新車試乗レポート
更新日:2019.05.23 / 掲載日:2017.11.29
【試乗レポート】FRセダンに大変身しての登場!新型アルファ ロメオ ジュリアの注目度

ジュリア ヴェローチェ
文●九島辰也 写真● ユニット・コンパス
イタリア北部の古都ヴェローナには「ジュリエットの家」という観光スポットがある。実際に訪れたこともあるし、そこをテーマにした映画も観た。正直イメージしていたほどのスケール感はなかったが、イタリアならではの情緒ある建物であった。何百年も変わらぬ街角に立つと、まるでタイムスリップしたような気分になる……。
そんなシェイクスピアの戯曲をモジって作られたのが1950年代のアルファ ロメオ ジュリエッタ。いまもクラシックカー業界では人気の一台である。スタイリングもパフォーマンスもそうで、レースでの実績も申し分ない。そのジュリエッタの後継として60年代に登場したのがジュリアだ。軽量コンパクトボディにレーシーなツインカムエンジンを搭載して話題となった。つまり、そもそもレーシーな性格の持ち主である。
FRボディで変身復活を遂げた新型ジュリア
さて、そんなジュリアが復活した。しかも、アルファ ロメオ久々のセダンボディとしてだ。ミト、ジュリエッタ以前の159以来のセダンである。さらにいえば、久々のFRである。この数年アルファロメオはFFで勝負してきた。その意味では大改革が行われたわけだ。
大改革の理由は、アルファ ロメオブランドのプレミアム化。これまでフィアットの少し上だったポジションを限りなくマセラティに近づけたのである。そしてそのためには本格的なスポーツセダンが必要となった。そういう背景での新型ジュリア登場なのである。グレードは全部で4つ。それぞれがかなり個性的である。それは価格にも表れていて、エントリーとなるスタンダードの「ジュリア」が446万円なのに対し、トップエンドの「クアドリフォリオ」は1132万円というタグを付ける。これに関し、当初「クアドリフォリオは高すぎるのでは?」という声も正直あったが、蓋を開けてみればその差は一目瞭然。別物である。たとえるなら、4気筒を積んだメルセデスベンツCクラスとそのAMG版。クアドリフォリオはその走りを鑑みると、むしろバーゲンプライスなのかもしれない。もはやジュリアというモデルを超えた存在と言ってもよいだろう。

サイドからリヤにかけての躍動感あるボディラインは、スポーツクーペを思わせる。写真は4WDの上級グレード「ジュリア ヴェローチェ」。
ド派手なパフォーマンスで目を引くクアドリフォリオ

ジュリア クアドリフォリオ
では、クアドリフォリオはどれだけすごいのかというと、搭載するエンジンは2.9L V6ツインターボで、最高出力は510馬力、最大トルクは61.2kgmを発生する。結果0-100km/h加速は3.9秒、最高速度は307km/hに達する。510馬力といえばジャガーのV8エンジンと同じ数値だ。しかも、このエンジンはフェラーリによる設計。フェラーリ・カリフォルニアTの3.9リッターV8から2つのシリンダーを取り除いたものに近いのだ。製造もマラネロというから眉唾ではないだろう。
そういう心臓を持つだけに走りもかなりエッジが効いている。ハンドリングはクイックで姿勢の変化も素早い。まるで身体の一部にでもなったかのような身のこなしだ。それだけでもアドレナリンが分泌されるのに、エンジン音とエキゾーストノートがさらにやる気を起こさせる。レーシーなサウンドに思わず顔がニヤけ、自然とステアリングを握る手にも力がこもる。ところで、これだけの身のこなしができるのはボディ剛性の高さによるものだろう。専用の補強がなされているものと想像でき、チューニングも独特だ。フロントの可変式カーボンファイバースポイラーなんていうのもユニークな装備である。
強烈な個性を与えられた全4グレード

それではほかのジュリアは大人しいのかといえば、決してそんなことはない。クアドリフォリオとは異なるベクトルでクルマ好きを納得させる仕上がりを見せている。
たとえば「ジュリアスーパー」。200馬力を発揮する2L 直4ターボを積んだモデルだ。特徴は何よりもそのバランス。ハンドリングの気持ち良さは絶品で、しばらくFFばかりを作り続けてきたのに、こんなハンドリングができるのか、と驚いた。とにかくFRらしさが際立ち、鼻先が軽くて気持ちよく向きを変えられる。場面によっては若干オーバーステアに近いほどだ。まさにクルマ好きが好むセッティングなのである。
またデフォルトから弾けた走りのクアドリフォリオとは異なり、「DNAドライブモード」を場面場面で楽しめるのもいい。ダイナミックモードでワインディングを駆け抜けた帰り道は、アドバンスド・エフィシェンシーモードでエコな走りで流すのも悪くない。
「ジュリアスーパー」と同じエンジンを積みながら17インチのタイヤを標準とするスタンダードモデル「ジュリア」は最もクルマを等身大で感じられる。ハードな動きに対して少し挙動が大きいところなどは90年代のアルファ的で、なんとなく懐かしくも思えた。それに対し同じ2L 直4ターボながら280馬力にスープアップされた「ヴェローチェ」は大人な感じだ。左ハンドルで4WDという個性の持ち主だが、力感がありながらもジェントルな走りを見せる。ドイツ勢がひしめき合うDセグメントの高性能モデルバトルに参戦し、それなりのパフォーマンスを発揮するのだが、アルファロメオらしいやんちゃな個性は一番薄く、プレミアム感をアピールしてくる。
といったのが新型ジュリアの4つのグレードのインプレッションであるが、どれもこれも走らせて楽しいのは確かだ。アルファロメオが覚醒し、ようやくセダンが楽しくなってきたと感じさせるニューモデルであった。
艶のあるプレミアムスポーティブランドの復権

相変わらずドライバーオリエンテッドなコクピット。「クルマはドライバーのためにある」といったメッセージが聞こえてきそうだ。これまでのポジションから格上げされた新世代アルファ ロメオの第一号らしいラグジュアリーなテイストのインテリアとなる。
エンジンのスタートボタンはステアリングに付いていてわかりやすい。
ディテールにも凝っていて、スイッチ類の剛性も以前より高められている。
シフトノブが少々個性的なのでご注意を。シフトダウンは前となっている。

新型の目玉のひとつは、アルミを多用したボディとエンジン。クアドリフォリオのフェラーリ技術に注目が集まるが、4気筒エンジンのフィーリングの濃さはさすがだ。写真は「ジュリア ヴェローチェ」に搭載される直4ターボ。

トランクの開口部がそれほど大きくないのは、ボディ剛性を稼ぐためだろう。それでも奥行きがあって実際の使いやすさは申し分ないレベルだ。
アルファ ロメオ ジュリア ヴェローチェ(8速AT)
全長×全幅×全高 4655×1865×1435mm
ホイールベース 2820mm
トレッド前/後 1555/1625mm
車両重量 1670kg
エンジン 直4DOHCターボ
総排気量 1995cc
最高出力 280ps/5250rpm
最大トルク 40.8kgm/2250rpm
サスペンション前/後 ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ前後 Vディスク
タイヤサイズ前後 225/45R18
販売価格 446万円~597万円(クアドリフォリオを除く全グレード)