新車試乗レポート
更新日:2026.07.15 / 掲載日:2026.07.15
オススメはe-4ORCE、新型キックスはデザインも価格もグッド【九島辰也】

文●九島辰也 写真●日産
日産 キックスが新しくなりました。今や日本で最大マーケットに属すコンパクトSUVです。トヨタ カローラクロスやホンダ ヴェゼルなんかが台数を伸ばしている市場です。狭い道でも扱いやすいサイズが大人気。特に女性ユーザーからは目線が高い分周りを見渡せるので、駐車する時に便利なんて声を聞きます。確かにそうですよね。SUVに乗ったあと2ドアスポーツカーに乗るとあらためてその低さに驚かされます。
それはともかく、2025年で52万台を売り上げたマーケットにチャレンジするわけですからそれなりの準備が必要です。競合ひしめき合う中では目立ってナンボですから。

その意味で新型キックスはいい感じに仕上がったと思います。見てくださいこのデザイン。シュッとしていてかっこいいと思いませんか? 特に奇をてらったところはないのにしっかり個性を感じます。フロントマスクがそう。プレゼンテーションではアメフトのヘルメットを意識し、タフで俊敏さをアピールしたと言っていましたが、これはこじつけでしょう。もっとクールさを感じます。ヘッドライトは冷静に何かを見つめるような鋭い眼差しのようです。それに新型パスファインダーを見ると似たようなテイストであることがわかります。ヘッドライト下に縦に並ぶ横棒がそれ。要するに新世代のアイコンでしょう。今後日産のラインアップにこの手の顔が増える気がします。
かっこいいスタイリングに載るパワーユニットは第3世代のe-POWERです。発電特化型エンジンと5-in-1と呼ばれる電動ユニットに手が入りました。ガソリンエンジンは1.2リッターを1.4リッターに排気量アップし、出力を20%向上させました。圧縮比を高くし、発電効率を上げています。電動ユニットはインバーターの冷却やモーターの再設計でエネルギーロスを減らします。
結果、大幅に燃費を良くしました。WLTCモードで従来型の23.0km/lから25.7km/l(X系)へ伸ばしました。これはありがたい。よりお財布に優しくなったわけです。これにはエンジンとモーターユニットの他にボディの軽量化とエアロダイナミクスが関係します。この辺はプラットフォームから刷新できた賜物です。
このクルマは2つの駆動方式があります。FWDと進化したe-4ORCEです。試乗車は19インチを履いたFWDと17インチのe-4ORCE。FWDは装備がてんこ盛りの最上級グレード“G”でした。

最初に乗ったのはFWD。出だしから車両は安定していて、走りに高級感があります。ボディがしっかりしているということでしょう。車両感覚が掴みやすく、スタートから遠慮なくアクセルを踏めるといったところです。ハンドリングも悪くない。シビアではありませんが、精緻にコントロールできます。ただ、発進時と中間加速は少し重ったるさがあります。トルクの立ち上がりを意図的に抑えているからでしょうか。スッキリ感は薄いです。ただ、街中でそれなりの交通量がある場面ではそれは苦ではありません。大人しめに走る時はしっくり馴染みます。
これに対しe-4ORCEは足りなく感じる部分をリアが補うので、スムーズに感じました。出だし、加速ともにイメージ通り。トルクの出方が力強い分車両の重さは相殺されます。走り慣れている方にはこちらをお勧めしたい。従来型よりもリアのモーター出力を上げたのは正解のようです。

乗り心地に関してもe-4ORCEの方が好みです。17インチの恩恵で、路面からの入力は緩和されソフトなフィーリングを提供してくれます。これは新採用のダンパーも大きく貢献します。入力に対する減衰圧の調整を自動で行うシステムです。最近はVWグループもこのクラスに高性能ダンパーを取り入れていますが、これはひとつのトレンドかもしれません。確実にひとつ上のクラスの乗り心地を感じます。マーケットでひとつ頭を出すのにいいアイデアです。
この他ではモーターとブレーキの統合制御だったり、回生ブレーキの効率アップだったりが目立ちますが、やはり新型キックスの目玉はデザインに他なりません。個性を出しすぎないさじ加減は実に絶妙です。しかも、このクルマはスタートプライスがユーザーフレンドリー。FWDであれば300万円を切ります。ただ、お勧めは+35万円のe-4ORCE。それでも輸入車と比べればかなりお得。アフォーダブルな価格設定です。販売も好調だとか。日産の今年の目玉はこれで決まりですね。