新車試乗レポート
更新日:2024.11.16 / 掲載日:2024.11.16
大人が選びたくなるステーションワゴン【九島辰也】

文●九島辰也 写真●メルセデス・ベンツ
今気になるクルマがあります。と言っても、「コレ!」ということではなく、ボディタイプです。それはステーションワゴン。とても気になります。
理由はSUVに飽きてしまったこともあるでしょうが、ステーションワゴンの低くてシュッとしたスタイリングがかっこよく見えます。セダンやクーペ、SUVなどいろいろ乗ってきてここに辿り着いたみたいな、大人っぽさも。それに実用性を妥協していないどころか、機械式駐車場に入るというメリットまであります。都心で駐車場を探すと機械式は意外と多いですからね。“ハイルーフ用”もありますが、すぐにミニバンで埋まってしまいます。「全高1550mm以下制限」の呪縛から解き放たれること重要です。

実はそれを感じたのは先日メルセデス・ベンツ Eクラスのオールテレインに試乗したからです。考えてみればステーションワゴンのステアリングを握ること自体久しぶり。新型車はSUVばかりですからね。ステーションワゴンはレアな存在です。
もちろんステーションワゴンがレアなのはグローバルな話で、アメリカにはもう存在していません。90年代はフォード・トーラスやマーキュリー・セーブル、シボレー・カプリスワゴンやビュイック・リーガルワゴンなんかが人気でしたし、当時彗星のように現れたサターンにもSWと呼ばれるステーションワゴンがラインナップされていました。その背景にはそもそもステーションワゴンはアメリカで生まれたことが関係していることでしょう。1960年代や70年代はセダンとステーションワゴンをガレージに並べる家がたくさんありました。今日のように大型スーパーがたくさんある時代ではなかったので、ワゴンは一週間分の食料を買い出しに行く用のクルマでした。

それはともかく、現行型で気になるのは、前述したEクラスオールテレインですが、それ以外にも、同ステーションワゴン、ボルボV90、アウディA6アバント、BMW 5シリーズツーリング、VWパサートオールトラック、プジョー308SWなんかがあります。以前はジャガーXFスポーツブレイクもありましたが、現状ほとんどがドイツ車です。ドイツにはステーションワゴンを必要とするマーケットがあるんでしょうか。謎です。
こうしてこのカテゴリーを久しぶりにチェックしてみると密かにモデルが入れ替わっていたり、カタログ落ちしていたりと変動がありました。例えば、ボルボV60クロスカントリーはありますが、V90クロスカントリーは無くなっています。知らなかった。自動車専門誌でステーションワゴン特集企画がないので、触れる機会がありません。V90クロスカントリーは好きなクルマでしたが、時代にそぐわないのでしょうか。そういえば、アウディ A6オールロードクワトロはいつ無くなったんだろう。思い返せば、最近はコンパクトSUV特集ばかりのような気がします。

ではせっかくなので、Eクラスのオールテレインを少し解説すると、名前はE220d 4MATICオールテレインとなります。ベースはE220dステーションワゴンで、最低地上高を145mmにするため全高を1495mmにしました。そして前後バンパー下部にシルバークロームアンダーライドガードやブラックのホイールアーチカバーを装着し、オフローダー感を出します。好きですこういう演出。
エンジンは2リッター直4クリーンディーゼルにモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドという設定です。長距離移動が多そうなオールテレインの性格上、燃費のいいディーゼルユニットがあてがわれました。モーターはエンジンパワーのブースト的な役割を果たします。トランスミッションは9速ATといった幅の広いギアレンジなので、燃費にも大きく貢献すると思われます。

そして足回りにはメルセデス開発陣自慢のエアマチックが備わります。連続可変ダンピングシステムADS+とエアサスペンションを組み合わせたものです。もはやセダン系はもちろんGクラスやVクラスにまで装着されるサスペンションシステム。これが快適な乗り心地を提供してくれます。
ということで、SUVの買い替えを考えている方はステーションワゴンもチェックしてみるといいでしょう。このカテゴリーはある意味盲点。他人と違う大人のカーライフを楽しめるかも、ですね