新車試乗レポート
更新日:2025.09.19 / 掲載日:2025.09.19
小さくてカワイイ! インスタークロスの意外な実力【竹岡 圭】【ヒョンデ】

文●竹岡 圭 写真●ユニット・コンパス
「この前インターネットで見かけたんだけどね。あっ、そうそう、これこれ。これってなんていうクルマ?」という質問、本当に多かったんです。少なくとも今年上半期では、ナンバー1だったと思います。男女比率としては女性が多かったですが、男性もチラホラと。年齢構成は20~40代といったところ。今年の上半期、比較的若めの女男層が「これって、なぁに?」と、気になったのがインスターだったというわけなんです。ちなみにインスターは2025年1月の東京オートサロンで発表、4月に発売。インスタークロスは2025年8月先行予約が開始となりました。
個性的なデザインは若手デザイナーによるもの

さて、インターネットで見かけて…ということですから、気になった理由は、なんといってもデザインだと思います。確かにコレは、一度みたら印象に残るデザインですよね。ちなみに、インスターもインスタークロスも、若者のライフスタイルに寄りそうクルマとして開発が行われ、若手デザイナーさんたちが、自分が乗りたいクルマをカタチにしたんだとか。それがその層にきっちり刺さっているのですから、大したものですよね。
デザインのモチーフとなったのは、アップルウォッチとロボットだそうで、フードバンパーはアップルウォッチをイメージ。そう言われると確かに、角が取れた四角い液晶の感じが、フロントマスクに表れていますよね。
そしてロボットと言われるのは、やはりピクセルグラフィックでしょう。IONIQ5でも使われていましたが、未来的な印象とホッコリ柔らかな温かみを上手く調和させ、アイコニックなキャラクター感を生み出しています。
さらにすごいなぁと思ったのは、ボディカラーが9色。2トーンルーフのオプションも用意されていて、インテリアはナント3タイプを用意していること。インテリア3タイプ用意って、このクラスのクルマだと最近はあまり見かけません。でもやはり、プライベートカーとなることが多いこのクラスだからこそ、色が多展開から選べるというのは嬉しいポイントだと思います。乗っている間はインテリアしか見えないですしね(笑)。素材も環境配慮素材が使われています。
インスタークロスの方は、フロントマスク等を少し変えてアウトドアテイストに仕上げられている他、専用ルーフバスケットを装備しているのがポイントです。ルーフには75kg、ラゲッジと合わせて最大300kgまでの荷物を載せられると言いますから、アウトドアギアも問題なく積めると思います。こちらの方がイマドキ感があるかもしれませんね。アウトドアテイストではありますが、最低地上高は同じだそうです。



装備の充実ぶりにびっくり!

ボディサイズは、全長3830mm(インスタークロスは3845mm)×全幅1610mm×全高1615mm(インスタークロスは1715mm)。立体駐車場には入りませんが、軽自動車と5ナンバーサイズの間くらいのサイズなので、取りまわしはラクラク。最小回転半径も17インチタイヤを履きながら5.3mに収まっています。
また、ホイールベースが2580mmもあり、後席スペースは広々。後席は16cmのスライドと14度のリクライニングも備えているので、大人2名がゆったりと寛げるハズです。
そして、インテリアでビックリするのは、装備のスゴさです。100V電源や置くだけ充電なんていうのはもちろんのこと、シートヒーターはおろか、シートベンチレーターまでついています。ただし、せっかく広い後席はUSBポートはあるものの、後席用のカップホルダーがないので、惜しいのはそのあたりでしょうか。
BEVならではのスペックも書いておきますと、駆動用バッテリー容量は49kWh、航続距離はカタログスペックでインスターが458km。インスタークロスが393km。出力はどちらも最高出力85kWh、最大トルク147Nmとなっています。V2Lはもちろん、V2Hにも対応しているので、動く充電池と考えても使いやすいと言えますね。
安全装備も充実しています。興味深いのがペダルの踏み間違い防止機能で、なんとこれは日本車を参考に開発したんだそう。停車及び停車後、前後1m以内の障害物を検知して、0.25秒以内にアクセルを床まで踏み込んだというのを検知して作動するようになっています。誤動作を考慮し、相当強く踏まないと作動しない設定となっていて、例えば踏切などに閉じ込められたとか、なんとしても出ないといけない場合は、ドライバーの意思でクルマを動かせるようになっています。




日本向けチューニングのおかげで走りも快適

さて、走り味ですが、BEVということもあり、静粛性の高さ、乗り心地の快適さ、そしてFun to driveを重視したセッティングにしたんだそう。車両重量が重いので、サスペンションの設定とステアバイワイヤのパワーステアリングのステアフィールの設定が難しかったとのことでした。
ユニークだと思ったのは、韓国と日本の路面の違いと乗り味の好みの違いです。日本の道路、特に高速道路等はつなぎ目が多いこともあり、乗り心地的には韓国より日本の方が、ソフトなものが求められる傾向にあるんだとか。また、道路がクネクネと曲がっているところが多いため、ハンドルを操作する頻度が高いこともあり、韓国に比べて日本の方が、低速度ではステアフィールが軽いものが好まれる傾向にあるんだそうです。
もちろん、日本仕様は日本の道路に対応するために、アドバンスドバルブを使ったサスペンションは縮側の減衰力を低減し、伸側を増加することで乗り心地の良さを確保。パワーステアリングは、都市住宅モードと判定すると、アシスト電流を増加する設定として、細いクネクネ道にも対応しています。
他にも、ステアリング振動を抑えるため、モーターマウントにハイドロブッシュを採用したり、足まわりに入力される前後上下の衝撃を吸収するために、リアのトレーリングアームにディアルコンパウンドのブッシュを採用。ゴムの硬度を変えることで、衝撃を吸収しつつ、横剛性は向上させるなど、さまざまな工夫を凝らしたとのことでした。
実際乗ってみると、これは確かに日本の道路にきっちり合わせこんできたなという仕上がりで、静粛性はBEVの中でも高いほうだし、乗り心地も凸凹乗り越しのいなし方も上手で、重量感を感じさせず上質な仕上がり、ステアフィールも自然なフィーリングにまとめられていました。ウインカーレバーも右側に設えられ、日本車から乗り換えても違和感なく操作できるハズです。後席に乗った方からも、ちょっと驚いたという賞賛の声が上がっていました。
日本のコンパクトカーを研究した力作
なんでも、ベンチマークとしたのは、日産 サクラとトヨタ bZ4Xだそう。日本の軽自動車とコンパクトカーをトコトン研究して送り出してきたモデルだけのことはある、と納得させられる仕上がりでした。是非一度乗り比べてみてはいかがでしょうか。