新車試乗レポート
更新日:2025.02.08 / 掲載日:2025.02.08

992.2こと後期型911を試す【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ポルシェ

 ポルシェ911のラインナップが順次新しくなっています。“992.2”なんて愛称で呼ばれるそれは992型の後期モデルとして進化しました。まぁ、その辺はこれまでと同じ流れなので「定例」といった感じでしょう。ただ、今回は先に発表された911GTSにモーターが搭載されていたので話題が先行しました。ついに911もすべてハイブリッドになるかと……。

 ですが、それは早とちりで、現実は違いました。911カレラおよび911カレラSはこれまでと変わりません。3リッター水平対向6気筒エンジンはターボチャージャー付きでモーターはなし。今まで通りのドライブフィーリングを終始感じさせます。最高出力は394ps、最大トルクは450Nmです。ちなみに911カレラSの最高出力は480ps。これは前期型GTSと同じ数値になります。そしてモーターを積んだ新型GTSはシステム出力541psまでアップしました。ついに500ps超えとなります。993型、996型、997型と乗り継ぎましたが、911はマックスパワーよりも運動性能とドライブフィールがウリだったんですがね。ライバルとのパワー合戦に突入したような気がします。時代が変わったというか、周りが放っておいてくれなかったと言ったところでしょう。

ポルシェ 911 S

 それはともかく、後期型911カレラに試乗したのでそのインプレッションをお届けしたいと思います。

 まず運転席に座った印象は「そうそう、コレコレ」と言った感じ。ホリゾンタルなダッシュボードとそのセンターから手前に伸びてくるコンソールはまんま911。ドライバーシートに座ってステアリングに手を置くと、安心感を覚えます。新しいのはメータークラスターがフルデジタルになったくらいで、それ以外は見慣れたデザインとスイッチ類の位置関係で成り立ちます。後期型になったとはいえ、そこは大きく手は入っていません。

 スターターボタンを押してエンジンスタート。そこからゆっくりアクセルを踏んで走り出します。しばらくして感じるのは乗り心地の良さ。サスペンションが路面からの入力を優しく受け止め、キャビンをフラットに保ちます。試乗コースは西湘バイパスとその周辺ですが、西湘バイパスの道路の繋ぎ目では特にそんな印象でした。言ってしまえば高級車的で、パナメーラのようなGTカーの味付けです。

ポルシェ 911 S

 ですが、それはドライブモードを「ノーマル」にした時のもので、「スポーツ」、さらには「スポーツ・プラス」にすれば一気に豹変します。乗り心地、アクセルレスポンス、シフトタイミングは文字通りスポーツ化。その意味で「ノーマル」は少しおとなし過ぎると言えるかもしれません。「スポーツ」をデフォルトとした方が911のイメージにマッチします。とはいえ、日常的な使用を鑑みればこれが正解なのかも。自分の911の使い方を想像すればこれはこれで納得です。

 ところで、このドライブモードにはもうひとつのポジションがあるのをご存知ですか。それは「ウェット」で、低ミュー路での走りを安定させます。そこは992型前期が登場した時、国際試乗会で体験させてもらったモードです。ウェット路面のショートサーキットを何周も走りました。彼らが目指したのは雨の日でも安心して911を走らせられることを広く認知してもらうこと。AWDはもちろんRRでもそれを最大限発揮させるよう仕上げています。今回はもちろんそれは試せませんが、さらに進化していることでしょう。スーパーカー業界では昨今ウェット路面でも速く走らせるというのがトレンドになっています。火付け役はこのクルマかな。

ポルシェ 911 S

 それはともかく、前述したようにモードを変えれば印象はガラリ変わります。特に垂涎なのは「スポーツ・プラス」。排気音がいきなりレーシーになり周りの空気を変えます。ドライバー自身思わず座り直してしまう感じ。で、イメージ通りアクセルはシビアになり、加速で車体が沈み込む。でもってパドルシフトを駆使すればまんまサーキット気分になります。コーナー手前のシフトダウンで小気味よく反応するブリッピングには感動ですね。8速PDKをオートマモードで走っても楽しい。ブレーキによる加減速と速度センサー、Gセンサーなどでシフトチェンジを繰り返すのですが、それが絶妙。ギアボックスの中にF1ドライバーがいるような感覚のプログラミングです。

 というのが992.2とのファーストコンタクト。「ノーマル」では少しおとなし過ぎますが「スポーツ・プラス」でホットな走りが楽しめました。それ以外に思ったのは操作に対しエモーショナルなフィーリングが強まったこと。991型以降マシン的な感触が強かったですが、それが997型までのフィーリングに戻ってきたような気がしました。もちろんそこは主観的な話ですが、クルマを走らせながらちょっと嬉しく思えたのはそんな感覚を得たからかもしれません。

この記事の画像を見る

この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

この人の記事を読む

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

ȥURL򥳥ԡޤ