新車試乗レポート
更新日:2026.03.31 / 掲載日:2026.03.31
【A 200 d アーバンスターズ】最終型にして完成形! これぞ小さな高級車【工藤貴宏】

文●工藤貴宏 写真●澤田和久、内藤敬仁
「フルーツは熟成してからがおいしい!」なんていわれるけれど、熟成後においしいのはそれだけに限らないかもしれません。輸入車ツウの間ではクルマに関しても「モデルチェンジ前が買い時」なんて語られているのですから。
そこにはふたつの理由が存在します。
モデルチェンジを控えた最終型が魅力的な理由

ひとつが“熟成”。クルマは新型登場後にも随時改良がおこなわれて、着実に進化しています。だからフルモデルチェンジ直後よりも、そこから時間が経ち改良を加えたモデルのほうが完成度が高いというわけ。途中のマイナーチェンジで大幅に良くなるクルマもありますからね。
もうひとつは“お買い得感”。
その代表例がボルボのモデルにおいてフルモデルチェンジ前になると登場する「クラシック」というグレードでしょう。サンルーフやレザーシートなどを装備しつつお値段控えめ、つまりお買い得感が高い仕様なのです。ときには後期モデルになると初期モデルに備わっていた細かい装備が廃止されているケースもあるけれど、ボルボの「クラシック」のように高額装備が追加されているのならやはりお買い得感が高いと迷うことなく判断できます。
さて、いまそれに相当するモデルといえばまさにメルセデス・ベンツの「Urban Stars(アーバンスターズ)」シリーズ。

Urban Starsとはメルセデス・ベンツがコンパクトモデル「A クラス」、「CLA」、「CLA シューティングブレーク」、そして「GLA」で展開する、装備水準を高めたグレードです。今回試乗した「AクラスUrban Stars」の場合、従来はメーカーオプションとしていてた「AMGラインパッケージ」と「AMGレザーエクス クルーシブパッケージ」を標準装備しているのがポイント。スタイリングがAMG仕様でスポーティだし、18インチAMGアルミホイールや本革シート、マルチビームLEDヘッドライト&アダプティブ ハイビームアシスト・プラス、さらにはスポーツブレーキシステムまで採用しているからうれしいし、コストパフォーマンスに優れるというわけです。

ところでAクラスは欧州市場におけるクラス分けだと“Cセグメントハッチであり”、いわゆる「ゴルフクラス」。余談ですがなぜゴルフクラスと呼ばれるかといえばフォルクスワーゲンの代表車種「ゴルフ」の初代が築いたカテゴリーからというわけ。ゴルフのほかドイツだと「アウディA3」「BMW 1シリーズ」などがライバルに相当しますね。
国産車でいえば「トヨタ・カローラスポーツ」とか「ホンダ・シビック」、そして「マツダ・マツダ3」に相当するクラスだと思えばいいでしょう。「コンパクト」とはいってもちょっと大きめです。
さて、そんなAクラスUrban Starsには1.4Lガソリンターボエンジンを積む「A180 Urban Stars」(515万円)と2.0Lガソリンターボエンジンを積む「A200d Urban Stars」(588万円)の2タイプをラインナップ。今回はディーゼルエンジンを積む後者に試乗してみました。
洗練された乗り心地、走りに魅了される

ひさしぶりにAクラスのディーゼルに乗った正直な感想は「Aクラスってこんなに完成度が高かったっけ?」というもの。ふたつの美点を感じられたのです。
ひとつは乗り味のよさ。クルマの挙動に節度があってしっかり感が高いのに加え、いっぽうで適度に柔らかさがある。身体に自然に馴染む、その塩梅が絶妙なのです。やっぱり熟成の進んだクルマはいいですねぇ。

それは具体的にいえば路面からの入力はしっかりいなして優しい乗り心地としたうえで、挙動は穏やかだから車体のフラット感が高い。そしてステアリングの落ち着きも味わい深いもの。直進性の良さや旋回中の挙動もどことなく古いメルセデスを感じさせる安定感があって、もうひとまわり以上も大きなクルマに乗っているかのような錯覚さえ受けるほどです。これなら日常はもちろん、ロングドライブでも疲れないでしょう。かつて乗ったAクラスはここまでの好印象は無かったので、やはり熟成されているのですね。
そしてエンジン。試乗車ディーゼルだけど、フィーリングが素晴らしいのです。
ディーゼルエンジンはデビュー当初から優等生

ディーゼルエンジンだから低回転域のトルクが厚くて乗りやすいのは当然として、一般的なディーゼルエンジンだと好印象とはなりにくいドライバビリティがとてもいい。ディーゼルとは思えないほど滑らかだし、回転を上げていくときの感触が気持ちいいのです。躍動感を語れるディーゼルであり、正直なところ筆者も予備知識なしに試乗したら「ガソリンエンジン」と間違えない自信がないほどなのですから。
エンジン回転の高まりにつれてパワーが盛り上がっていく感覚は、とてもディーゼルとは思えないエモーショナルなもの。まるでガソリンエンジンのようなので、給油時は間違えて経由ではなくガソリンを入れないように気を付けなければ……(笑)。
このディーゼルエンジンは凝った排ガス後処理装置がついているのが特徴ですが、それは排出ガスを浄化して環境対応するためだけでなくこのフィーリング作りに効いているのでしょう。……そうでした。記憶をたどってみると、確かにこのディーゼルエンジンの実力はデビュー時した2019年にはじめて乗ったときにも筆者は大きく感動したのでした。そして、あれから7年が経とうとしている今なおライバルをリードするエンジンというわけですね。これはデビュー時からの長所なので「熟成」ではありませんが。
フルモデルチェンジは未定。もしかしたらラストチャンス?

Aクラスに現行モデル終了のタイミングが近づいているのは間違いないでしょう。しかしいっぽうで「次があるか」といえばそれも微妙なところ。次のモデルがあるかどうか、現時点では明らかになっていないのです。
Aクラスの派生モデルと言えるセダンのCLAだとすでに本国などで新型が公開され、世代交代のタイミングを迎えています。しかし今回試乗したハッチバックは不透明であり、モデル廃止も噂されているほど。つまり今買っておかないと新車は手に入らないかもしれないのです。
そういう意味でも注目に値するモデルといっていいでしょう。いずれにしろ、A200d Urban Starsの満足度は相当高いのは間違いありません。


