、トルクが大きく大型車や重量車に対して優れたソリューションだからにほかならない。SUVをはじめとする大型乗用車や、年間に10万km以上走る長距離トラックや大型の建設機械、そして船舶などがディーゼルエンジンを採用するのは、ディーゼルのメリットが使用用途に合致するからだ。
 しかし、物事には表と裏があり、メリットがあればデメリットも存在する。ディーゼルにおけるデメリットとは、排出ガスをクリーン化するために複雑なメカニズムが必要となることだ。つまり、ディーゼルエンジンは高い。VWで開発部門の責任者であるフランク・ヴェルシュは、2017年にドイツ自動車専門誌のインタビューで、「ディーゼルの排ガス対策関連のコストは、エンジン本体のコストと同じレベルにまで近づいている」と語っている。
 よって、どのブランドでも、ディーゼルモデルはガソリンよりも30万円ほど高額なプライスをつけている。それでもなおディーゼルに注目が集まるのは、ディーゼルならではの豊かなトルクによる走りやすさが歓迎されているからでもある。

入念な排ガス対策を施した新型TDIエンジン

 VWが今回日本市場にディーゼルモデルを投入するにあたって、まずパサートおよびパサートヴァリアントを選んだというのは、これらのモデルとその使用用途が、ディーゼルとマッチングがいいと考えているからだ。しかし、ガソリンモデル(TSI)やプラグインハイブリッド(GTE)が併売されることからもわかるとおり、自分のライフスタイルとマッチするパワートレーンを選ぶことが大切であることは言うまでもない。

 試乗インプレッションに入る前に、改めて今回の主役である「TDI」エンジンについて紹介しよう。
 ディーゼルエンジンは、優れた燃焼効率を誇る一方で、ガソリンエンジンよりも排出ガスの処理が難しい。具体的には、粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOx)が多く発生し、これをどう処理するかが、各メーカーにとって腕の見せどころとなっている。
 「MQB」世代である現行型パサートに搭載されるEA288型「TDI」エンジンは、シャシーと同じくモジュラー思想「MDB(モジュラー・エンジン・システム)」による設計で、高度な技術を幅広いモデルに搭載することを前提に、非常に凝った内容になっている。

 公害物質の発生そのものを抑える工夫として、パサートのTDIユニットは、燃料噴射装置に電子制御式コモンレールシステム(200MPa)を採用しているが、ここは現代のディーゼルユニットとしては常識的。むしろ排ガスを処理する後工程に新ユニットの工夫が光る。
 いちどエンジンから排出されたガスを再びエンジンに還元し、有害物質の発生を防ぐEGR(排気再循環)システムを二系統搭載するのは、前世代のEA189型と同様。注目は、排ガスの後処理工程がさらに入念になったことだ。
 日本に導入された新しい「TDI」では、PM粒子を吸着するDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)と「AdBlue」と呼ばれる尿素水溶液を噴射することで、NOxを化学反応させて無害化するSCR(選択触媒還元)システムを二段構えで採用している。燃焼による工夫、排ガスを利用する工夫、そして科学的な処理による工夫と、現在考えられる最高レベルの対策だ。
 これによって、日本のポスト新長期排ガス規制に適合するのはもちろん、第三者機関による実走行試験においても、排出されるガスはクリーンであると認められたという。自社調べではなく、しかも実走行試験の結果も好評しているところに、VWの真摯な姿勢が伺える。

シンプルでいながら上質感が漂うインテリア

 では、そんな「TDI」エンジンを搭載したパサートの乗り味はどうだったのか。今回試乗できたのは、パサートヴァリアント TDI ハイライン。509万9000円という車両本体価格は、TDIモデルのなかで最上級である。

 いかにもVWらしい、カッチリとした形状のレザーシートは、表皮もスムースで肌触り良好。水平基調のインパネデザインはドイツ的美意識に満ち溢れ、組み合わせられたウッドパネルのシックな風合いと合間って上質感を漂わす。
 センターコンソールの純正インフォテイメントシステム「Discover Pro」(ジェスチャーコントロール対応)は9.2インチと画面も大きく、フラットなデザインはいかにも今風だ。シンプルかつ先進的なコックピットは、プレミアムセグメントのクルマと比べても遜色のないクオリティだ。

高速域でのクルージングでディーゼルの利点が光る

 エンジンをかけると、音や振動がディーゼルモデルであることを正直に伝えてくる。だが、走り出しはスムーズで、市街地での扱いやすさは好印象。これは、可変式ガイドベーンを採用し、エンジン回転数に応じてガスの流れをコントロールするというターボチャージャーの効能なのだろう。スッとアクセルを踏み込んだときにも、間髪入れずにクルマが反応してくれるし、それでいて過敏ではないので、とても走らせやすい。
 効率を突き詰めた1.4LのTSI、スポーティで爽快な2.0TSI、モーター駆動を組み合わせ、環境性とパワーを両立させたGTE。それらに対してTDIユニットは、実直かつタフネスな力持ちという印象だ。

 市街地を抜け、クルージング態勢に入ると、ディーゼルモデルの美点が浮かび上がってきた。前を行くクルマをターゲットに運転支援機能を作動させると、車間を一定感覚にキープすると同時に、車線を認識してレーンに沿って車両が運転操作をサポート。ドライバーは、ステアリングに軽く手を添え、前方を監視していればいい。
 流れがスムーズになり、車速が高まってくると、低くハミングするエンジンの存在感は、スピードと反比例してどんどんと小さくなり、旅客機が水平飛行へと移ったときのような居心地のよさがキャビンを包み込む。
 やはり、ラゲッジに人数分の荷物を満載し、旅行やレジャーに出かけるときが、このクルマがもっとも輝く瞬間なのだろう。残念ながら試乗時間が限られているため、このままロングドライブというわけにはいかなかったが、パサート ヴァリアントTDIの魅力を体験することができた。

改めて感じるパサートというクルマの魅力

 ようやく日本市場に投入されたVWの「TDI」は、まさしくディーゼルらしい特徴と魅力を備えるパワートレーンであった。すでに市場に投入されている他ブランドのディーゼルモデルが、500万円後半から600万円前半というプライスタグをつけるなかで、パサートTDIモデルの422万9000円から509万9000円という価格は、なかなか説得力がある。「TDI」モデルの登場は、ユーザーにとって新しい選択肢となると同時に、パサートというクルマそのものの魅力に、改めて気付かせてくれるきっかけになるだろう。


フォルクスワーゲン パサート ヴァリアント TDIハイライン(6速AT・DSG)
全長×全幅×全高 4775×1830×1510mm
ホイールベース 2790mm
トレッド前/後 1580/1560mm
車両重量 1610kg
エンジン 直列4気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量 1968cc
最高出力 140ps/3500-4000rpm
最大トルク 40.8kgm/1900-3300rpm
JC08モード燃費 20.6km/L
サスペンション前/後 ストラット/4リンク
ブレーキ前/後 Vディスク/ディスク
タイヤ前後 235/45R18

販売価格 422万9000円~509万9000円(TDIのみ)

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グーネットマガジン編集部

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