新車試乗レポート
更新日:2026.01.09 / 掲載日:2026.01.09
【フェラーリ 】アマルフィが達成した快適さという新機軸【九島辰也】

文●九島辰也 写真●フェラーリ
フェラーリアマルフィの国際試乗会がポルトガルの南の街ファロで行われた。これまでカリフォルニアシリーズやF8トリブート、プロサングエなど数多くのメディア向けテストドライブに参加してきたが、そのほとんどがイタリア国内で行われてきた。時にはワイナリーを巡り、時にはフィオラーノで全開を試み、時には雪道を爆走してきたように。ところが、前回のドーディチチリンドリスパイダーもポルトガルであったように、昨今彼らはテストフィールドを西へずらしている。
ローマ後継モデル「アマルフィ」をポルトガルでドライブ

理由はいくつか察しできる。ポルトガルの方が北イタリアより気候は安定しているし、交通量は少ない。それに同じEU圏であっても物価が安い。ホテル代や食事にかかるコストはこちらの方が抑えられそうだ。もしかしたら交通の取り締まり事情なんかも関連しているかもしれない。フェラーリの試乗ともなると各国のメディアはそれなりの走りを試そうとする。厳粛に取り締まりを行うとスピード違反続出なんてことになりかねない。
それはともかく、アマルフィを実際に走らせてきた。
スタイリングはローマの延長線上にある

このクルマはローマの後継となる。デザインからしてそのイメージの延長線上にあるのは言わずもがなだ。フロントエンジンリア駆動のパワートレインはロングノーズ&ショットデッキを現代的に解釈し、カタチづけられた。
グラマラスなボディラインはローマと同じコンセプトの上に成り立つ。1960年代のデカダンス的様式「Dolce Vita」を新しく定義した「La Nuova Dolce Vita」をベースとする。エアロダイナミクスを高いレベルでキープしながらエレガントで美しいフォルムを完成させた。よって、完成度の高いデザインは大きく手を入れることができず、アマルフィはローマのビッグマイナーチェンジ的に捉えられなくもない。パッと見でわかる違いはフロントグリルやライト類、可動式リアウィングあたりだろう。ただ、このリアウィングは停車時ボディラインに沿って隠れているが、速度によって3段階に競り上がるなど機能面を効力を発揮する。
モーターを搭載しない純粋なパワーユニット

エンジンは3.9リッターV8ツインターボを搭載する。このV8ユニットはF154ファミリーの進化版で、高回転の甲高いサウンドを楽しませてくれる。最高出力は640cvとローマを20cv上回る。最高速度は320km/hで、0-100km/h加速は3.3秒を叩き出す。ローマが3.4秒だからコンマ1秒速くなった。
新たに手を入れることで、エンジン自体の軽量化やアクセルレスポンスの向上も実現した。小型で低慣性のタービンを採用したのはその一因だ。ほんの少しだが、実際に走らせるとそんな感覚を得る。
つまり、ローマ同様アマルフィも電動化は行われていない。SF90ストラダーレや296GTB/GTSのようなモーターとの組み合わせはないのだ。フェラーリはそこでモデルの性格を区別している。電動化したものはサーキットを主戦場とし、そうでないものはよりストリート色を濃くするといった傾向になる。V12のNAユニット搭載車はその中間といったところだ。
これまでに感じたこのない快適さ


アマルフィはそんなポジションだけに、乗り心地がいいのが際立った。マネッティーノを“コンフォート”や“ウェット”にした時のフラットな乗り味がたまらない。ローマの時もそれなりに感心したが、今回は明らかにそれを上回る。路面をスーッと滑るように走る感覚はフランス車顔負けといった感じである。
考えてみれば、今回はそこに新機軸があるのかもしれない。というのも、どんなパワソースを積もうともフェラーリ開発陣はレーシーかつスポーティに仕上げるのは得意分野。マネッティーノを“コルサ”にすればわかるように、フェラーリらしさは爆発する。が、それを快適な方向へ誘うのは新たな試み。もちろん、これまでもその方向のクルマは輩出してきたが、それらは皆フェラーリという看板の上での快適さだった。が、今回は違う。フェラーリの枠を超えた心地よい乗り味を手に入れている。
普段使いに対応した快適さこそがアマルフィの本質

ということで、今回のキモはそこに集約される。スタイリングやエンジンパワー、ネーミングに気を取られるアマルフィだが、最大の魅力は普段使いに対応した快適さだ。その意味で、この分野におけるフェラーリ元年がアマルフィかもしれない。快適な乗り心地は、フェラーリとして強調するのに難しいポイントではあるが、アマルフィはそれをウリにした一台のような気がする。