新車試乗レポート
更新日:2025.11.25 / 掲載日:2025.11.25
【ランボルギーニ】テメラリオはインテリジェントな猛牛【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ランボルギーニ
先日ランボルギーニ・テメラリオ(Temerario)のステアリングを握りました。場所はコーンズが運営するTHE MAGARIGAWA CLUB(ザ・マガリガワ・クラブ)。メディアと顧客を招いての試乗会です。
テメラリオに関してはちょうど一年前にこの連載で記事にしたことがあります。東京の国立競技場で行われた「ランボルギーニ・デー2024」でアンベールされたので、その時の模様を書きました。クルマもそうですが、競技場のフィールドに設置されたステージをすぐ側から見たのを覚えています。インフィールドに足を踏み入れたのは初めてでしたから強く心に残りました。ここで競技をしたアスリートの目には観客席は意外と近く見えるものです。

それはともかく、今回テメラリオを目の当たりにした印象は、その時よりも「思いのほかランボルギーニ然としている」というものでした。レヴエルトもそうですが、新世代ランボルギーニはオーセンティックなデザインになったことで個性は薄まりました。それまではどこか強いクセというかアクセントを付けていましたが、それがレヴエルトもテメラリオも良い意味でフツーになっています。“フツー”と言ってもスーパーカーですからね。いわゆる普通ではありませんが。
ですが、全体のフォルムや塊はしっかりランボルギーニしていました。今にも暴れ出しそうな猛獣・猛牛感は生きています。なんでしょうこの感覚。エンジンを切って隅に置いてあるテレラリオはまるで檻の中で眠っている野生動物のようです。低く構えたスタイリングとワイドボディがそう思わせます。

見た目もそうですが、猛獣感はパワーソースにもあります。サンタアガサ・ボロネーゼでゼロから設計・開発した4リッターV8ツインターボエンジンをメインとするハイブリッドシステムがそうです。エンジン単体の最高出力は800cvで、システム最高出力は920cvに達します。これを9000回転以上で発生させ、かつ10000回転まで回すというから恐れ入ります。もはやバイクですね。モーターもブースト機能として存分に使います。最高速度は343km/h、0-100km/h加速は2.7秒を叩き出します。
ちなみに、この試乗では軽量化した車両のアレジェリータパッケージが用意されていました。各部にデザインし直したカーボンパーツを装着したモデルです。これまで、スーパーレジェーラと呼ばれていた類となります。スタンダードモデルに対し25キロの軽量化と+67%アップしたトータルダウンフォース、+62%の空力効率を手に入れました。きっとこの仕様は開発段階から考えられていたことでしょう。やはりランボルギーニの車両重量へのこだわりは強いと考えられます。

では、実際に走らせた印象ですが、とにかく速いクルマでした。THE MAGARIGAWA CLUBはそれなりに直線があるので、270km/h以上体感できます。そして強力なストッピングパワーを発揮。ガツンと制動力を熱エネルギーに変えてスピードを抑え込みます。お見事なのはその時のクルマの姿勢で、深いフロントダイブをさせないようなるべくフラットな状態を保とうとします。そうすることで、ブレーキ直後に作りたいコーナリング時の姿勢に入れるからです。また、直線ではパドルシフトで10000回転へチャレンジしました。同乗したインストラクターの指示です。デジタルゲージ上9700回転あたりからレッドゾーン突入ですが、10000回転でしっかりリミッターに当たります。エンジンを壊さない意味では、リミッターは重要な役目を果たします。
走りに関してはドライブモードで大きく変わります。今回は特別な場所なので、SPORTとCORSAを使いましたが、この他には、CITTA/STRADAがあり、モードによってはEV走行を可能にします。早朝、サーキットやゴルフ場へ行くときにきっと役に立つことでしょう。一方CORSAの先にはCORSA ESC OFFが待ち構えています。サーキット走行において腕に自信のある方はそちらをどうぞ。

ということで、新世代のランボルギーニをまた一台体験しました。レヴエルトに続いてのテストドライブです。ここまでで言えるのは、これまでにはなかった安定感を持っていること。以前のようなコントロールの効かないジャジャ馬ではなく、パワフルかつジェントルな乗り物になっています。ちょっと印象が変わってきました。スーパーカーとして魅力的ですね。これから先もぜひこの路線で進んで行ってもらいたいものです。