新車試乗レポート
更新日:2024.10.28 / 掲載日:2024.10.28

見た目に惚れたらそれでいい!【フィアット 600e】

文と写真●ユニット・コンパス

 フィアットの新しい電気自動車600e(セイチェント・イー)は、とにかく可愛い。

 実際、試乗しているとかなりの視線を感じたし、知人たちに写真を見せると、いつもの倍くらいの反応が返ってきた。

ターゲットはデザインにこだわりを持つ人たち

600e La Prima

 クルマの魅力にはいろいろな要素があるが、その中でもデザインは常に上位にある。そういう意味で600eは、かなりのポテンシャルの持ち主だ。

 電気自動車は、航続距離の課題があるし、コストパフォーマンスでは内燃機関モデルに勝てない。であるならば、ターゲットを絞りその人たちにしっかりと届けようというのがフィアットの戦略。

 今回の600eであれば、「予算は500万円からで、希望するボディタイプはSUV。デザインにこだわりが強く、かわらしいセカンドカーを探している人」というのがユーザー層だという。つまり、ある程度予算に余裕があって、身の回りにあるものにこだわりたい人たちということだろう。

 ちなみに、「600e La Prima(ラ プリマ)」の価格は590万5000円で、国と地方自治体の補助金を合計すると最大105万円と税制の優遇措置が得られる。

 ちなみに、2025年春には1.2L直3エンジンを搭載するマイルドHV版の投入も予告されている。

600e La Prima

扱いやすいサイズに実用性も十分。航続距離は493kmとクラストップレベル

600e La Prima

 600eは見た目一発勝負のクルマかというと、そうではないから面白い。ボディサイズは、全長4200mm、全幅1780mm、全高1595mm。

 コンパクトなサイズでありながら、しっかりと使えるリアシートとラゲッジルームを備えているし、SUVスタイルなのでちょっとした段差などは気にせず走れる使いやすさがある。

 上手だなと思ったのがバッテリー容量の設定。搭載容量を抑えるとコスパは大幅に上がるが使い勝手が悪くなる。逆に、たくさんバッテリーを搭載すれば航続距離は増えるが、価格はグッと高くなる。

 600eのバッテリー容量は54.06kWhで、一充電あたりの走行距離は493km(WLTCモード)。これが30kWh台だと航続距離が300kmを超えず、実際には200km程度での運用になる。64.06kWh/493kmあれば、350km程度は実用として使えるので、一気に利便性が変わってくる。

 フィアットはセカンドカー需要を狙うと言っていたが、ライフスタイルによってはこれ1台で十分まかなえるだろう。

 例えば、クルマの利用は買い出しや送り迎えがメインで、片道100km以上の遠出はたまにしかしない。そんなユーザーであれば、まったく違和感なく使えるはず。毎日通勤に使うのでなければ、自宅に充電設備がなくてもなんとかなりそうだ。

デザインの力を感じるシンプルで居心地のいいインテリア

600e La Prima

 インテリアを眺めて思うのが、あらためてデザインの力というのは大きいなというもの。
 600eの元ネタになった1955年登場の600(セイチェント)は、コンパクトな車体に大人4人が乗れるスペースを確保した戦後小型車の大傑作。21世紀に生まれた電気仕掛けの600eは、内外装ともにそのイメージを受け継いでいるのだが、とくにインテリアにはその面影が強い。要素を削ぎ落としてシンプルに仕立てた室内空間は見事だ。樹脂部品の質感などはそれほどリッチではないのだが、デザインの力がそれを嫌に感じさせない。

 7インチのディスプレイは大画面というほどではないが、スマホとの連携もスムーズ。角丸のディスプレイが、ダッシュボードから浮かんでいるように設置されているのはクールだ。

 ステアリングやシートに使われるレザー生地は本革ではなくレザーを模したもの。これはコストというよりも、年々高まりを見せるレザーフリー化への対応といった意味合いが強い。シートの背中面と座面にはFIATロゴが刺繍でモノグラム調に表現されていて、まるでファッションアイテムのような楽しさがある。

電気自動車の良さを実感する静かでスムーズな走り

600e La Prima

 東京二子玉川の商業施設からスタートして横浜みなとみらいで撮影をして帰ってくるという試乗ルート。

 走り出して印象的なのは、静かさとスムーズな走りだ。

 欧州の小型車は歴史的にMT車が多く、ATはどうしてもおまけ的な扱いを受けていた。味付けもMTのような段のあるものが多くて、スムーズな日本車のATに慣れたユーザーからすると違和感が強かった。せっかくデザインに一目惚れしても、試乗したら「これはちょっと……」というケースが少なくなかったわけだ。そこが電気自動車になったことで一気に払拭されたことになる。

 アクセルやブレーキの反応にもクセがない。エンジンを搭載したコンパクトカーよりも、多くのひとにとってずっと運転しやすいだろう。

 高速道路に入って速度が上がると多少車内に走行音が入ってくるが、それも不快というほどではない。しっとりした乗り心地といい、電気自動車のメリットが全面に出ている。

 運転支援も試してみた。前走車追従式クルコン、 レーンキープアシストともに十分に実用的。制限速度内であれば、かなりのシーンを任せることができた。

デザインで惚れて買っても後悔しない出来

 補助金を考慮しても500万円近い価格は、従来からすればプレミアムブランドの領域だ。とはいえ、乗ってみると静粛性やスムーズな加速感は、かつてフィアットになかったレベルにあることも確か。

 バイヤーズガイド的な発想で考えると評価が難しいのだが、もともとフィアットは「予算500万円でデザインに優れたSUVを探している人」がターゲットだと明言している。だとすれば、そう紹介されて購入しても納得できる仕上がりにある。「惚れたら買い!」と背中を押してあげられるクルマだ。

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グーネットマガジン編集部

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