新車試乗レポート
更新日:2025.12.02 / 掲載日:2025.12.02

レクサス LSに見たジャパニーズサルーンの本質【九島辰也】

文●九島辰也 写真●レクサス

 今年開催されたJMS(ジャパン・モビリティ・ショー)で話題となったレクサスブースの六輪ミニバンを覚えていますか? 名前は「レクサス LSコンセプト」。レクサスのフラッグシップであり、1989年のスタート時のシンボルとなったLSの未来を示唆したものです。LSは“ラグジュアリーセダン”ではなく、“ラグジュアリースペース”という解釈のもと生まれました。

レクサス LSコンセプト

 フラッグシップが大型ミニバンになるのは不思議ではありませんが、六輪というのがポイントとなります。きっとBEVにしてインホイールモーターを内蔵するのでしょう。内燃機関で動かすとなると、プロペラシャフトが必要になりますし、ディファレンシャルも大きなものが2つ必要になります。つまり、それだけエネルギーロスが増え、フリクションが大きくなりますから実用性は薄れます。

 でも、リアの四輪をインホイールモーターで協調制御させれば複雑な機構はいらなくなるでしょう。そして、その径が小さければ三列目シートに直接アクセスできるから都合がいい。これまでの課題が一挙に解決されます。まぁ、あくまでもコンセプトなのですぐに云々というわけではありませんが、おもしろい。BEV化がこれまでの常識を変えてくれます。

レクサス LS500h EXECUTIVE

 そんなレクサスLSコンセプトですが、現行型はどうなっているかというと、実は今年9月に一部改良が施されていました。今どきビッグセダンはなかなか話題になりませんが、しっかり進化しています。トヨタグループが意図するAlways Onの精神です。

 内容は、人気のエクステリアカラーを全車で選択できるようになったり、フロントおよびリアシートヒーターを全車標準装備したりするものです。カスタマー目線で言えば、選びやすくなりました。また、Fスポーツのオプション設定にあるブレーキキャリパーを意匠変更しています。赤いキャリパーにシルバーのロゴが入るので、見た目にスタイリッシュに感じられます。

レクサス LS500h EXECUTIVE

 なんてことを踏まえ、先日久しぶりにLSのステアリングを握りました。およそ2週間のバーチャルオーナー体験です。

 レクサスからお借りした広報車は、LS500h EXECUTIVEです。グレードの中のトップレンジで、価格は1700万円オーバー。2WD(FR)とAWDがあり、その前者でした。パワーソースはハイブリッドで、主役は3.5リッターV6になります。最高出力は299ps、最大トルクは356Nmを発生させます。モーターのアシストがあるので、これ以上の体感を得られます。

 特徴はやはりサイズでしょう。全長5235mmは正直デカい。家の駐車場に入れたところ、鼻先が飛び出ていました。ホイールベースが3125mmですからそうなります。以前はショートボディもあったんですけど、その役割からロングホイールベースのみになりました。リアシート優先が多いということでしょうね。その意味ではしっかりマーケットニーズに応えています。

レクサス LS500h EXECUTIVE

 では乗った印象ですが、ハッキリ言って快適そのもの。今回は2週間のうちに三度ゴルフ場へ向かいましたが、いずれも快適なドライブでした。乗り心地の良さはもちろん、ステアリング操作にストレスはありません。電子デバイスが常に周辺を見張っていてくれて、クルマが近づいたり障害物があればアラームで教えてくれます。なので、走り出せばサイズは一切気になりません。駐車時も同じです。アラームが障害物を知らせてくれるので、それを信用すればスムーズ。かなり際どくなると自動ブレーキが作動するのも慣れました。

 加速は申し分ないし、コーナリングも安定しています。高速道路のジャンクションで若干アンダーステアが出ますが、それとて速度調整してあげれば問題なし。思いのほか高いスピード域でコーナーを抜けます。パワステの重さも嫌いじゃありません。245/50R19のタイヤサイズは悪くないと思います。あまり大きなホイールを履くのは下品になりそうなので、このくらいで十分とどめておきましょう。

 ということで、JMSの「LSコンセプト」をきっかけに久しぶりにビッグセダンを運転しました。もう開発からけっこう時間が経っているので基本骨格に古さを感じないわけではありませんが、高級サルーンとしてのレベルは高い気がします。と同時に、ジャパニーズサルーンの本質がここにあるような。いずれにせよ、一時代を象徴するクルマであることは間違いなさそうです。

 

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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