新車試乗レポート
更新日:2018.11.14 / 掲載日:2017.11.30
Ferrari La Ferrari 試乗インプレッション
ハイパワーと乗りやすさ。カーテクノロジーの集大成
世界限定わずかに499+1台(後からチャリティオークション用に1台追加された)の跳ね馬に与えられた名前は、英語でいうところの“ザ・フェラーリ”だった。
20世紀から続く高性能自動車テクノロジーの集大成、である。つまり、ラ フェラーリの登場が、フェラーリの、否、ハイパースポーツカーの画期になる可能性がある、ということだ。だからこそ、ハイパワーV12エンジン搭載であり、“HY‐KERS”2モーターハイブリッドシステム採用であり、空前絶後のシステムパワー約1000馬力達成、なのだった。
フェラーリ好きが“スペチアーレ”と呼んで珍重する限定車は、ほぼ十年に一度登場する。このビジネスモデルの端緒は、創立40周年記念モデルのF40だったが、その直前に登場した、同じく限定車の288(GTO)を含めて、“フェラーリ中のフェラーリ”として、崇拝の対象とさえなっている。
ラ フェラーリのすさまじいところは、そのパワースペックからは想像できないドライバビリティを有することだ。十年前のエンツォよりずっと高性能なのに圧倒的に運転しやすい。パワートレーンやシャシー、サスペンションが、ドライバーの思いに完璧に応えるよう、緻密に制御されている。
加えて、空力もロードカーとしては、2010年代の最新かつ最先端にあって、それがまた、高速域での安定したドライビングを効果的に手助けする。たとえ、それがサーキットを攻めているような場面において、でもだ。
もちろん、真のプロフェショナルドライバーのドライブにも適応すべく、すべての制御を人間に委ねることも可能で、そうすると、1.25tに1000馬力という、とてつもなく恐ろしいパワースペックをもろに体感することになる。
マラネッロが時代の究極のロードカーに“ザ・フェラーリ”という、究極の名前を与えたこともまた、理解できるだろう。
やはり、自動車の世界は、われわれが感じている以上に、今、大きな画期、節目を迎えているのだ。
フェラーリ ラ フェラーリ
ラ フェラーリ
全長×全幅×全高(mm):4702×1992×1116、駆動方式:MR、エンジンタイプ:6.3LV12DOHC+モーター、最高出力:800PS/9000rpm(システム合計963PS)、最大トルク:71.4kg・m/6750rpm(同91.8kg・m以上)、トランスミッション:7DCT、車両重量:1255kg
プリプレグ複合素材のシャシーをもつ、フェラーリ初のハイブリッドモデル。
バタフライドアも特徴的。空力を最適化するアクティブエアロダイナミクスを備える。
F1のKERS(運動エネルギー回生システム)を活用したHY-KERSシステムを採用。0→100km/h加速3秒未満。
液晶のインパネを備えた、シンプルなインテリア。
近年は脱ピニンファリーナ。限定初のインハウスデザイン

フェラーリといえば長年にわたりピニンファリーナ、というのが常識だったが、ラ フェラーリではフラビオ・マンツォーニ率いる社内チームのデザイン案が採用された。これまでだって自動的にピニンファリーナへ発注されていたわけじゃない。曲がりなりにもコンペが行なわれてきた。今回もピニンファリーナ案(実はとってもかっこいい!)と競合し、最終的にインハウスデザインが勝った、という筋書きに表向きにはなっている。社内チーム案が“スペチアーレ”に採用された事実もまた画期。今ではかのピニンファリーナバッジを、最新のフェラーリに見つけることはできなくなっている。
提供元:月刊自家用車