新車試乗レポート
更新日:2025.10.28 / 掲載日:2025.10.28
新型プレリュード・魅力研究《実走テスト & MORE ! 》
ティザー展開で大きな注目を集めていた令和のプレリュードがいよいよ正式デビュー! オールドファンに強い印象を残すネーミングが復活するわけだが、四半世紀近いブランクを経て継承されたものはあるのだろうか。気になるその魅力に迫る。
●文:川島茂夫 ●写真:澤田和久
HONDA 新型プレリュード・魅力研究&先行試乗
ラグジュアリークーペの華麗で気品あふれる佇まい。息をのむ美しさだ!

同乗者もともに楽しめる角の取れた滑らかな走り
ホンダ四輪の黎明期とは言わないまでも、プレリュードはシビック、アコードと並び乗用車メーカーとしてのポジションを確立させた一車に数えてもいいだろう。中でも2〜3代目はデートカーとして一世を風靡し、スペシャリティカーブームの牽引役にもなった。しかし、インテグラの登場などもあり、1996年に登場した5代目の生産終了でラインナップから消滅。そして24年振りの再デビューとなったのがこの新型である。
ファストバックのクーペといえば走りに振ったマニアックなスポーツ性が売り物のように思える。とくに新型は基本的にサス回りをシビックタイプRと共用することからもスポーツカーと誤解されそうだ。もちろん、ファントゥドライブは新型の特徴であり、次世代型の制御や機能を導入した新世代のe:HEVや介入領域を拡大したAHAなどは操る悦びも機能開発の要点となっているが、実はそれは見所のひとつでしかない。
e:HEVは高速巡航では固定ギヤ比のパラレル制御を行うが、それ以外はシリーズ制御で走行。試乗コースではほぼ全行程ともシリーズ制御だった。つまり、エンジンは発電機として稼動。しかし、エンジンはステップ変速のように回転数を変化させる。e:HEVはこれまでも多段変速風に振る舞っていたが、プレリュードはとくにその印象が濃い。さらにS+シフトを選択すればコンフォートモード以外は車内スピーカーから疑似エンジン音が上乗せされる。

エンジン回転数の上限は走行モードによって異なり、コンフォート/GT/スポーツの順に高くなっていく設定。厳密には速度と回転数の関連は多段変速とは異なるのだが、体感的には多段変速そのものであり、シフト操作でリズムを刻むようなドライビングが心地よくもある。
生のエンジン音は静かであり、疑似エンジン音もさほどではない。助手席乗員へのストレスとならず、クルマとの対話感を楽しむあるいはツーリングのBGMにほど良いレベルなのが妙味だ。
付け加えるならコンフォートモードが最も燃費に優れるイメージがあるが、WLTC燃費計測時の走行モードはGTで、Dレンジでの走行とのこと。S+シフトを選択しても燃費への影響は極めて少ないという。GTモードが省燃費というのもプレリュードの走りを理解する要点のひとつだ。
ドライバーにも同乗者にも「いい感じ」の走りはフットワークにも当てはまる。電子制御ダンパーを採用したのも好感触のひとつなのだが、段差乗り越えでもコーナリング時の挙動でも負荷方向以外の揺れや揺れ返しが少ないのが最も印象的だった。激しい変化が抑えられていて、挙動全般がしっとりとしていて据わりがいい。
ハンドリングは過不足ない追従性が特徴。最近のホンダ車に共通のタイプであり、過敏な反応がなくスムーズなコントロール性を維持。タイトコーナーと高速コーナー、低横Gから高横G旋回まで操縦特性の変化が少ない。
定常円旋回から加速に移っても後輪へ荷重が掛かっているので、FR車を思わせるようなコーナリング感覚もある。どこでも弱アンダーステアで、加減速を用いたラインコントロールも容易。きれいな走りを苦労なく行える。これも同乗者に好印象なポイントだ。
走行モードにより減衰力制御が変更されるが、速度が高いあるいは高横G領域ではコンフォートモードを選択していても操安寄りの制御に移行するようで、走行状況に応じて走行モードを選び分ける必要はなかった。どちらかと言えば楽しみ方と気分次第で選び分けるモード設定といえる。
ドレス姿で乗車してもおかしくない内外装デザイン。成人が座るにはヘッドルームが不足しがちな後席も、余剰スペースとしてインテリアの雰囲気を落ち着かせている。言うまでもなく後席を倒せば大きな荷物も積み込める。
国産のクーペ系といえばフェアレディZやGR86などが思い浮かぶが、いずれもかなりスポーツ性に偏っており、プレリュードとは路線が異なる。コンセプトで言えばやはりかつてのレクサスRCに近い。ラグジュアリークーペのコンセプトをまさに今、この時代の解釈で新たに創り出したのが新型プレリュード。二人で豊かな時間を紡ぐカップルズツアラーなのだ。
HONDA 新型プレリュード
●価格:617万9800円〜648万100円 ●発売日:9月5日
スタイリングも走りも上質さを追求
オールドファンには懐かしい名前を継承するホンダの新型スペシャリティスポーツ。流麗なフォルムを持つ4人乗り2ドアクーペで、基本的に仕様はひとつ(カラーリング違いのWEB販売限定車はある)。ホンダ自慢のスポーツハイブリッド「e:HEV」を搭載し、「操る喜び」を追求する。



