新車試乗レポート
更新日:2018.10.31 / 掲載日:2014.02.20
BMW 4シリーズ クーペ 試乗レポート

新たなシリーズをつくった並々ならぬ覚悟の表れ
新たに生まれた「4シリーズ」。クーペの走りは3シリーズクーペとくらべて一段とレベルが上がり、懐の深さを見せつける。麗しさを増したスタイリングも走りの性能をみごとに表現している。
3代目E36の時代に追加されて以来、クーペはずっと3シリーズを構成するバリエーションのひとつだった。でも、E46、E90を経て、F30でついに独立。クーペ系モデルは晴れて「4シリーズ」を襲名した。
ファンには周知だろうが、1シリーズのクーペも「2シリーズ」へと昇格。これで、セダン系は奇数、クーペ系は偶数という、BMWの新しい車名ルールが確立される。なら、クーペ系の中核モデルとなる4シリーズの魅力はどこにあるのか?
3シリーズの時代から、クーペ系はフロントフェンダーやフードまでを専用化していたが、新世代クーペではデザインの差別化がさらに加速。見どころは、ロー&ワイドのプロポーションとグッと張り出したリヤフェンダーで、スポーティさやエレガントさが一段と強調されている。
存在感や高級感は、ハッキリ言ってひと昔前の6シリーズに匹敵するほど!「3」ではなく「4」を名乗るのも、素直に納得できる。
導入モデルとなったのは、2L直4の428iと3L直6の435i。いまのBMWだから、心臓はもちろん直噴+ツインスクロールターボで、428iは245馬力/35.7kg m、435iは306馬力/40.8kg mのハイパフォーマンスを誇る。
まずは428iだが、2Lターボと8速ATのマッチングは一段と良好になった印象がある。ドライビング・パフォーマンス・コントロールを「コンフォート」にセットしたままでもゆとりある走りを提供し、「スポーツ」では0→100km/h加速5.8秒に象徴される速さを楽しませてくれるのだから、満足度は高い。
もちろん、6気筒の435iと比べれば回転フィールの滑らかさや静粛性は見劣りするが、さすがはBMWで並みの4気筒とは格の違う上質な仕上がり。6気筒を積む「3」のクーペから乗り換えても、納得させられる出来映えと言っていい。ただ、サウンドの官能性の相違には後ろ髪を引かれるかもしれないが・・・。

なら、435iの実力は?こちらはMスポーツを試したが、動力性能も、ハンドリングも冴え渡るもので、旧335iクーペからの進化をより強く実感した。豪快と表現できる加速力に加えて、きわめて正確で限界も高いハンドリング性能や、エレガントに乗りこなせる日常性能も備えているのだから、ある意味万能のクーペと言ってもいいほどだ。
速度域にかかわらず快適度の高い乗り心地に関しては、電制ダンパー採用のアダプティブMサスペンション(オプション)が、大きく貢献していることも付け加えておく。
それほど高い完成度を誇る4シリーズで唯一気になったのは、うねりに対するサスのいなし方。標準サスに、オプションのバリアブルスポーツステアリングと19インチタイヤを組み合わせた428iは、ハイスピードで連続したうねりに遭遇すると暴れるような挙動を示し、ステアリングキックバックもあった。
程度はグッと軽いが、アダプティブMサス付きの435iMスポーツでも同様の傾向があったから、これは専用設計のフロントサスに起因するクセなのかもしれない。
現行BMWでもっとも低い重心高(500mmを切る)とワイドトレッド、そして専用セッティングのサスがもたらすハンドリングはきわめてファンで、「4」独自の存在感を主張するカギになっている。が、この一点だけは今後の熟成に期待する。
BMWのことだから、そこは安心して見ていていいはず。現時点においては、ノーマルサス+19インチのコンビはボクとしてはお薦めしない。
文●森野恭行 写真●GooWORLD
問い合せ BMWカスタマー・インタラクション・センター TEL:0120-269-437
Detail Check
エクステリア

コックピット
コックピット
デザインは3シリーズと共通ながら、ルーフおよび着座位置が低い設定のため、グッとスポーティなムードだ。インパネ中央に8.8インチの高解像度ディスプレイ、シフトセレクター斜め後方にはiDriveコントローラーを配置する。
ワイド画面を活かしての2画面表示にも広く対応。ナビだけでなく、視覚的コミュニケーションの全般をカバーする。加えて、4シリーズは先進のヘッドアップディスプレイも標準採用する。
インテリア
インテリア
180cmクラスの男性だとさすがに頭上高が不足するが、後席足元空間の余裕は十分。フル4シーターと呼べるキャビンを備える。428iのシートはクロスが標準で、レザーはオプション。
ラゲッジスペース
ラゲッジスペース
トランク容量は445Lと大きめ。標準で6対4分割可倒、オプションでスルーローディングシステム(写真)を採用するため、使い勝手は優秀だ。クーペとしてはトップレベルの実用性を誇る。
主要諸元:BMW 428i クーペ(8速AT)
全長×全幅×全高 | 4640×1825×1375mm |
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ホイールベース | 2810mm |
トレッド前/後 | 1550/1600mm |
車両重量 | 1570kg |
エンジン | 直4DOHCターボ |
総排気量 | 1997cc |
最高出力 | 245ps/5000rpm |
最大トルク | 35.7kg m/1250-4800rpm |
サスペンション前/後 | ストラット/5リンク |
ブレーキ前後 | Vディスク |
タイヤサイズ前後 | 225/45R18 |
全国メーカー希望小売価格(発表・発売 2013年9月)
428i クーペ(8速AT) | 604万円 |
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428i クーペ スポーツ(8速AT) | 624万円 |
428i クーペ ラグジュアリー(8速AT) | 646万円 |
428i クーペ Mスポーツ(8速AT) | 644万円 |
435i クーペ(8速AT) | 738万円 |
435i クーペ スポーツ(8速AT) | 754万円 |
435i クーペ ラグジュアリー(8速AT) | 758万円 |
435i クーペ Mスポーツ(8速AT) | 774万円 |
Body Color
■ブラック・サファイア ■ミッドナイト・ブルー ■メルボルン・レッド ■ミネラル・グレー ■グレイシャー・シルバー ■リキッド・ブルー □オリオン・シルバー ■スパークリング・ブラウン ※ほか3色 |
サス構造にまで手を加えたこだわりの専用設計シャシー
形式は前ダブルジョイント・スプリング・ストラット/後5リンク(マルチリンク)式の表記で、3シリーズと変わらない。だが、じつはフロントサスは4シリーズ専用の設計だ。具体的には、サブフレームとボディをつなぐトーションバーを追加し、接続部分の剛性を強化している。ねらいは、よりシャープでダイレクト感あるハンドリングの追求にある。