新車試乗レポート
更新日:2025.05.21 / 掲載日:2025.05.21
新型フォレスター大全《試乗インプレッション》
北米で既に販売中の新型フォレスターが待望の国内デビュー! アクティブなアウトドア派の筆頭候補となるに違いない王道SUVはどのような進化を遂げたのか。
●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之/澤田和久/SUBARU

新型フォレスター『ファーストインプレッション』
ターボとS:HEVはこれだけ違う!!
マニア限定ではなく誰にもお勧めの良質さ
S:HEVはパワーでもドライブフィールでも従来型が採用する2ℓのe-BOXERを大きく上回っている。共通点は踏み込み直後のトルク立ち上がりの反応時間くらい。それも従来型は応答の遅れなく立ち上がるものの、その後のトルク増は並のNA2ℓレベル。対してS:HEVは踏み込み量分のトルクに達するまでの時間が短く、従来比で100㎏ほど重くなった車重を感じさせない。だからといってことさらに瞬発力を強調した制御でもなく、急激なアクセルオンでも力強く滑らかに加速し、低速から高速まで安定したドライバビリティを維持する。
従来型では高速ツーリングや登降坂の激しい山岳走行では動力性能に勝るターボが優位と述べていたが、新型では動力性能面でもHEVが上位設定となった。
ターボ車も車重が増加しているため厳密には従来型の方が加速性能では有利だが、体感的には動力性能の低下はなく、むしろ中庸域の力感が高まったように思えた。ワイドレンジCVTを多段ミッションのように変速させたり、高回転までストレスない加速の伸びやかさなど、ファントゥドライブが実用性能に巧みに織り込まれている。動力性能面のゆとりと操り心地はミドルSUVの内燃機車ではトップクラスにある。
S:HEVと比較すれば、高速巡航時からの緩加速や全閉から深めに踏み込んだ際の加速反応に一瞬の間を意識させられるが、内燃機車では標準的であり、ウイークポイントとするのは間違いだろう。非電動系の中ではドライバビリティでも優等生なのだ。
ターボで気になるのは燃費だが、新型のWLTCモード燃費は13.6㎞/ℓ。従来型から変わっていないが、従来のe-BOXER車は14.0㎞/ℓだったので、ターボ車ながら省燃費性能も評価できるレベルだ。
もっとも、新型のS:HEVのモード燃費は18・4または18.8㎞/ℓであり、ターボ車を35%以上上回るので、ターボ車は相対的にはコスパの高さとスポーティなパワーフィールが推しのポイントとなる。
ターボ車とS:HEVの走りの違いは動力性能や燃費だけではない。フットワークにもキャラの差が感じられた。基本的な操安性は共通だが、細かな操縦感覚や乗り心地違いでそれぞれのキャラに合ったフットワークとした。
基本操縦特性は操舵初期の回頭反応を素早く、急激な回頭や旋回力の変化を抑えて、操舵に過不足なく追従するコントロール性を示す。挙動の予見性も高く、修正操舵をあまり必要としない。乗りこなしの手応えがあまりないとも言えるが、運転のストレスが少なく、信頼感の高いハンドリングだ。
操舵初期に4WDの後輪側への駆動力配分を増加し、前輪の駆動力負担を減少。さらにアクセルを若干絞ることで初期回頭性を向上させるなど、サス周り以外の改良や新機能の効果だろうが、滑らかさやしなやかさと剛性感が両立されたフットワークはスバル車の最新モデルに相応しい。
これを基本にターボ車は軽快感を、S:HEVは重質さと据わりの良さをトッピングしたような違いがある。細かな振動の抑制や静粛性にも差があり、S:HEVには上位モデルらしい洗練された印象あるいは車格感を覚えた。走りの志向ではターボ車はグレード名が示すとおりスポーティ、S:HEVはプレミアムツアラーといった感じである。
新型の最大の注目点がS:HEVなのは間違いないが、動力性能以外の部分も印象深かった。燃費を含むHEVとしての性能が競合車に追いつき、洗練感や安心感など総合的な走りの改善も感じられるなど、ミドルSUV市場でのフォレスターの魅力が大きく引き上げられた。ミドルSUVの一般的なユーザーに勧められる良質な走りを実感する試乗となった。
非電動ターボは相変わらず優秀。S:HEVはさらにその上を行く



