新車試乗レポート
更新日:2025.12.30 / 掲載日:2025.12.30
《胸アツEV》ホンダ・Super-ONE驚きの実力大公開

ジャパンモビリティショー2025の会期中にホンダが開催した四輪技術ワークショップで、話題の「スーパーワン」にいち早く試乗! ショーでも大注目だった期待のスポーツEVの実力を明らかにしよう。
●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之/長谷川 徹
※本記事の内容は月刊自家用車2026年1月号制作時点(2025年11月中旬)のものです。
胸アツEV先行試乗! 《HONDA スーパーワン》驚きの実力大公開

軽規格にはおさまらない! これが新しい“ブルドッグ”だ!!
常識破壊! かつての「ブルドッグ」が復活
「Super‐ONE(スーパーワン)」を年配のクルマ好きが見たなら、「おっ!ブルドッグだ!」と盛り上がるはずだ。
ブルドッグとは、ハイトパッケージング採用のコンパクトカーとして誕生した、初代シティのターボⅡの愛称のこと。このモデルはインタークーラーやスクランブルブーストなどによる性能向上に加えて、パワーバルジの大型化、シルエットレーサーを思わせる張り出したダイナミックフェンダーなど、ひと目で識別できる個性的な外観も売りにしていた。
シティをベースに強化したスペックを引っ提げ、1980年代に国産ボーイズレーサーとして非常に人気を博したシティターボⅡ。軽EVの「N‐ONE e:」をベースにパワーアップさせたスーパーワンは、まさにかつてのブルドッグを思わせる。オジサン世代なら盛り上がらない訳がない。
実際、ドッカンターボで人気があったシティターボⅡのようなやんちゃな走りではないが、スーパーワンもパワフルな走りを楽しませてくれる。
注目は専用開発の「ブーストモード」の存在だ。この機能は、パワーユニット(電動モーター)の性能を最大限に引き出すとともに、7速ステップ変速を模した駆動力(加速度)制御を実現するもので、これと連動して、車内にはアクティブサウンドシステムの疑似エンジンサウンドが響いてくるなど、電動駆動のEVなのに、まるで内燃機スポーツを操っているような感覚を満喫することができる。

しなやかな走りも獲得し、このクラスをリード
もちろん、標準の走行モードではBEVらしい静粛性があり、加速も連続的。加減速からの巡航への移行なども洗練されたBEVらしいドライバビリティ。あくまでもブーストモードはお楽しみのひとつ、という位置づけだが、リズミカルなファントゥドライブを残したいという思いが伝わってくる粋なアプローチと思える。
フットワークも、あの時代のボーイズレーサーとは違う。予想外に乗り心地がいいのだ。試乗前は、ボーイズレーサーらしく、ハイグリップタイヤを硬いサスで押さえ付けるゴーカート感覚の乗り心地を想像していたのだが、スーパーワンは、サスストロークをしなやかに使うことで路面からの衝撃を上手にいなし、挙動を安定させてくれるタイプだ。
実際の開発では、英国の石畳路でテストを繰り返し、乗り心地を煮詰めたとのこと。ワイドトレッド化しているとはいえ、フットプリントは軽乗用車と大差ないのに、良質な乗り心地が際立つ。まるでひとクラス上のモデルのようだ。
バッテリー重量と低重心化の恩恵により、ベースとなったN‐ONE e:も乗り心地に優れているが、スーパーワンは路面当たりも、挙動の落ち着きも、明らかにランクアップ。単なるワイドトレッド化だけではなく、シャシー性能全体がグレードアップしていると考えるのが妥当だろう。
ハンドリングは、幅広い速度域や旋回半径において特性変化が少なく、神経質な補正が不要。ラインコントロール性を重視するタイプとなっている。キビキビした回頭性やキレの良さをアピールする、軽量小型のスポーツモデルとは異質の味付けだが、これもまた信頼と安心感を備えたひとクラス上のモデルであることを実感させてくれる。
キャビンスペースなどはN‐ONE e:と同じなので、実用面の適応用途は変わらないのだが、クルマとしての魅力は明らかに格上だ。走りのフィーリングのみならず、スペシャリティという視点でも、この新しい提案はこれまでの常識を軽々と超えてくる。
筆者世代には「ブルドッグ」がEVで復活するのが兎にも角にも面白い。そもそもホンダと言えば、こういったヤンチャな企画が面白く、ファンをとりこにしてきたメーカーだったことを今更ながらに思い出す。EVはちょっと……と敬遠していた従来のクルマ好き層にも響く可能性があるだけに、2026年の市販化がとても楽しみなモデルだ。

HONDA Super-ONE Prototype

走りと付加価値で軽規格からはみ出していく!
「e: Dash BOOSTER」をコンセプトに掲げ、日常の移動を刺激的で高揚感のある体験とすることを目指す。環境性能や日常での使い勝手の良さに加え、ホンダ独自の「FUN」の追求が特徴。「操る喜び」に、五感を刺激する演出を加え、刺激的で高揚感あふれる走行体験を提供する。張り出したダイナミックフェンダーや力強い表情、ローダウンフォルム、大径ホイール、エアロパーツが相まって、個性的なシルエットを楽しませてくれる。キャビンは軽モデル相応の広さ。内装はブルーを基調とし、走りの楽しさをアピール。前席は専用のバケットタイプシートを採用する。

ホンダが目指す次世代の走りを体験
HONDA Next Generation Hybrid Study

操る手応えと洗練度を追求
今回のワークショップでスーパーワンと並んで見逃せないのが、全開加速性能で10%、燃費で30%の向上を見込むホンダの次世代e:HEVを搭載したミッドセダン開発車両だ。
このプロトタイプは「第2世代e:HEV」を搭載。S+シフトは8速設定で、走行フィールはMT(マニュアルトランスミッション)車を彷彿とさせる。ガソリン車を操るような感覚がプレリュード以上に強く、スポーツモデルを思わせる排気音も採用されている。
シャシー設計には「弾性設計」を導入。これは車体骨格の歪みを積極的に利用し、サスペンションの動きの一部として取り入れる技術で、実際、荒れた路面でも突き上げ感が少なく、滑らかで洗練された乗り味と安定した接地性が体験できた。