新車試乗レポート
更新日:2025.08.27 / 掲載日:2025.08.27
スライドドア採用! 新型ムーヴ実力判定!
DNGAの効果や如何に!?
スズキ・ワゴンRとともに軽ハイトワゴンカテゴリーをけん引してきたダイハツ・ムーヴが、ついにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用という大変革も話題を呼び、発表1か月で受注は月販目標の5倍となる約3万台に及ぶ。これは単なる話題先行なのか、それとも……気になるその実力に迫る。
●文:まるも亜希子 ●写真:奥隅圭之/澤田和久
伝統×革新=「王道」
余裕のターボ

主要諸元 ムーヴRS(FF) ●全長×全幅×全高(㎜):3395×1475×1655●ホイールベース(㎜):2460●最低地上高(㎜):150●車両重量(㎏):890●パワートレーン:658㏄直列3気筒DOHCターボ(64PS/10.2㎏・m)●変速機形式:CVT●WLTCモード燃料消費率(㎞/ℓ):24.3●最小回転半径(m):4.7●燃料タンク容量:30ℓ(レギュラー)●タイヤサイズ:165/55R15
カジュアルなNA

主要諸元 ムーヴX(FF) ●全長×全幅×全高(㎜):3395×1475×1655●ホイールベース(㎜):2460●最低地上高(㎜):150●車両重量(㎏):860●パワートレーン:658㏄直列3気筒DOHC(52PS/6.1㎏・m)●変速機形式:CVT●WLTCモード燃料消費率(㎞/ℓ):25.3●最小回転半径(m):4.4●燃料タンク容量:30ℓ(レギュラー)●タイヤサイズ:155/65R14
スライドドアを採用し、デザインを1タイプに
1995年誕生の初代から累計340万台以上を販売し、スズキ・ワゴンRとともにハイトワゴン軽カテゴリーの代表格として人気を牽引してきたダイハツ・ムーヴ。通称「裏ムーヴ」と呼ばれたカスタムデザインを早くから設定し、そのトレンドを作ってきたのもムーヴだった。しかしこの度フルモデルチェンジで登場した7代目ムーヴは、リヤドアをヒンジ式からスライド式に。これは近年、軽自動車市場においてスライドドア車が6割を占めるまでに拡大している事情を反映したもので、子育て世代に人気のタントと女性に人気のムーヴキャンバスの間を担う「王道」として、新型ムーヴを位置付けていることを感じさせる。メインターゲットを60代前後の「子離れ層」にしぼり、ほどほどの全高に抑えた広すぎない室内空間と、所有する喜びを重視したスタイリッシュなデザインにこだわりを注いだモデルとなっている。
そのデザインは今回、伝統のカスタムを廃止し、男女ともに受け入れられる端正で凛々しいジェンダーレスデザインに一本化。箱型が目立ってしまいがちなスライドドア車でもAピラーを寝かせ、スタイリッシュに見せることに注力したという。さらにオプションで「アナザースタイル」を設定し、「ダンディスポーツ」「ノーブルシック」の2つのスタイルで多様化するニーズに応えていく。
インテリアではデザイン性と機能性をバランスよく両立した。傾斜したAピラーの横にはクォーターウインドウを備え、メーターをステアリングホイールの内側から見る位置に置き、低く抑えたダッシュボードでパノラマ視界を確保。センターに大きなディスプレイやエアコン、シフトレバーなどを集約して配置し、使いやすさ、わかりやすさにもこだわった。シートは骨格などをムーヴキャンバスから引き継ぎ、表皮では通気性と肌触りの良い素材を厳選。ドア側のアームレストにも同素材を採用し、全体の統一感や上質な雰囲気をアップしている。
注目の後席は、厚みのある座面と大きな背もたれでゆったりと座ることができ、頭上・足元ともたっぷりとした余裕がある。身長165㎝では頭上が拳3個、足元が拳6個分もの広さだった。他車では設定のあるセンターアームレストがないのは寂しい気もしたが、ターゲット層的に普段は1〜2人乗車が多いことを考慮すると、それも妥当かもしれない。後席のシートアレンジは5:5分割で前後スライドが240㎜と長く確保されており、リクライニングも個別に可能。人がくつろげる居住性のよさと、荷物に合わせたフレキシブルなアレンジができるようになっている。前倒しをした際にやや段差が残るのは惜しいところだが、拡大したラゲッジスペースは十分な広さがあり、アンダーボックスも深さがあるので、荷物を分けて積載できるのも便利だ。またバックゲートが樹脂製で軽量かつ、全高を1655㎜(4WDは1660㎜)に抑えていることで小柄な人でも比較的開閉しやすく、手をかけるグリップが左右に備わるところにも感心した。
新型ムーヴのプラットフォームは2019年にタントから投入したDNGAを継承。パワートレーンにはダイハツ最新のKF型エンジンと、自然吸気モデルには改良型CVT、ターボモデルにはギヤ変速機構を加えたD‐CVTを搭載している。スライドドア採用によって従来より40㎏ほど車両重量が増加しているが、試乗してみると14インチタイヤ装着の自然吸気モデル「X」でも発進直後からしっかりとした安定感と余裕のある加速フィールが得られる。低速から中速にかけてCVTの制御にやや雑味を感じた場面もあったが、ステアリングの応答性が自然で思い通りに操作できる安心感が高い。前方視界だけでなく後方視界も広く確保されており、運転しているとスライドドア車であることを忘れるほどだ。
15インチタイヤ装着のターボモデル「RS」はさらにパワフルで安定感がアップ。開発者によればターボはアクセルのスロットル特性などを最適化し、歴代ムーヴらしいキビキビとした軽快感も意識したとのこと。伝統と革新が見事に融合した新型ムーヴの誕生だ。
DAIHATSU ムーヴ
●価格:135万8500〜202万4000円 ●発表日:’25年6月5日









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