新車試乗レポート
更新日:2025.12.15 / 掲載日:2025.12.15
見て楽しい、乗って優しい。新型ルークスの実力はトップクラスだ!【工藤貴宏】

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス
動的な質感で軽スーパーハイトワゴンのトップレベルに立ったかも。フルモデルチェンジした日産の軽自動車「ルークス」を試乗していて、ふとそんなことが頭をよぎりました。
熾烈な競争が繰り広げられるスーパーハイトワゴン

まずは軽自動車を取り巻く環境から触れておきましょう。今どきの軽乗用車は「スーパーハイトワゴン」と呼ばれる背が高くスライドドアを組み合わせたタイプが主流。その販売比率は年々高まっていて、昨今は軽乗用車全体の5割を超える人気ジャンルとなっています。
そのなかで、泣く子も黙るトップセラーとなっているのが「ホンダN-BOX」。販売台数は軽乗用車でナンバーワンというだけでなく小型車や普通車も含めた日本の乗用車でトップに君臨するのだから、もはや「国民車」と言っていいでしょう。
当然ながらライバルたちは「追いつけ!追い越せ!N-BOX」という意気込みでクルマを作りこみ、このところ「スズキ・スペーシア」と「ダイハツ・タント」が“N-BOXの次”を争っている状況。販売台数ではそこまで届かないものの個性派で存在感が大きいのが「三菱デリカミニ」というわけです。
「角丸」デザインで存在感が大幅アップ

そんななかで、これまでも「クルマがいいのに売れ行きがついてこない」と言われていたのがルークス。新型を担当した日産の商品企画担当者は「認知度があまり高くなかった。イメージが薄かったことに理由があると思っている」とその理由の分析を教えてくれました。たしかに、「よく見かけるN-BOX」とか「キャラが立っているデリカミニ」などに比べるとルークスってこれまでは存在感が薄かったような気が。言われてみれば筆者もそう思います。
そこで新型ルークスを開発するにわたり商品企画側から考えたのは「存在感/認知度を高めること」。そのため記憶に残るようなデザインやイメージとしたかったのだそうです。
……そんな視点から新型ルークスをみると、商品としての狙いが良くわかる。まずデザイン。言葉を選ばずに言うとどことなくかつての日産のコンパクトハイトワゴン2代目の「キューブ」に似ていませんか?
デザインテーマは「かどまる四角」なんだそうですが、ヘッドライト内部やグリル、テールランプ、そしてホイール。インテリアはヘッドレストやメーターも四角とし、こだわりがとことん貫かれています。
ひとめでキューブ……じゃなくてルークスだとわかるデザインであり、個性的で記憶に残る意匠はしっかりと実現できている。これならライバルたちと並べても埋没しませんよね。そしてデザイン雑貨みたいでオシャレ。そうそう、こういうのを求めていたんですよ。無難なデザインなんていらないのです。
運転のしやすさを追求した新型ルークス

もうひとつのポイントは「ドライバーファースト」としたこと。こういったスーパーハイトワゴンは「ファミリーが快適で便利に」といったコンセプトとするのが一般的ですが、新型ルークスはちょっと違う。
ただし「ドライバーファースト」とは言っても“意のままに操れるコーナリングが楽しい”とか“運転している気分が高揚してくれる”なんてことではなく、運転しやすいクルマという意味。軽自動車としては初めての採用となる、画面上で疑似的にボンネット下が透過して見えて前輪の位置が良くわかる「インビジブルフードビュー」や自車を周囲から立体的にみられる「3Dビュー」、そして見通しの悪い丁字路などで目視では確認できない左右から近づいてくるクルマが確認できる「フロントワイドビュー」などを用意するのは「運転に苦手意識を持つようなドライバーでも安心して運転できるように」という配慮から。ドライバーがストレスなく運転できれば、同乗者にも優しくて「みんなハッピー」という理論です。そうきたか。

そういうコンセプトは他のライバルと違うかもしれません。というか違いがいますよね。でも他と同じことをやっているよりも、独自性を出していったほうがいいと筆者も思います。そういう意味では新型への変更は、ルークスのリブランディングと言っていいでしょう。
問題は、実際の商品がユーザーの満足度を満たせるかどうか。正直なところ室内は広めではあるものの「ライバルに対して明確に広いか?」といえばそうではないし(理由はどれもハイレベルすぎるから)、運転サポート機能以外の飛び道具といえば、(前述の運転サポート機能とセットで)オプションで用意しているナビがGoogleビルトインタイプとなっていることくらい。早い話がGoogleマップだから目的地入力などは指で操作する必要なく対話型の音声入力だけでできてしまうのでとても便利ですが、やや高価だし、それだけでクルマを選ぶかと言われればまた微妙。
ただ、スタイリングや先進感あふれるダッシュボードも含めたインテリアのデザインはかなり魅力的で、それが気に入ったらそれだけで選ぶ理由になり得るかなと思うのも正直な気持ちです。だって、この個性的なデザインだけでルークスを選びたくなりませんか?


ふらふらしないから疲れない、同乗者にもやさしい走り

そして今回、公道試乗して発見したのは、新型ルークスにはもうひとつ選ぶべき理由があるということ。走りです。
まず、操縦安定性がとってもいい。具体的にいえば曲がるときの「グラッ」と来る背の高い感覚が日常領域では皆無に等しく、クルマが振られる感じが少ない。だから安心して運転できるし、疲れない。ひとまわり大きな車体の、もっと背の低いクルマを運転しているかのような感覚です。これはビックリしました。
そのうえで乗り心地もよくて、快適。ドライバーだけでなく同乗者にも優しいクルマですね。
何を隠そうこれまで、その性能でトップに立っていたのはN-BOXでした。しかし新型ルークスはそこに並んだ、もしかすると超えたかも?と思わせるレベル。それは声を大にして伝えておきたいところです。ボディコントロールが素晴らしく、地に足が付いた感がとっても好印象です。
動力性能はどうか。まず試乗したのは自然吸気エンジン搭載車ですが、その加速もビックリ。加速がスムーズで、エンジンが唸るといった「頑張っている感」もなくスルスルと速度を上げていくのです(音が静かなのも驚き)。まさに軽やかな走り。街乗りであれば、よりハイパワーなターボエンジンを選ぶ必要はないかもしれません。試乗後に開発者から話を聞いたところ、CVTの制御がかなり効いているようですね。
ただし、速度が50キロを超えてくると自然吸気エンジンはさすがに辛い。高速道路の合流などはパワー不足を感じ、ターボエンジンが欲しくなってきます。高速道路や峠道を走ることがあるなら、ターボを選ぶのがいいでしょう。エンジンの余力が増すことで、運転が疲れにくくなります。
新型ルークスのおすすめグレード

最後に、そんな新型ルークスのグレード選びについても触れておきましょう。コスパ重視なら「X」。非接触式キーや助手席側の電動スライドアなど「今どきのクルマなら欲しい」という装備は備わっています。
そのうえで内外装の見栄えを良くしたいなら「ハイウェイスターX」がいいでしょう。ハイウェイスターというネーミングながら“エアロカスタム仕様感”は無くてデザインは上質方向。装備は運転席側スライドドアも電動開閉式へとアップグレードされます。




そして、高速道路や峠道を走るならターボエンジンを積む「ハイウェイスターGターボ」一択ですね。加速が違うだけでなく、同じ加速をするならばエンジン回転数が低く済むので自然吸気エンジン車よりノイズも静か。ロングドライブでも疲れにくいのも見逃せないところです。
高速道路で車線の中央をトレースするようにハンドル操作をアシストしてくれる「プロパイロット」の選択は好み次第でいいでしょう。