新車試乗レポート
更新日:2018.06.28 / 掲載日:2015.01.22
MINI 5ドア 試乗レポート(2015.01.22)

MINIのハッチバックに5ドアが登場した。ホイールベースを延長して居住性を拡大し、今までの魅力はそのままに使い勝手もアップ。ますますMINIワールドがおもしろくなった。
さらに自由に使える5ドアのMINIが登場

上の写真をご覧いただきたい。MINIである。今年フルモデルチェンジを行った3世代目となる新型だ。ただ、こいつはそれとはちょっと違う。よ~く見ていただくとわかるが、リヤドアが左右についている。そう、これは5ドア。3ドアベースのニューカマーがその正体だ。
もちろん、先代にもリヤシートに趣を置いたストレッチモデルは存在した。クラブマンだ。コーチドアと呼ばれる後側にヒンジの付いたのがそれに当たる。が、今回のモデルはよりリヤシートの居住性を高めている。ドアが大きくなったことでアクセスしやすくなったのもそうだし、足元も広がった。3ドアよりも70mm以上ホイールベースを延長した恩恵は見事に得られたといっていい。実際に身長180cmの筆者が座ってもなんら問題はなく、前後長が伸びたことで窮屈感は明らかに減っていた。最低限これだけあれば、4名乗車でロングドライブにも行けそうだ。
ここで今年のジュネーブモーターショーを思い出した。MINIのブースに飾られたのはまさしくこいつ。しかし、そのときの名前は“クラブマン・コンセプト”。そう、つまりそこで見た世界中のジャーナリストたちは、目の前の5ドアを次期クラブマンなのだと思い込んだわけだ。
それはともかく、5ドアのサイズを確認すると、全長4015×全幅1725×全高1445mm。車両重量は1320kgである。これを同じクーパーSの3ドアに置き換えると、全長3835×全幅1725×全高1430mmとなり、車両重量(5速MT)1170kgとなる。長さの差は180mm。よ~く比べると、5ドアはリヤのオーバーハングも長くなり、積載性も同時に高めている。

それでは実際に走らせるとどうなのか。試乗したのはクーパーS。2L直4ツインカムユニットは192馬力を発揮する。最大トルクは28.6kg mだ。
ドライバーズシートに座ると、視界に入るものは3ドアと変わらない。センターメーターも何もかも同じポジションに位置する。唯一の違いは、振り返ると思いのほかリヤガラスが後にあること。そこで5ドアであることを再認識した。
「唯一・・・」としたのは走りもそうだから。挙動変化はなく、スポーツ度は同じくらい高い。とくにトルクが太く低回転からそれを発揮するクーパーSは、その違いを感じにくい。重量差もすべて太いトルクが消し去ってくれる。よって、ワインディングでもコーナー出口の加速で3ドアに劣るところはなかった。
さらに言えば、高速道路での走りは3ドアを上まわる勢い。ストレッチされたホイールベースが乗り心地を快適にしてくれるので、じつに気持ちがいい。とくに路面状況が悪いところでそれを感じた。たしかにデフォルトは硬めだが、しなやかな部分がときたま顔をのぞかせる。
結論を言うと、5ドアの走りは3ドアに劣らない。MINIが唱える“ゴーカートフィーリング”は健在だ。となると、5ドア好きの日本でこいつがヒットする確率は高そう。実用性に重きを置くマーケットで重宝がられるのは目に見えている。「3ドア危うし!」といったところだろう。
ただし、5ドアも両腕を挙げて勝利を喜ぶわけにはいかない。伸びた外観にまったく違和感がないわけではない。3ドアを基本とすると少し間延びした感じもする。まぁ、その辺は好き嫌いが分かれるだろう。3ドアと5ドア、どちらに軍配が上がるのか。MINIファンのひとりとして、個人的にも興味は尽きない・・・。
文●九島辰也 写真●澤田和久
問い合せ MINIカスタマー・インタラクション・センター 0120-3298-14
Detail Check
コックピット
コックピット
センターメーターのMINIらしいデザインを持つインパネまわり。この辺は3ドアとまんま変わらない。ナビが内蔵されたメーターは使い勝手もいい。センターメーター外周のライトがその状況ごとに赤や青に変化する様もまた見モノ。
インテリア
インテリア
「これがMINI?」と思えるほど高級感のある仕立てのいいインテリア。シートは大きく乗員のカラダを包み込む。そしてリヤシートの居住性も十分確保。クラスを超えた快適さがちゃんと備わる。
リヤカーゴ
リヤカーゴ
今回密かに驚いたのがリヤカーゴ。リヤシートでかなり埋められたと思いきや、十分なスペースが確保された。さらにリヤシートを畳めば想像以上に広いスペースが生まれる。
エンジン
エンジン
グレードは“クーパー”と“クーパーS”の2種類。ご存知1.5L 3気筒と2L 4気筒となる。どちらも十分なパワーを備えていた。
エクステリア
エクステリア
前後のドアを開けるとこんな感じ。リヤヒンジのクラブマンとは違い、リヤシートへのアクセスは容易になった。これは嬉しい配慮。
主要諸元:MINI クーパーS 5ドア(6速AT)
全長×全幅×全高 | 4015×1725×1445mm |
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ホイールベース | 2565mm |
トレッド前/後 | 1485/1485mm |
車両重量 | 1320kg |
エンジン | 直4DOHCターボ |
総排気量 | 1998cc |
最高出力 | 192ps/5000rpm |
最大トルク | 28.6kg m/4600rpm |
サスペンション前/後 | ストラット/マルチリンク |
ブレーキ前/後 | Vディスク/ディスク |
タイヤサイズ前後 | 195/55R16 |
全国メーカー希望小売価格(発売 2014年月10月2日)
クーパー 5ドア(6速AT) | 298万円 |
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クーパーS 5ドア(6速AT) | 350万円 |
Body Color
■ボルカニック・オレンジ・ソリッド ■ムーンウォーク・グレー・メタリック ■ブレイジング・レッド・メタリック ■ミッドナイト・ブラック・メタリック ■エレクトリック・ブルー・メタリック □ホワイト・シルバー・メタリック ※ほか6色。 |
まったく破綻を見せない圧倒的なデザイン力

2001年にニューMINIで世界中を驚かせたのは、伝統を現代技術で昇華させた走りや魅力的なインテリアはもちろん、そのデザインだった。今回の5ドアボディも、ひと目で「紛うことなきMINI」であることを見る者に納得させるデザイン力は見事のひと言に尽きる。MINIのブランディングは鉄壁だ。