新車試乗レポート
更新日:2025.07.29 / 掲載日:2025.07.29
売れてるモデルYが大改良。サイバー顔の新型をチェック!【工藤貴宏】【テスラ】

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス
2024年の新車販売台数をグループ別でみると、もっとも多くクルマを売ったのが日本のトヨタグループで約1082万台。次はドイツのフォルクスワーゲングループで約903万台。そして韓国のヒョンデ・起亜自動車グループで約723万台。以下、GM(ゼネラルモーターズ)、ステランティス、そしてフォードにBYDと続きます。
では、2024年に世界でもっとも売れたクルマは?
モデルYは2年連続で世界で販売台数ナンバー1

トヨタの「カローラ」や「RAV4」もたくさん売れましたが、世界ナンバーワンではありません。フォルクスワーゲンの「ゴルフ」や「T-ROC」でもありません。答えは「モデルY」。
モデルYっていったいどこのクルマ?
そう、テスラです。テスラ全体での2024年の販売台数は約179万台でこれは自動車メーカー別のランキングには15位にも入っていないけれど、一本足打法的にモデルYは約120万台も販売。2023年に続き世界でもっとも売れたクルマに輝いたのです。念のためお伝えしておくと、モデルYはEV(電気自動車)ですが「EVのナンバーワン」ではなく「すべての自動車のナンバーワン」ですからね。凄いんですよ、モデルYって。
そんなモデルYは、ひとことで言うとテスラとしてはベーシックなポジションのSUV。テスラには上位ラインとなる「モデルS」や「モデルX」があり、対して相対的に車体が小さくて価格も抑えめなミッドサイズモデルとしてモデルYや「モデル3」を展開します。モデルYはモデル3のメカニズムを用いつつ、背を高くしたSUVモデルです。
個人的には「これってSUVなの?天井を高くしたハッチバックじゃないの?」という気もしますが、メーカーが「SUV」と断言しているのでSUVということにしておきましょう……かね。
サイバートラックゆずりの新フェイスを導入

今年に入り、そんなモデルYが新しくなりました。テスラによると「フルモデルチェンジと言っていいくらい新しくなった」のだとか。車体自体は従来モデルと同じですが、新型を見分けるポイントがあります。それはまずヘッドライト。従来モデルに対して新型はヘッドライトがきわめて細くなりました。どのくらいかといえば「ほぼ線」と言えるくらいの細さだから、ひとめで新型だとわかります。この細いヘッドライトは「サイバートラック」からはじまった、新しいテスラのデザインテイストですね。控えめに言ってかなり未来的。
そして後ろにまわると、テールランプにも驚きの変化が。なんとテールランプが間接照明なのです(ブレーキランプは普通に光る)。そんなのあり?という驚きのアイデアですが、光源が見えないのだから斬新。ちなみにテールランプを間接照明としたのは世界初なのだそうですよ。正直にいうと、これはとてもカッコいい。テスラってほんと常識にとらわれないというか、独自のアイデアが素敵ですよね。

ちなみに今回のスタイリング変更は、単に見た目が変わっただけではありません。空気抵抗係数は従来の0.23から0.22へ低下。つまり空力性能が向上し、空気抵抗が減ったというわけ。EVにとって空気抵抗は高速走行時の電費の向上、つまり航続距離の拡大に効く重要なポイント。つまりEVとして進化したというわけです。
インテリアはさらにシンプルに。操作はモニターで

インテリアも変わりました。まるで生活感のないマンションのモデルルームのような、スッキリしたダッシュボードに大型ディスプレイ(15.4インチ)だけを置いたシンプル空間は相変わらずですが、シフトレバーすら無くなってしまったのだから驚かずにはいられません(先行して進化したモデル3も同様)。じゃあどうやって「D」や「R」そして「P」を操作するか。実はセンターディスプレイを指でなぞって操作するのです。スマホみたい。
そう、テスラってやっぱりクルマというよりもスマホ感覚なんですよね。
ちなみにモデル3ではハンドルに組み込まれたウインカースイッチは、モデルYではレバーが生えた一般的なもの。日本のテスラの広報担当者によると、「そのあたりはより多くの人に提供するクルマなので違和感のないように」なのだそうです。
そして新型に乗り込んであらためて感じるのが室内の広さ。本当に広くて、さらに天井もほぼ全面がガラス張りだってこともあって超開放的。後席のひざまわりスペースも呆れるほど広いのですが、よく考えたら全長が4.8mもあるうえに、ボンネットを短くできるEVの長所を上手に生かしたパッケージングなわけですね。それにしてもこの広さは見事です。
ちなみに今回の進化ではリヤシートの構造が見直され、座面が1.5cm延長されると同時にヘッドレストを大型化。そのうえ、背もたれには電動式の角度調整機能まで組み込んだのだから快適性は大幅アップ。この電動角度調整機能は荷室を拡大する際にも大活躍です。
また後席周りは、センターコンソール後方に「iPad mini」くらいの大きさのタッチディスプレイが組み込まれ、後席の空調などをコントロールできるのも斬新。この未来感がテスラですね。




進化したフットワーク。走りも大きくレベルアップ

注目ポイントの多い新しいモデルYですが、何を隠そう筆者がもっとも驚いたのは走り。とても気持ちよく走るんです。
今回の改良はブッシュ類まで含めたサスペンション周辺を大きく変更したそうですが、峠道を走っても「ここまで意のままに走れるなんて」と大満足。タイヤが路面をしっかりと捉える感覚が強いから車体の安定感が高いのに加え、コーナーもキビキビ曲がる。期待を裏切らないどころか、気体のはるか上すぎで驚きました。
そのうえ乗り心地だって従来モデルに比べてグッと滑らかになりさらに満足できる領域へ。誰が乗っても満足できるでしょう。
そして思うのですが、テスラは内外装の演出などは先進性や独自性を強くアピールするいっぽうで、走りに関してはしっかりと「独自性ではなく誰もが納得のいいクルマ」になっているのは面白いところです。個人的には空を飛ぶくらいやって欲しいですけどね。
オススメのグレードは「RWD」

ところで、EVといえばやっぱり気になるのが航続距離。試乗した「ロングレンジAWD」(消費税込647万6000円)はカタログ記載値で635kmというさすがの数値をマーク。もう「航続距離が……」なんて言う人はいないでしょう。いっぽうエントリーグレードの「RWD」(同558万7000円)は547kmですが、これでも十分なスペックを誇ります。
最後にバイヤーズガイド的な話をしておくと、グレード選びの基本は「RWD」で十分でしょう。これでも十分な速さと航続距離なのですから。そのうえで「RWDの性能では満足できない」という好事家は「ロングレンジAWD」を選べばいいのではないしょうか。
この「RWD」は購入時にクリーンエネルギー車普及のための国からの補助金として87万円が受けられるので、実質価格は471万7000円に。さらに、東京都や各地方自治体が設定している補助金などを活用すると補助金は最大187万円となり、実質価格は300万円台からになるというのも、覚えておくといいかもしれません。