新車試乗レポート
更新日:2018.10.31 / 掲載日:2014.12.18
MINI クロスオーバー 試乗レポート

強力なアイデンティティを発し続けるMINIブランド。そのなかでも、居住性や使い勝手のよさから高い人気を誇るクロスオーバーがマイナーチェンジ。目的は、主にパフォーマンスの改良だ。
人気のクロスオーバーにディーゼルが搭載された!
あまり知られていないが、MINIクロスオーバーはこの夏マイナーチェンジを行った。といっても、フロントマスクに少々手が入ったくらい。あとは写真のジャングルグリーンという新色などが追加された。まさに“マイナー”な変更である。
ただしそこには別の理由があった。それは来たるユーロ6と呼ばれるヨーロッパの排ガス規制に対する対応だ。つまり、変更の目的はエンジン。なので、カタログを新旧照らし合わせるとわかるが、マイナー後は燃費が上がっている。同じガソリン量で長く走ればそれだけ二酸化炭素の排出量は少なくなるという考えだ。それと同時に改良されたのがディーゼルエンジン。こちらもCO2、NOx(炭素酸化物)ともによりクリーン化された。そしてその結果、日本の規制内に収まり、販売ができるようになったのである。
そんな経緯があって、「D」とか「SD」とかいった名称のクロスオーバーがラインアップされた。特徴はなんといってもトルクの太さ。たとえば、ガソリンエンジンを搭載したクーパーのクロスオーバーが最大トルク16.3kgm/4250rpmなのに対し、クーパーD クロスオーバーは27.5kgm/1500~2500rpm、クーパーSDクロスオーバーは31.1kgm/1750~2700rpmとなる。つまり、1.5倍以上のトルクを低い回転域から発生してくれるのだ。
事実、走り出してすぐにそれは感じ取れた。最近は他社を含めディーゼルユニットを搭載したクルマを運転することが増えたが、その例に漏れず、こいつはかなり力強い。アクセルを踏みはじめた瞬間からグイッと前輪が路面を駆る感じである。

この2L直4ユニットはBMWのクリーンディーゼルと共有する。その意味からも省燃費だけでなく、走りにもこだわったシロモノであることは言うまでもない。ただ、あちらはRWD用の縦置き。それに対し、こちらはFWD用の横置きとなる。その結果、トランスミッションケースの場所が広くとれず、8速ではなく6速のギヤボックスが積まれる。それと走行モードの切り替え、すなわちエコプロモードがないのでアイドリングストップ機能がない。
じつはそこだけが少々気になる部分。というのも、ディーゼルエンジンにとってアイドリングストップ機能は欠かせないパートナーという存在であるため。信号待ちのガラガラ音を消してくれるからだ。もちろん、遮音材をボンネット裏側に貼る手もあるが、それも限界はあるし、クルマが重くなるデメリットは大きい。とくにこの手のサイズでは影響することが見えている。なので、正直言ってこのクルマはディーゼル特有の音はする。それでもかなり小さく抑えてはいるが、やっぱり聞こえる。
がしかし、走っていればそれも関係なし。走行中は風切り音などにかき消されるし、それよりなにより快適に力強く走れる。高速道路での追い越し時は2.5Lやそれ以上の排気量のクルマを運転しているような気になった。しかもハンドリングもちゃんとMINIらしい。ステアリングを左右に振ったときの動きはさすがで、堅牢なボディが一体感を持って追従する。このフットワークはガソリン車と変わらない軽快さである。
それじゃディーゼル車を選ぶポイントはと言えば、やはりランニングコスト。ガソリン車+20万円ほどだが、減税措置もあって実質負担はそれほど高くない。あとはガソリンと軽油の価格差だが、そこは走れば走るほど回収できる。長距離を乗る方はその意味が大きくなるわけだ。
文●九島辰也 写真●澤田和久
問い合せ MINIカスタマー・インタラクション・センター 0120-3298-14
Detail Check
コックピット
コックピット
ガソリン車と変わらないコクピット。センターメーターがMINIらしさを醸し出す。ディーゼルであることがわかるのはタコメーター。6000回転までしかないのが特徴。それでも素早いのはさすが。
インテリア
インテリア
クロスオーバーの居住性は高い。リヤシートも大人が3人座れるスペースがある。天井高もあるので、ハッチバックのMINIとはまったく違う。シートはバックレスが大きく長距離向きとなる。
ラゲッジスペース
ラゲッジスペース
分割式で畳めるリヤシートをすべて倒すと写真のような広さが生まれる。開口部も広く設計されていてけっこう積める。リヤシートは完全なフラットにはならないが、ワンタッチで畳めるのがグッド。
エンジン
エンジン
こちらが2L直4のディーゼルユニット。ピエゾインジェクター+コモンレールの高効率型で排気ガスもクリーン化する。ブロックを覆うように壁をつくるなど振動や音の対策がなされる。
エンブレム
エンブレム
日本仕様はクーパーDとクーパーSD。エンブレムによってそれが見分けられる。SDが赤なので目立つ。
ホイール
ホイール
ホイールは17インチ。デザインも変わり、よりスポーティになった。斬新ではないところがMINIらしい。
主要諸元:MINI クーパー SD クロスオーバー(6速AT)
全長×全幅×全高 | 4105×1790×1550mm |
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ホイールベース | 2595mm |
トレッド前/後 | 1535/1560mm |
車両重量 | 1420kg |
エンジン | 直4DOHCディーゼルターボ |
総排気量 | 1995cc |
最高出力 | 143ps/4000rpm |
最大トルク | 31.1kg m/1750-2700rpm |
サスペンション前/後 | ストラット/マルチリンク |
ブレーキ前後 | Vディスク |
タイヤサイズ前後 | 205/55R17 |
全国メーカー希望小売価格(発売 2014年月9月8日)
ワン クロスオーバー(6速MT/AT) | 275万~288万円 |
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クーパー クロスオーバー(6速MT/AT) | 308万~321万円 |
クーパー D クロスオーバー(6速AT) | 341万円 |
クーパー D クロスオーバー ALL4(6速AT) | 362万円 |
クーパー SD クロスオーバー(6速AT) | 387万円 |
ジョンクーパーワークス クロスオーバー(6速MT/AT) | 460万~477万円 |
Body Color
■ジャングル・グリーン・メタリック ■ライト・コーヒー・ソリッド ■スターライト・ブルー・メタリック ■チリ・レッド・ソリッド ■クリスタル・シルバー・メタリック ■アブソリュート・ブラック・メタリック ※ほか5色。 |
個性派ペースマンも同時にマイナーチェンジを実施

クロスオーバーの変更にともないペースマンもマイナーチェンジした。そして追加されたのがクーパーD ペースマンである。こいつは112馬力を発揮する2L直4ディーゼルユニットを搭載する。写真はトップモデルとして君臨するJCW。ルックスも走りもとびきりスポーティだ。