新型プレリュード主要諸元
●全長×全幅×全高(㎜): 4520×1880×1355 ●ホイールベース(㎜):2605 ●最低地上高(㎜):135 ●車両重量(㎏):1460 ●パワートレーン:1993㏄直列4気筒DOHC(最高出力:141PS/6000rpm、最大トルク:18.6㎏・m/4500rpm)+フロントモーター(最高出力:135kW、最大トルク:315N・m) ●駆動方式:FF ●変速機形式:電気式無段変速機 ●WLTCモード燃料消費率(㎞/ℓ):23.6 ●サスペンション前/後:マクファーソン式/マルチリンク式 ●ブレーキ前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク ●最小回転半径(m):5.7 ●燃料タンク容量:40ℓ(レギュラー) ●タイヤサイズ:235/40R19
新型プレリュード主要装備
●HondaSENSING〈衝突軽減ブレーキ(CMBS)、誤発進抑制機能、後方誤発進抑制機能、近距離衝突軽減ブレーキ、歩行者事故低減ステアリング、路外逸脱抑制機能、渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC)、車線維持支援システム(LKAS)、トラフィックジャムアシスト(渋滞運転支援機能)、先行車発進お知らせ機能、標識認識機能、アダプティブドライビングビーム、ブラインドスポットインフォメーション、後退出庫サポート、パーキングセンサーシステム、急アクセル抑制機能〉 ●アジャイルハンドリングアシスト ●ヒルスタートアシスト機能 ●アダプティブ・ダンパー・システム ●VGR(可変ステアリングギアレシオ) ●メタル製パドルシフト ●Google搭載9インチ Honda CONNECT ディスプレー+ETC2.0車載器 ●ドライブモードスイッチ(SPORTモード、GTモード、COMFORTモード、INDIVIDUALモード) ●アクティブノイズコントロール ●アクティブサウンドコントロール

新型プレリュード《エクステリア&パッケージング》





新型プレリュード《キャビン&ユーティリティ》









新型プレリュード《メカニズム&装備》








新型プレリュード《純正カスタマイズ》
純正アクセサリー装着車「Sports Style」



「MUGEN PRELUDE」


「タイプR」でも「RS」でもない「スペシャリティスポーツ」とは——

コース上の速さではない、公道の高性能
プレリュードの開発では航空機の終着点のひとつであるグライダーがコンセプトの背景にされている。上昇気流を捉えたソアリングを想像すればロードセーリングを謳う「RS」系とも被る。心地よいツーリング性能とファントゥドライブの融合を求めた車種だ。その点ではタイプRとユーロRの違いにも似ている。ユーロRはかつてアコードに設定されていたスポーツ仕様。絶対的な速さを求めて限界性能を磨き込むタイプRに対して高速長距離ツアラーとしての高性能を基本とする。

【タイプR】
サーキット最速FFを目指してインテグラを徹底的にチューニングしたのがタイプRの始まり。その後もタイプRを冠したモデルはサーキット最速が基本コンセプトとなった。ただ、最大負荷で最高の性能を発揮する設定のため、乗り心地を筆頭に一般走行では乗車ストレスは多め。とくに同乗者がいる場合は運転に気を使わされるのが泣き所。

【RS】
別項でも述べたが、プレリュードの走りは系統的には「RS」系と近い。予見性の高い挙動や乗り味、ドライバビリティにより運転ストレスや乗車ストレスを軽減。速さよりも質を求めた高性能が特徴。フィットやN-ONEでもツーリング&スポーティな上級グレードとして設定されている。この系統の最上位に位置するのがプレリュードとすれば納得。


