新車試乗レポート
更新日:2026.04.06 / 掲載日:2026.04.06
色気に全振り! グランカブリオ トロフェオは究極の伊達男【工藤貴宏】

文●工藤貴宏 写真●澤田和久、内藤敬仁
世の中には2種類のクルマがある。ひとつは運転していて気持ちが良くなるクルマ。もうひとつは、そうでないクルマだ。
クルマがもたらす快楽を追求していくと、マセラティはその最高峰の到達点になり得る。……マセラティに乗ると誰もがそれを実感できることでしょう。もちろん「グランカブリオ」もその1台です。
優雅さを極めたオープンスポーツ

グランカブリオはクーペモデル「グランクーペ」のルーフを電動開閉式のソフトトップとしたオープンカー。全長5mちかい大型のオープンモデルというだけで優雅さの極みですが、運転がもたらす高揚感といったら輸入車のなかもトップレベルなのですから。
といっても、そもそも、日本ではマセラティについてよく知らないという人も少なくないかもしれませんね。そこでマセラティについておさらいしておきましょうか。
同社の創業は1914年。当初はチューニングによる市販車の高性能化を手掛けつつ、その後レーシングカーを製造販売してその名を知らしめました。第二次世界大戦後はいくつものカテゴリーにおいて世界的なレースで活躍したのち、高級スポーツカーメーカーへと転身。1963年に発売した「クワトロポルテ」はハイレベルな走行性能に加えて快適性をラグジュアリー性も併せ持つ「グランドツーリングカー」として新しいジャンルを切り開きいたのです(当時の高性能車は快適性が高くないのが一般的だった)。速さはもちろん、上質なインテリアの仕立てと快適性も欠かせない。それがマセラティのクルマ作りなのです。

そんなマセラティの現在のラインナップは、公道を走れるレーシングカーともいえる「GT2ストラダーレ」を頂点にその基本構造を共用するスーパーカーの「MCプーラ」、ラグジュアリークーペのグランツーリスモとそのオープンモデルで今回試乗したグランカブリオ、そしてSUVの「グレカーレ」となっています。
SUVのグレカーレのベーシックタイプでも300馬力、それ以外は最低でも490馬力以上(GT2ストラダーレではなんと640馬力!)のパワーを誇る高出力エンジンを搭載。市販車に手を加えてより高性能化する事業をルーツとするだけに、とにかく高出力大好きのブランドであることは間違いありません。
現行型のグランカブリオは2024年にデビュー。ベース仕様と今回試乗した「トロフェオ」の2つのグレードを展開しています。
最高出力は550馬力で0-100km/h加速3.6秒、最高速度316km/h

ベース仕様に組み合わせるエンジンの最高出力は490馬力でそれでも十分にパワフルですが、「トロフィー」のイタリア語をグレード名とした高性能仕様となるトロフェオの最高出力はなんと550馬力。前後のタイヤでパワーを路面へ伝える4WDを組み合わせ、0-100km/h加速わずか3.6秒。最高速度316km/hというから凄すぎます。その性能をフルに発揮する機会はなかなかありませんが、レースとともに歩んだマセラティの歴史を今なお受け継いでいることを感じさせるじゃないですか。
また、ボンネットを開くとエンジンがおもいきり後方へ寄せて積まれていることに驚き。妥協なき、そして完全なるフロントミッドシップとして車両の構造からも旋回性能を高めていることがわかりますね。前後重量配分51:49を実現しています。
流しているだけならゴージャスで快適ななオープンカー

室内へ乗り込んで感じたことはふたつ。ひとつは意外に後席が広いこと。グランカブリオはリヤシートを備えた4人乗りですが、こういったオープンモデルの場合はベースのクーペに比べて後席が狭くなるのはよくあること。ルーフ収納の都合があるからです。

しかしグランカブリオはその影響が少なく、これなら大人も1時間くらいは心地よく座っていられるなという印象。実用性が高いコンバーチブルといっていいでしょう。

もうひとつはコックピットインターフェイスに先進感があふれるということ。マセラティの伝統といえるダッシュボード中央の時計はデジタル化(もちろんアナログ表示可能)しつつ、その下には2つのタッチパネルを配置。ルーフの開閉操作もこのタッチパネルを指でなぞって行うのは新鮮です。

ちなみに操作は50km/hまでなら走行中も可能で、開閉にかかる時間はわずか14秒なので気軽におこなえます。
そんなグランカブリオ・トロフェオの走りはなんとも魅惑的で色気のあるもの。正直なところ走りにおける最大の魅力は速さよりもこの官能性能だと断言していいでしょう。

V型6気筒のツインターボエンジンはひたすらエモーショナル。回転上昇のフィーリングと高回転の炸裂感は刺激に満ち溢れ、管楽器のような響きを奏でる音でもドライバーを高揚させてくれる。運転する快楽への探求心をかなえてくれるクルマなのです。こっそり告白すれば、その官能性能を楽しむためにアクセルを踏み込きたくなる気持ちをグッと抑えるのが大変なほどですが。
総じていえば、このクルマは優雅さの極み。高い性能を持ちつつも、それをフルに出すことよりもゆったりとクルマとの対話を楽しみたい気持ちになれるクルマです。屋根を開けて、海沿いの道をオープンドライブするなんて最高のシチュエーションですね。
あらゆる意味で余裕を備えた大人のためのスポーツカー

世の中にはこれより速いクルマはそれなりにあります。でも、ここまで優雅な気持ちになれるクルマはそう多くないでしょう。世の中にはもっと実用性の高いクルマもあるし、もっと速いクルマもあります。でも、運転する気持ちよさでこれを超えるクルマは、なかなかありません。あらゆる面で余裕を持つ人のための1台といっていいでしょう。